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内定者エッセイ vol.4 ~ミーハー大学生、嘘をつく。 ~

「バックパッカーとして、1ヶ月間旅をしました」
「グルメアカウントで2万人のフォロワーを獲得しました」
「中国のデモ現場に行き、参加者に取材をしました」
 
 これらはすべて私…ではなく、私が気圧された他の就活生たちのガクチカだ。たしかに大学生活は何か挑戦をするのに絶好の機会で、学生たちは多種多様な経験をする。分かってはいるのだが、それでもたまに、面食らってしまうようなことを成し遂げている人がいる。特に広告・マスコミ業界は特殊な体験をしている人が多く(私論)、もはや「私にもその話聞かせてくれ〜!」と面接官以上に興味が湧いてしまうこともしばしばある。

 一方で私のガクチカといえば、「ダンスサークルで練習に励んだこと」。幹事長だったわけでも、振付師を担当していたわけでもない、ただの平社員である。加えて、どうやら企業からするとダンスサークルの学生は「ミーハー大学生」らしく、あるセミナーでは講師のおじさまに「最近はダンスサークルの学生多くてね、正直またかってなるんです」と言われた(今考えるとひどい)。

就活を始めて早々にそんなことを言われた私は、自分のガクチカに自信がなくなった。だから、話を盛った。「ミーハー大学生」が注目してもらうためには、何か優秀な実績がないといけない。そんな不安から、ダンスサークルで1ヶ月間だけ担当した広報の経験を、あたかもそのおかげで公演が大成功したかのような物語に展開させた。うん、良い感じだ。面接官のウケもいい。けど —— とっても惨めだ。

 自分が本当に頑張ったのはたくさん練習を重ねたことなのに、それを自ら隠していることが悔しくて悔しくて情けなかった。私は「ミーハー大学生」だからダンスサークルに入ったんじゃない。小学生から続けてきたダンスが大好きで、大学生活の間に本気で上手くなりたくて、入ったのだ。だから、3年間どれだけキツくても続けてきたんじゃないか。自分で自分の努力を無かったことにして、一体何をやっているんだろう。

 それに気づいてから、私は自分を大きく見せることをやめた。代わりに、自分自身をもっと深く見つめ直した。ダンスサークルに入った時の気持ち、辛かったこと、嬉しかったこと……3年間の色々な感情を掘り起こしたら、私だけの物語が出来上がっていた。今度は、嘘偽りのない物語。あとは、それを言語化する練習をした。インパクトに欠ける分、どう話したら興味を持たれるか、印象に残るか、試行錯誤を重ねた。

 ちょうどその時期、日本SPセンターの面接を受けた。ダンスサークルの話題に入った時、正直少しぎくりとした。それでも私はゆっくりと、そして確実に、「練習を頑張った自分」を曝け出した。本当は振付も担当したいけど、それは自分よりも上手い子たちがやっていること。私はまだその域に行けていないから、誰よりも努力する気持ちで自主練習をしていること。それでも足りず、さらに成長するために勇気を出して外部のコンテストに出たこと。これまで変なプライドが邪魔をして誰にも話せなかった葛藤まで、怖いぐらい正直に話した。
 

「その話、もっと聞かせてください」

 
日本SPセンターは、等身大の私を受け止めてくれる会社だった。「ミーハー大学生」ではなく、「私」という一人の人間を見てくれていることが分かった。
 「ダンスサークルで練習に励んだこと」。これだけだったら、何万という学生が経験しているかもしれない。でも、その後ろにある経験や想いに目を向けた時、全く同じ人生を歩んでいる人間はいないのだ。だからこそ、自分の物語は自分にしか見つけられないし、語られない。
 

あなただけの物語は、なんですか?

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