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定年退職する 年金はどうしようか

繰り上げる? 繰り下げる? 働くと減る?

はじめに

 だいたい定年退職のころのなると、年金についても本気で考えるようになるようです。

 年金制度はかなり複雑です。その上、自分で決めることがたくさんあります。判断を間違えると、とんでもない損をするのではないかなど考えると、どうしたらいいのかわかりません。

 定年になる方の役に立つように、自分で色々と悩んで調べたことを整理しました。

 一人ひとり、年金の金額や給付条件は違います。間違いなく受給するためには、年金事務所で確認することをお勧めします。年金ネットでもいろいろ確認することができます。

年金事務所はとても親切に教えてくれます。消えた年金問題( 日本年金機構では年金記録問題というようです)のあと、親切になったのだという方もいますが、今現在、丁寧に教えてくれることは間違いありません。

ここでは、定年を60歳。定年後再雇用は65歳までとして考えます。

年金の種類

会社員の参考になるように、年金の種類を整理します。細かく定義することよりもわかりやすさを優先しました。
https://www.nenkin.go.jp/service/seidozenpan/20140710.html

厚生年金 

  • 会社員が入っているのは厚生年金です。

国民年金(基礎年金)

  • 20歳から60歳までの自営業者などの人が加入しています。

  • 厚生年金に入っている人(厚生年金に入っている人は、国民年金にも入っています)

  • 厚生年金に入っている人に扶養されていて収入が130万円未満の20歳から60歳までの配偶者も加入しています。


他に、障害年金について、理解しておいた方がいいです。

障害年金

概要
65歳までに障害を負うと障害年金を受給することができます。年金の受給を繰り上げると、実年齢に関係なく、その時点で65歳になった扱いとなり、障害年金を受給できなくなります。実際には、障害の種類、程度などの細かい規定があります。

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/jukyu-yoken/20150401-01.html

  • 国民年金に加入している間に障害を負うと障害基礎年金が支給されます。

  • 年金制度に加入していない期間(20歳前, 60歳以上65歳未満)に障害を負うと障害基礎年金を支給されます。

  • 厚生年金に加入している間に障害を負うと、障害基礎年金に加えて、障害厚生年金が支給されます。

 年金の繰り上げ受給をすると、その時点で65歳になったと扱われるので障害年金の受給権がなくなります。不幸にして大きな障害を負った場合に、障害年金を受給できなくなる恐れがあります。

 繰上げする場合には、自分で考えていることが正しいかどうか年金事務所に確認してください。


加給給付

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/kakyu-hurikae/20150401.html

  • 厚生年金保険の受給者が65歳到達時点で、その方に生計を維持されている65歳以下の配偶者または18歳になった最初の3月までの子供(高校卒業までの子供と考えられます)がいるときに年金に加算されます。

  • 年金の加算なので、年金を受給していないと加算されません。繰り下げしていると支給されません。

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/kuriage-kurisage/20140421-02.html
https://www.nenkin.go.jp/service/riyoushabetsu/cooperator/nenkiniin/7.files/shiryo5_2023.pdf


年金についての60歳から65歳の過ごし方

特別支給の老齢厚生年金を受け取りましょう

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/jukyu-yoken/20140421-02.html

昭和60年に、厚生年金保険の受給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられました。受給開始年齢を段階的に引き上げるために「特別支給の老齢厚生年金」の制度ができました。

昭和36年4月1日以前に生まれた男性、昭和41年4月1日以前に生まれた女性は、この年金を受給できる可能性があります。

 特別支給の老齢厚生年金は、繰上げたり、繰下げたりすることはできません。時効は5年です。受給を忘れていても、5年以内であれば受け取れます。
必ず受給しましょう。


任意加入制度 納付月数を増やす

20 歳以上 60 歳未満までの保険料の納付月数が 480 月(40 年)未満の場合、任意加入制度を使って、追加納付することができます。ただし、厚生年金に加入していない人が対象です。


就職して 厚生年金に加入する

厚生年金に加入すれば、年金額は確実に増加します。多くの会社では就職すれば、自動的に厚生年金に加入することになります。


繰り上げ受給で、早めに年金の受け取りを開始する

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/kuriage-kurisage/20140421-01.html

老齢基礎・厚生年金は、希望すれば60歳から65歳になるまでの間に繰り上げて受給できます。ただし、繰上げ受給を始めると年金額は減額されて一生変わりません。
また、障害基礎(厚生)年金を請求することができないなどの注意事項があります。


年金についての65歳からの過ごし方

65歳になってから、どんな働き方をするか、そもそも働くかなど、一人ひとりの状況や好みにもよるので、「お勧め」のようなものは決められません。

とは言っても、留意点はあるので整理します。

年金を繰り下げる いくら増えるだろう

年金を繰下げると、1月繰り下げるごとに支給額が0.7%増えます。70歳まで、5年間繰り下げるとなんと42%も増えるのです。そしてその支給額は一生変わりません。
つまり、70歳まで我慢すると、毎月の受給額が、1.42倍、ほぼ1.5倍になるのです。

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/kuriage-kurisage/20140421-02.html

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/kuriage-kurisage/20140421-02.files/hayamihyo.pdf

繰り下げて、元が取れるのはいつだろう

65歳で、月々100円もらえると仮定して計算してみます。

65歳から毎月100円もらうAさん。70歳まで待って毎月142円もらうBさんで比較します。

Aさんが65歳から毎月100円もらうと70歳になるまでに 100円 x 12ヶ月 x 5年 = 6,000円もらっています。この時点で70歳からもらうつもりのBさんは1円ももらっていません。

Aさんが65歳から毎月100円もらい続けて17年(204ヶ月)、82歳になると総額20,400円になります。
Bさんは70歳から毎月142円もらい、12年(144ヶ月)、82歳になると総額20,448円になります。

Bさんは82歳になって初めて総額でAさんよりも多くなります。その後は、毎月42円多いのでBさんの方がもらう額はどんどん多くなります。

ただし、税金もかかり、所得税はBさんの方が多分多いので手取りで考えると、追いつくのはもう少し先かもしれません。

毎月、0.7%増えると聞くと、貯蓄が増えるようなイメージがありますが、全額を一度に引き出せるわけではないのです。それどころか、途中で亡くなると、引き出すこともできません。

繰り下げ時には加給年金はもらえない

加給年金は、支給される年金に加算されるものです。年金が支給されるていない時には支給されません。対象の配偶者、子がいても、繰り下げ期間中は支給されません。

ただし、老齢厚生年金を受給していれば、加算されます。老齢基礎年金だけ繰り下げることで受け取ることができます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/nenkin_shikumi_011.html


繰下げの判断を保留する場合

65歳で受給開始しない判断をしても、遡って受給開始することができます。すぐに判断ができなければ、急いで決める必要はありれません。

65歳時点では「65歳から年金をもらうか」「繰り下げるか」を決めかねているならば、受給を開始しなくてもいいのです。

例えば、66歳になった時に「65歳から受給する」と決めれば遡って一括して受給することができます。最大5年まで遡ることができます。

例えば、72歳で遡って受給すると決めれば、67歳から72歳までの分を一括して受け取れます。そしてその後の支給額は、67歳まで繰下げた場合の支給額となります。

ただし、注意事項があります。年金を受給することで、税金や健康保険などの額も変わります。これらも遡って支払うことになります。さらに、税金は支払いが遅れたことで、増える可能性もあります。
判断を遅らせるということで、保留するならば税金などに影響が少ないように、一年以内くらいで判断した方がいいでしょう。


年金世代の働き方 働くと年金が減る?

働いて収入があると、年金が減ると聞いたことがあると思います

どのくらい働いたらどのくらい減るのでしょう。仕事を制限してあまり収入を減らした方がいいでしょうか。整理してみました。

厚生年金保険に加入して、支払いをしながら働くと、年金の支給が減ることがあります。「在職老齢年金」と言います。

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/zaishoku/20140421.html

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/zaishoku/20150401-01.html

削減(支給停止)になるのは、老齢厚生年金です。基礎年金部分は削減されません。また、厚生年金に加入していなければ、いくら稼いでも削減されません。

つまり、会社員とならないで、個人事業主などで仕事をする場合、いくら収入があっても、老齢厚生年金は削減(支給停止)されません。

どのくらい減るのでしょうか
厚生年金と月額相当給与(賞与を含む年収の12分の1) が 50万円を超えると、超えた分の1/2 が 年金から引かれます。具体的には、どのくらいの収入があると、どのくらい年金が減るのでしょうか。

老齢厚生年金の額は最大で、月額30万円くらいとなります。その場合、月額20万円程度、年収で240万円程度までは、減額はありません。

老齢厚生年金の額が30万円の人は、月収が80万円になると、(30+80-50)/2 =30 となり、30万円減額となり、支給はなくなります。

つまり、老齢厚生年金が30万円支給されている人は、月収が20万円を超えると、支給額が減り始めます。そして、月収が80万円になると、(80+30-50)/2 =30で、30万円減額となり、支給はなくなります。

老齢厚生年金をほぼ最大の30万円受給している人でも、月給20万円までは、支給額は減りません。支給額が減ることを心配しないといけない人は少ないでしょう

まとめ

  • 年金の繰上げ、繰り下げなど、一度手続きをしたら変えられません

  • 65歳まで - 繰り上げ受給するならば、不利益も知ること

  • 65歳から - 繰り下げ受給するならば、受給期間や総額も考えること

  • 仕事をして年金が減るのが心配ならば - 年金は本当に減るのか、どのくらい減るのか確認すること

  • 障害基礎年金、障害厚生年金、加給年金など、いろいろな制度を考えて選択すること

そして、判断前に年金事務所で確認すること。

2024.09.05


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