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「フットボールは死んだのか」


2021年4月18日(ヨーロッパ時間)、サッカー界に激震が走った。

スペインの強豪クラブレアルマドリードの会長を務めるフロレンティーノ・ペレス氏が「欧州スーパーリーグ」の発足を発表し上記クラブを含むメガクラブ12チームが参加を表明した。しかしながら、発表するとすぐにサッカー界はおろか一部政界から同コンペティション発足に対して猛烈な批判がよせられた。またSNS上ではサッカーファンが「RIP Football 1863-2021」の文言をつけて投稿をしたり、各参加クラブの投稿に「No To The European Super League」のコメントも多く寄せられていた。

まず初めに、今回発表された「欧州スーパーリーグ」(以下欧州SL)の概要について少し見てみよう。

本コンペティションは現状参加を表明している12クラブ+3クラブ(現時点では未定)の主要15クラブを基軸として更にその他5クラブの計20クラブで構成される。なお、追加の5クラブは毎年の成績により出場が決定する。下記添付資料は欧州SLの仕組みを筆者がまとめたものなので参考までに

以下、現時点で参加を表明した12クラブである。

《イングランド:プレミアリーグ》

マンチェスターユナイテッド、マンチェスターシティ、アーセナル、チェルシー、トッテナムホットスパー、リバプール

《スペイン:ラ・リーガサンタンデール》

レアルマドリー、バルセロナ、アトレティコ・デ・マドリー

《イタリア:セリエA》

インテルミラノ、ACミラン、ユベントス

それでは、概要を説明したところでそもそもなぜ欧州SLが発足に至ったかについて考えてみよう。

今回の欧州SL構想は今に始まった話ではなく、数年前から各メガクラブ間で話し合いが行われていた。しかし、当時は不透明かつ現実味が薄いことから噂の範疇でしかなかった。ところが、2020年に入り新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るい様々な面で混乱が巻き起こった。その中でもスポーツ面への打撃は大きく、サッカーに関してはリーグの一時中断・早期切り上げに踏み切らざるを得なかった。そしてリーグ戦が再開された今もなお、無観客での試合により大幅な収入の減少に悩まされている。また、コロナが猛威を振る以前から主要クラブは欧州のカップ戦から得られる放映権収入に関してUEFA(欧州サッカー連盟)の独占的なやり方に異議を唱えていた。これらの様々な要因がすべて重なり条件が整ったことで、今回の発足に踏み切ったものであると推測できる。

それでは、欧州SLが始まるとなるとどのようなメリット・デメリットが生まれるのであろうか。

《メリット》

本コンペティションはすでにアメリカの世界的メガバンクJPモルガンより約6300億円の資金調達が決定しているとの報道があり、ひとクラブに対する賞金の分配額は大きく確固たる財源の確保が保証される。それによってコロナ禍で失ったクラブ経営を助けることになる。

《デメリット》

そもそも欧州SLの管轄はUEFAでもFIFA(国際サッカー連盟)でもなく独自で設立した団体である。このことから、現状では同リーグ参加クラブは国内外を問わず大会への参加が認められない。更には、当該クラブ所属の選手たちも代表チームで戦えないとのことである。つまり、事実上の追放である。これに関してはUEFAを含む参加クラブのサッカー協会は声明をした。

❝As previously announced by FIFA and the six Confederations, the clubs concerned will be banned from playing in any other competition at domestic, European or world level, and their players could be denied the opportunity to represent their national teams.❞

‐以前にFIFA及びその他6の連盟が発したように、関わるすべてのクラブは国内、欧州または国際レベルの大会でのプレーを禁止され、選手たちは国の代表としての機会を失うことになるだろう‐(筆者による訳)

尚、この記事を執筆している間にもUEFAによる当該クラブへの処分を下す会議が行われている。直近に下されるであろう処分としては現在欧州のカップ戦に勝ち残っている当該クラブを失格とするか否かである。

終わりに

私自身プレイヤーとしての経歴は短いが、フットボールはどんな時も常に私の中にあるキャンバスを彩る絵具である。勝つ喜び、負ける悔しさ、仲間と共に戦う一体感、プレーを通じた人格形成、リスペクトの気持ち等今日に至るまで多くのことを学んだ。しかし、今回の一件で私個人としては「フットボールは死んだ」と思う。世界を代表する主要クラブが情熱と夢を引き換えに利益を選んだ。世界の多くの人々に夢や希望、情熱を与えてくれたフットボールはもう存在しない。フットボールは金と共にあるものであろうか。     私は欧州SLには断固反対である。サッカーに夢を与えてもらった一人の人間として。

夢や希望、情熱はお金では買えない。


                             20/04/2021

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《参考・引用記事およびサイト》




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