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10年ぶりに年賀状を出せた話

どうか許してください…!出すのがめんどくさくて、めんどくさくて、めんどくさかったんです…。というのは建前かつ本音。実は私、昔から年賀状づくりに苦手意識があったんです。というのも生まれてこの方、字がキレイな方ではなくて。特にボールペンや筆ペンで字を書くのが、大の苦手。手が震えておぼつかないし、真っ直ぐ書いているつもりが、いつの間にかカーブしているし(重力って横にもかかってるんか?ってくらい)。宛名書きの時点で失敗したり、宛名を上手く書けても自分の住所を書き損じてしまったり。幼少期にかなりの数のはがきを買い直しては、書き直してきました。PCで作るなどいくらでもやりようはあったとは思うのですが、年賀状で失敗した原体験がチラついて、だんだん制作するのが怖くなってしまい。しかも高校生、大学生になるころには「新年のあいさつはSNSで」という友人も増えてきて、「じゃあ自分も出さなくていいかな」と喜んで年賀状から距離を置きました。ではなんで今さら年賀状を?そのきっかけを今回まとめています。

すみません、申し遅れました。言葉を軸にアイデアを考える「コピーライター」をしている、福原弘志と申します。せっかく10年ぶりに年賀状を出せたので、その過程を残したく!しばしお付き合いいただけると嬉しい、です!よろしくお願いいたします。


実際に出した年賀状

9月からおよそ3か月。打ち合わせなどを重ねて企画・制作を進行。そして完成したのが、実際に送ったのが、こちらの年賀状です!!ドン!

縁起のいい金銀の2色展開
吹き戻し・抜け殻カバー・遊び方カードを同封して送付

CREDIT
ART:にくこ(@Nikugasuki0625
PLANNIG/COPY:福原弘志(@fuku_copywriter

「これは年賀状?」という声が聞こえてきそうですが・・・年賀状です。

脱皮すると現れる「DAPPY NEW YEAR」の文字
同梱した手順を解説するカード

誰が何と言おうと年賀状です。被せて、くわえて、吹いたら、脱皮するタイプの。よく見ると伸びた部分に「DAPPY NEW YEAR」 と書いてありますし。同封されているカードにも「DAPPY NEW YEAR」 と書いてありますし。1月1日にしか言えない感じの言葉が書いてあるので、れっきとした年賀状。年賀状ったら年賀状です(なんかM-1で優勝したものの、その芸風から「漫才?漫才じゃない?」と賛否を呼んだマジカルラブリーのお二人もこんな感じの気持ちだったのかもしれない)。

いやでも、こう見えてちゃんとテーマを決めて、真面目に作ったんですよ。へびといえば、脱皮ですよね。そして脱皮は成長の過程で起こるもの。脱皮をテーマにすることで、手に取ってくれた人に「今年はなんだか一皮むけて成長できそうだ」と感じてもらえるのでは?そこで「吹き戻し」を活かした本当に脱皮する仕組みにすることで、「2025年が飛躍、皮躍(ぴやく)の年になってほしい」という想いを込めて、縁起の良い年賀状にしました。

一人で作れないなら一人で作らなければいい

出会いはチャンスに変わっていく

今回の年賀状ですが、デザイナーのにくこさんと共同で制作しました。にくこさんが主にアート/デザインの観点から、私が主に言葉の観点から。時にはお互いの専門領域を行き来しながらアイデアを考えていきました。

にくこさんとは宣伝会議の講座、「アートとコピー」3期(2023年)で同期でした。コピーライター・ライターとアートディレクター・デザイナーを対象とした講座。毎回異なるコピーライターとデザイナーでタッグを組み課題に取り組んでいきます。にくこさんとは初回の課題で組んだり、講座が終わった翌年の販促コンペという企画の公募に一緒にチャレンジしたりしました(卒業してから1年以上経っているのですが、アートとコピーで出会った方と一緒に公募で組ませていただくなど、今でもご縁がつながっております。本当にありがとうございます!)。

そんな販促コンペの打ち上げをしている中で、「公募もいいけど何か自主制作をしたいね~」という話に。(この後紹介するのですが)私自身、自主制作に対して憧れがありまして。せっかくのチャンスを逃すわけにはいかない!というわけで、打ち上げが終わってからそれほど期間を空けずに「作るものを決めるMTG」を設定しちゃいました。

自主制作をしている同期への憧れ

何をつくろうか。色々と作りたいものがありつつも、まず手始めに年賀状をつくろうということで話がまとまりました。というのも、アートとコピーの同期の他のペアが、自主制作で年賀状を作っていたんです。

お二人の取り組みを見て、「デザイナーとコピーライターだからといって、必ずしも広告を作る必要はなくて。なんなら広告という枠を超えて色々な物を作って良いんだ」ということに気づかされました。しかもお二人が実際に形にしたものが、色々な人たちの手に渡り会話のきっかけが生まれたり、ご縁が繋がって新しい企画が生まれたり深まったりしていく。そんな様子を傍から見ていて、「自分も何か自主制作をしてみたい」と羨ましくなってしまいました。年賀状に対して苦手意識はあったものの、一人では難しいことも、誰かと一緒なら形にできる。なんならアートとコピー、コンビそれぞれの強みを掛け合わせることでアイデアがよりよい物に仕上がる。一人で作れない。だったら一人で作らなくても良いのでは?講座を通してそれに気づけた今なら、満足のいく年賀状がつくれるかもしれない。にくこさんの力を借りながら因縁の年賀状に10年ぶりに挑むことにしました。

作りたいものを作りました

コンビで取り組むわけです。お互いの時間の合間を縫って取り組むわけです。だからこそやりたいことをやることにこだわりました。「縁起のいいものにしたい」、「ユーモアあふれるものにしたい」、など、色々な希望が出てきました。それらを踏まえていったところ、自主制作の軸が自然と現れました。

  1. 受け取る人にとって意味のある(メッセージ性のある)ものにする

  2. 年賀状の枠にとらわれず面白いものをつくる

  3. 今まで作ったことのないものをつくる

脱皮がいい落としどころだった

2025年は「巳(へび)年」。そこからお互いにアイデアを広げていきましたへびのニョロニョロのイメージから「波」をモチーフにしてみてはどうか、巻き付いてくるイメージからコースター形状にしてはどうかといったアイデアなどが登場。

実際にアイデア出しで使ったmiroのボード

こうして出し合ったものを見ていく中で、お互いに「!」と思えたアイデアの種がありました。

  • へびといえば脱皮。そんな成長の過程で起こる「脱皮」をテーマにしたら、「成長」の未来を感じてもらえるような縁起のいい年賀状になるのでは?

  • 単に細長くてヘビに見えるだけでなく、吹くと伸びる吹き戻しで年賀状を作ったら面白いのでは?

この二つの要素を眺めていくうちに気づいちゃいました。「脱皮=成長」をテーマにするのであれば、この吹くと伸びる「吹き戻し」の形状はとても相性がいいはず。吹き戻し×脱皮×年賀状。

  1. 受け取る人にとって意味のあるメッセージ性のあるものにする

  2. 年賀状の枠にとらわれず面白いものをつくる

  3. 今まで作ったことのないものをつくる

うん、最初に決めた方針にも沿っている。そして、打ち合わせが終わった後にすぐに「HAPPY NEW YEAR」を文字った「DAPPY NEW YEAR」というコンセプトもすぐに浮かんで、かなり案が盛り上がったんです。行けるぞこれは!こうして、脱皮する吹き戻しの年賀状制作が始まりました。

完成までの道のり

私たちはどう脱皮させるか

元々は筒のところにヘビの抜け殻の厚紙を付けて、伸びる部分を脱皮した後のヘビに見立てる想定でした。しかしそれでは吹いてもただ伸びるだけで「脱皮するシズル感」をあまり感じてもらえない。それに脱皮状態を楽しむには、ずっと息を吹き続けなければなりません。肺活量が物を言うゲームになってしまい、楽しめる方が少なくなってしまう。そんな中、にくこさんが提案してくれたのが、「吹き戻しそのものをヘビ見立てて、そこにヘビの抜け殻を模したカバーを付ける」というギミック。そうすれば吹くと勢いよく皮が飛び出して、脱皮した感が増幅するのではないか?

プロトタイプ:抜け殻カバーと本体
抜け殻をかぶせるとこんな感じ

そして半透明のトレーシングペーパーにヘビの抜け殻の模様を印刷してカバーを制作すれば、脱皮する前の雰囲気をだせるし、脱皮させた後は抜け殻にちゃんと見える!まさしく、一石二鳥のアイデア。抜け殻カバーをかぶせて吹く形式を採用し、シズル脱皮を実現していきました。

ヒントにしたのは本物の抜け殻

今回制作する上で特にこだわったといっても過言ではないのが、ここまでご紹介してきた吹き戻しにかぶせる抜け殻カバー。本物のヘビの抜け殻を観察しながら作ったんです。

ある日打ち合わせをしていてお伺いしたのですが、にくこさんのご実家には畑があるそうです。お母さまが「よくヘビの抜け殻が落ちている」と仰っていたのを思い出してくださって。打ち合わせの翌日、早速にくこさんが「ヘビの抜け殻が欲しいんだけど」とお母さまに連絡をとったところ・・・

実際に畑に落ちていた抜け殻

ありました笑。朝メッセージを送ったそうなのですが、その日の午前中にはそれはそれは立派な抜け殻が見つかったそうで。まさかLINEで「ヘビの抜け殻見つかった」というやり取りをする日が来るとは、思ってもみませんでした。

プロトタイプ
プロトタイプたち

こうして本物の抜け殻の手を借りながら、模様の入り方や折れ具合などを研究。何パターンも試作して、リアルな抜け殻カバーを仕上げていきました。

完成した抜け殻カバー

伸びる部分は手づくり

「DAPPY NEW YEAR」が書かれた頭の部分ですが、グラシン紙という、実際の吹き戻しの頭部分に使われている素材を自分たちでオーダー。針金の上にグラシン紙を載せて一つひとつ手で巻き癖を付けていきました。

こんな感じで入稿しました

これの無地のセットを注文して針金や筒の部分を調達

この動画を参考に一つ一つ巻き癖をつけました

もちろんパッケージもこだわる

吹き戻しをそのまま投函するわけにもいかないので、封筒に入れて送ることにしました。封筒もきちんとこだわりたいねと2人で話しました。郵便受けから取り出した瞬間、それは年賀状の第一印象を左右する勝負の瞬間だからです。とはいえメインは年賀状本体の脱皮ギミック。パッケージに脱皮要素を入れ過ぎてしまうと、ネタバレになってしまう。しかしさっぱりした印象では、他の方の豪華絢爛な年賀状に比べて見劣りしてしまうし、もしかしたら年賀状だとは認識されずに誤って捨てられてしまうかも。そこで情報量は抑えつつ、程よく目立つものにすることに。結果的に、封筒にはパステルカラーの抽象的な波模様をあしらうことにしました。

この形状はヘビのニョロニョロから連想色は複数を混ぜ合わせて、ゆらゆらと色が移ろう・変化していくようなグラデーションに(まるでポケモンが進化する直前に揺らぎながら光る感じ)。ヘビや成長のニュアンスを、直接的には伝えずに、象徴的に表現しました。

ハガキ以外を年賀状として送るには

こうして無事に完成した年賀状。しかし、今回はハガキではなく、吹き戻しを封筒に入れて「年賀状」として送るというイレギュラーなケース。ポストに投函するのでは確実に届く確証が無かったので、郵便局に持ち込んで発送してもらうことにしました。局員さんに見てもらったところ、「これは定型外郵便ですね」との宣告が…!(吹き戻しを封筒に入れたことで厚みが出てしまったのが要因…)1月1日に届くようにするには、別途料金を支払って日付指定で出す他ありませんでした。

ハガキを使わずにオリジナル年賀状を出される方は、ご注意ください…!郵便局に持って行っていただくのが安心&送料も多めに見込んでいただくといいと思います!

企画・制作してみて

本当に10年ぶりに作った甲斐があったなと思いました。今回にくこさんと一緒に制作して、考えたものがどんどん形になっていく過程で年賀状への苦手意識が薄まりましたし、何なら一人で考えるより良いものができたと思います(にくこさん本当にありがとうございました…!)。

作った年賀状は何人かの方に実際にお送りしたのですが、

  • 脱皮しました

  • 年始早々家族で楽しく遊べました

  • 子どもに取られてびしゃびしゃにされた

などのご感想をいただき、新年早々心が満たされました。それに、住所を聞いたり感想を伝えあったり。年賀状をやり取りを通じて最近連絡を取っていなかった方とコミュニケーションをとる機会にもなって。年賀状は新年のご挨拶でありながら、話したい人と話をしたり、ご縁を深めたりできるいいきっかけにもなる。枚数が年々減少していると報道はされるものの、それでも年賀状の文化が今日まで続いているのは、年賀状が本当に魅力的な文化だからなのだと実感しました。

2026年どうするかはまだ決めていないのですが、作るのであれば、またこだわって作れたらいいなあと思っています。

年賀状は自主制作デビューにちょうどいい

年賀状の場合、次の干支(モチーフ)が決まっているので、一からモチーフを選んで考えなくても大丈夫。ゼロから考える自主制作よりも挑戦するハードルが高くないように思います。それに、翌年の1月1日に確実に届くようにするには、12月25日には出さなきゃいけない。自主制作ではありつつも締め切りが設定されているので、ペース管理がしやすい。それに、「年賀状を送りたいので住所を教えてください」は「私は絶対に年賀状を完成させますので」とほぼ同じ意味だと思うのです。宣言したからには途中で投げ出せませんよね。完成まで持っていきやすいという利点があるのではないでしょうか。「何か自主制作をしてみたい」という方にとって、年賀状はいい機会になると思いました。本当におすすめです。来年みなさんの年賀状が見られるのを楽しみにしています…!



余談です

最近アートとコピーのOBのみなさまとお会いして非常に刺激を受けたので、どうしても書きたくなり追記しています。ほぼ番宣?みたいなものなので飛ばしていただいても大丈夫です。

①公募や自主制作/提案に挑戦したい
②アートとコピー について聞きたい
③壁打ちしたい

などなどあればぜひお声掛けください…!

①公募や自主制作/提案に挑戦したい
今以上に積極的にやっていきたいと思っています。早く自分の代表作を作りたくて、1つでも多くの打席に立てればと思っています。良いアイデアを出したり、みなさまのアイデアを言葉でブーストさせるので、ぜひご協力させてください…!

②アートとコピー について聞きたい
私は講座期間中、みんなに刺さるアイデアを出せていないしヤングコンペでの受賞はしていないしで、華々しい成績を残している方ではありません。ただ、その分色々な方にお声掛けをしたり、組んでくださる方の良いところを伸ばそうと自分がやれることをやりまひた。卒業後も同期のみなさまに力を貸してもらえていて、公募などに挑戦し続けることができ、アートとコピーを通して少しずつ自分の可能性が広がっている感じがします

とはいえ、公募の受賞実績の一覧をご覧になって「私なんかが…」とか「付いていけるかな…」と参加をためらってしてしまう気持ちもすごく分かります…。しかし、引け目を感じすぎることはないです。何なら「アートとコピー≒公募」「公募ですごい結果を残す人たちが集まる」というイメージは、間違いでは無いんですけど、ほんの一面でしかありません。例えばアクセサリーやボドゲを企画・制作してイベントに出展したり、自分たちでスペースを借りて展示を催したり、公募に限らず各々が一番輝ける領域を見つけて、そこで実力を発揮して可能性を広げています。公募に限らず自分の可能性を見つけたい、形にしたい。その気持ちがまずは何よりも大事。あなたにだって参加する資格はあるんだ。必要以上に遠慮せず、勢いに任せて飛び込んでみても大丈夫かと思います!

とはいえ定員の関係の兼ね合いで参加できない可能性はあります…(こればかりは運の要素も大きいので、みなさんに素質がないということではないです。なのでご縁が無かった場合は、アートとコピーのことは責めても、どうかご自身のことだけは責めないでください)。もし「参加してみたいけど不安…」「ポートフォリオが…」という受講に関することや、万が一「エントリーしたけど今回お祈りされて…」などあれば、私でよければ話を聞きます…!こうやって偉そうに記事を書いてる私もアートとコピー浪人組。数年待ってようやく参加できた側です。絶対とか確実をお約束するアドバイスはできないですが、一緒に考えたり背中を押したりはきっとできると思います…!

③壁打ちしたい
お任せください。

少しでも引っかかることがあれば、ぜひDMなどください!今後ともよろしくお願いします!

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