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約1年作り続けてわかった、上製豆本の作り方(表紙作成編)

個人出版レーベル「HS書架」代表の春紫苑です。

前回は表紙以外の、いわゆる本文部分の束を作成する方法について解説しました。

本文作成編の最後にも記載したとおり、束の厚みは背表紙の幅になります。印刷データの製作にも必要なので、事前に測っておきましょう。下の記事では、表紙のデータを作るうえでの注意点も記載していまs.

さて本記事では、豆本の顔とも言える表紙の作成を説明します。表紙は本の第一印象を決めるとともに、中の製本紙を保護する重要な役割も担っています

ではさっそく表紙作成について、見ていきましょう!


豆本製作記事の構成


  1. 印刷データ作成編

  2. 本文作成編

  3. 表紙作成編(この記事)

  4. 最終製本編


(豆)本の構成について

上製豆本の各部名称

表紙作成の道具一式

本文作成同様、表紙作成に使う道具一式を、一覧にまとめました。

表紙制作時の道具一式
  1. 表紙貼り付け用厚紙

  2. 表紙デザイン印刷用和紙

  3. 木工用ボンド

  4. 糊をかき混ぜるための皿

  5. でんぷん糊

  6. 太筆

  7. 0.2mmのシャープペンシル

  8. カッター

  9. 金定規

  10. はさみ

各道具については、使うシーンで個別に説明しますが、厚紙と厚紙に貼り付けるプリント用紙はここで説明します。


表紙貼り付け用厚紙
表紙自体に厚みを出すための厚紙については、こちらを使用。

実は最近になって使い出した紙で、以前は別の厚紙を使っていました。ただその厚紙がのりを付けると反るような感覚があったので、こちらの厚紙に変えた次第です。


表紙デザイン印刷用和紙
そしてこの厚紙に貼り付ける印刷紙は、プリンタで印刷できるこちらの和紙を使用しています。

和紙を使う理由については、風合いの良さもさることながら、台紙の厚紙に貼り付ける強度が高い(しっかりと張り付く)ので、こちらの紙を選びました。


厚紙の用意と貼り付け

はじめに厚紙を分割して、表紙貼り付け用の台紙を用意します。
「厚紙原紙」とプリントされているコピー用紙に、厚紙分割のガイドラインを印刷し、この紙を厚紙に貼り付け、ガイドライン上をカッターで切ります。

厚紙、ガイドラインが印刷された用紙、ペンのり

経済的な理由と、用紙を無駄なく使いたい(言い換えるとケチな笑)ので、表紙/裏表紙用(大きい四角)と背表紙用(左右の細長い四角)を、印刷領域めいっぱい使えるようにガイドラインを設定しています。

そのため、のり付けの余白が紙の端1cmぐらいしかないんですね。本文作成時にも使用した、狭い場所でも比較的かんたんにのり付けできる「ペンのり」の登場です。

余談ですが、はじめは紙一枚ごとに定規でサイズを図って、ガイドラインを手作業で引いていました。今から思えばとんでもなく手間と時間がかかってましたね……。なので、ガイドラインがコピーできる方は、このやり方がオススメです!

裁断した厚紙がこちら。

表紙、裏表紙、背表紙の各厚紙

厚紙の台紙を作るコツとして、ノド(背表紙)側以外の本の上部と下部、小口(開口部)側に、少しサイズを大きくしましょう。豆本の大きさで伸ばす長さも変わってくると思います。HS書架の豆本を例に上げると、91mm × 64mmの大きさで2mm程度表紙サイズを伸ばしています。

表紙サイズを判型より大きくするのは本文保護のためですが、少しのサイズ違いがグッと上製本らしさを出してくれます

表紙デザイン用紙と厚紙の貼り合わせ

ガイドラインの作成

厚紙を切り終えたら、表紙デザインを印刷した紙と、厚紙を貼り合わせます。

私の場合、厚紙の位置を示すガイドラインを表紙デザインの外側に印刷しておきます。そして印刷裏面でガイドライン同士をつなげ、厚紙の貼る位置がわかるようにしています。

表紙デザインの裏に、ガイドラインの位置を示す印をつける
印どうしをシャープペンシルでつなぐ

このときに活躍するのが、0.2mmの極細シャープペンシル。

なぜこんなにも細いシャープペンシルを使うのか。

ガイドラインが太いと、厚紙を置く位置がラインの太さ分ブレてしまうんです。ほんの小さなズレでも製本に狂いが出るため、なるべく細い芯で、線を引くようにしました。

ガイドラインの線で、厚紙の位置を割り出す

貼り合わせ

表表紙、裏表紙、背表紙それぞれの位置が決まれば、厚紙に接着剤を塗って実際に貼り合わせます。

厚紙の接着には、木工用ボンドとでんぷん糊、水をそれぞれ1:1:1で混ぜ合わせた混合接着剤を使用します。

ボンド、でんぷん糊、水を1:1:1で混ぜ合わせる

そしてその混合接着剤を太筆で塗り残しのないよう、まんべんなく塗ります。

裏側にまんべんなく、太筆で塗っていく

塗り終えたら、厚紙を定位置に置いて貼り付け。

ガイドラインで割り出した定位置に置く

乾くまで適当な重しを乗せておきます。

HS書架では余っている本棚の棚板を重し代わりに使用(笑)

これで表紙デザイン印刷紙と厚紙の貼り合わせは終了です。

裁断と角の処理

しっかりと貼り付いたことを確認したら、表紙デザイン印刷紙を裁断します。内トンボ(仕上がり線)にそって、カッターで裁断。この時デザインの内側に金定規を置きましょう。万が一ズレても、外側へのズレならやり直しができます。

表紙デザイン紙の裁断

裁断の次は、厚紙からはみ出ている部分を折り返して厚紙に貼り付ける作業になります。折り返して貼る作業では、紙の角がそのままだと処理がうまくできないので、はさみで斜め45°に角を切り落とします。

この時、下の写真を目安に厚紙の角から少し離して切り落とすこと。近すぎると端の処理がうまくいかない場合があります。

角をはさみで切り落とす。厚紙の角から少し間を開ける
すべての角を切り落とした様子

すべて切り終えたら、折り返し部分に先ほどの混合接着剤を塗ります。念のため、私は余計な糊が他の場所につかないよう、余っている紙を下に敷いて作業しています。

混合接着剤を折り返しに塗る

厚紙からはみ出た折り返しの角は、隣の折り返しにくっつけておきましょう。こうすることで、すべての折り返しを厚紙に貼った時、見栄えがとても良くなります。

余った折り返しは隣の折り返しにしっかりとくっつける
折り返しをくっつけた様子。下の角が綺麗に処理できていることにも注目


全ての折り返しを厚紙に貼り付けたら、表紙は完成です。お疲れ様でした!

すべての折り返しを貼り付けた表紙の裏側
完成した表紙

たった一枚なのに、表紙作成にはいろんな作業がありますよね。でも表紙は作品の顔。きれいに仕上がれば、見栄えもぐんとアップします。きれいな豆本に仕上げるためにも、丁寧に製作しましょう。

次はいよいよ表紙と本文を合体する、最終の製本作業になります。ここまでくればラストスパート。頑張って仕上げましょう!


オンラインで購入した表紙製作道具たち

本文製作同様、表紙を作るときに使用したオンラインで買える道具たちをまとめておきます。

厚紙

デザイン用紙

シャープペンシル


書架の豆本たち


豆本製作ほかの工程は、こちらからどうぞ。


  1. 印刷データ作成編

  2. 本文作成編

  3. 表紙作成編(この記事)

  4. 最終製本編



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