かな入力にすると3.5倍遅い
キーボードの入力方式はローマ字入力とかな入力の2種類がある。いままでなんとなくローマ字入力でやってきたけれど、かな入力はローマ字入力より慣れれば、速いのではないかと考えた。なぜなら、かな入力はローマ字入力に比べて、あ行意外は打鍵数が半分で済むから。
結論から書くと、今のところかな入力のメリットだと思う、素早い打鍵スピードはぜんぜん得られていない。1か月ちょっとのぬるい練習では、ぜんぜんローマ字入力のスピードに追いつけない。タイピングの練習サイトなどで計測してみると、ローマ字入力のだいたい3.5倍くらい遅い。中学生くらいのときにはじめてPCを手に入れ、20年以上ローマ字入力派として来た訳だから、そんなすぐには慣れない。でも、新鮮な運指が好きで気に入っている。それに、かな入力に切り替えたことで気づいたことがいくつかある。
身の回りの家電で100%機能を使いこなせているものって案外少ない。例えば、電子レンジなんかがそうだ。何年も使ってきたレンジに意外なモードがあることにひょんなことから気づいたりして、しかもそれが便利だったりして、「なんでもっと早く気付かなかったんだろう」と後悔したり。
いま、もしPCでこの文章を読んでくださっているなら、あなたの目の前の道具も、きっと100%使い切られていないはず。そう、それはキーボードのことだ。とくにフルサイズのキーボードだとほとんど使わないキーがある。pause/breakキーとかがそう。調べたこともあるけれども、いまいち何のためにあるのか理解できなかった。
でも、いま話したいのはそんなマイナーなキーのことではなく、もっとキーボードの真ん中に位置しているキー達のことだ。「かな」である。アルファベットの下にプリントされているひらがな達。彼らを我々はどれだけ無視して来たことだろう。私はキーボードのひらがなに注目したい。つまりは、かな入力をしてみたのだ。
かな入力を始めたそもそものきっかけは新しいキーボードを購入したことだった。キーボードを毎日長時間使う生活を強いられていたので、キーボードの質を上げることが私のQOLを上げることになるだろうと考えたのだ。その発想は、「人生の4分の1の時間は睡眠に充てられている。なら、良い寝具を使うに限る」というのに似ている。そして、その考えは正解だった。
ちなみに買ったキーボードの名前はHHKBというものだ。購入を決める前にいろいろ調べてみたところ、合理的なキー配列と唯一無二の打鍵感が理由で定評のあるギアとのこと。なかなかいい値段なので、「えいっ」と心に勢いをつけて買った。仕事柄、エクセルをよく使いテンキーを多用して来たのでコンパクトキーボードは使いこなせない可能性があった。以前にコンパクトキーボード、ELECOMのTK-FBP102を買った際はテンキーがないことが不安だったので、別にテンキーを合わせて購入して併用していた。とても軽くモバイル性があり、黒地に白と青の印字が施された私好みのデザインのキーボードであったが、作業環境が変わった際に一部のキーがうまく入力できなくなってしまい、お蔵入りしていた。また、このときに感じていたのが、コンパクトサイズとテンキーを併用するのであれば、フルサイズキーボードのほうが一体化されている分、取り回しは洗練されているように感じた。なので、改めてコンパクトを買うことを決めた以上、テンキーを合わせて使うことはしないこととした。
結果からいうとHHKBの打鍵感は想像以上だった。今までのキーボードでもタッチタイピング出来ているつもりだったが、これは手元を見ずに打つことをより良くサポートしてくれるキーボードだ。多少の練習が必要だったものの、指先の感覚で数字キーの打ち分けができるようになった。これは、今まで使ってきたフラットなキープロファイル(キーの形状のこと)のキーボードでは難しいと思っていたことだ。今回購入したキーボードは、スカルプチャード(行ごとに段差のある)なプロファイルなので、数字キーのタッチタイピングが簡単にできるようになった。数字キーをタッチタイピングできるようになることが、かな入力を始める上で重要なのだ。なぜなら、かな入力では数字キーにかな文字が割り当てられているため数字キーを多用するからだ。
そして、数字キーをタッチタイピングできるようになった私は、かな入力を始めてみた。すると、キーボードってこうなってたんだと改めて気づくことがいくつかあった。
・基本的には1つのキーにひらがなは1つ割り当てられていること。でも、例外もあって、拗音がある文字は1つのキーに2文字が割り当てられている。また、さらに例外として、「わ」と「を」はなぜか同じキーだ
・濁音や半濁音を打ちたいときは、対象の文字を入力してから「゛」「゜」を打つということ。当たり前ではある
・かなの配置を覚えようとすると、50音の行によってかたまり感のある行とない行があることに気づく。例えば、た行は左手小指と左手薬指に配置が集中している。かたまり感がある。や行も入力に使う指はバラバラではあるものの、1行にきれいに収まっている。かたまり感がある。でも「ぬ」はどうだ。な行は「ぬ」以外はかたまりを形成している。なぜか「ぬ」だけが離れている。「ぬ」は孤独なのだ。また、は行も離れ離れだ。びっくりするほどに
・句点を打とうとして、句点と同じキーに割り当てられている「る」をミスタイプしては苦笑いをしている。例えば、「報告します。」と打ったつもりが「報告しまする」になっていたりする
・かな入力ではローマ字入力よりキーを満遍なく打鍵するのでキーボードをより使いこなしている感が強い。せっかくこだわりのキーボードを手に入れたのだったら、偏りなくキーを打ちたい。だったら、かな入力がいい
かな入力のある生活の提案、いかがだろうか。私は、入力スピードは激落ちしたけれど、かな入力を楽しんでいる。最後にキーボードそのものについて感じたことを少しだけ。かなの取り扱われ方が不遇なのだ。製品によっては、そもそもかなの印字がなかったりする場合があるのだ。たしかにない方が見た目はスタイリッシュだったり。町の電気屋さんで売っているキーボードの場合、大抵かなも印刷されている。しかし、すこし凝った製品を探し始めると様子が変わってくる。まず、個性的なキーボードを作っているメーカーの多くは中国にあるということだ。そうすると、なにが変わってくるのかというと日本語配列が支配的ではないということだ。メインの配列はUS配列と呼ばれるものが主流となっている。US配列になるとかなはほぼ印刷されていない。日本のメーカーの製品でも値の張るキーボードになると日本語配列ではあるものの、あえてかな文字を印刷していないものもよく見かける。これはなぜか。かな文字の印刷を省くことでキーキャップの見た目がすっきりするのだ。すっきりするとだいたいかっこいい。この理屈からだと、逆にアルファベットを省いたキーボードでもかっこよくなるだろうと思うが、出合ったことはない。
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