ラスプーチンの再来を畏れるプーチン?

ロシアという国は近代化が西欧列強に比べて遅かったのですが、下記の引用記事のように宗教的存在がそれなりに住民に影響力を持っています。

プーチン退治を目指す霊媒師が掻き立てる地方の「怒り」
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/11/post-13415.php
ガビシェフは今年3月、8000キロ先の首都モスクワを目指して徒歩で旅を始めた。目的は、ウラジーミル・プーチン大統領という悪魔を退治すること。道中で支持者を増やして首都に入り、大勢が見守るなかで悪魔払いを行おうというもくろみだった。

もちろん、アメリカ合衆国だって田舎に行けばキリスト教の頑迷な信者がいて、進化論も地球が丸いことも認めないような人が住んでいます。その点はアメリカもロシアも大差なく、広大な領土が半面仇となっているのだと思いますが、じゃあトランプ大統領が地方の司祭や牧師を不当に拘束するかと言ったらそこまではしないでしょうし、そういう人が影響を及ぼせる範囲も限られているはずです。

その面では、ロシアはもっと宗教的存在、この記事で言えばシャーマンのような立場の人が強い影響を人々に及ぼせる社会が残っているようです。

ロシア当局に警戒される霊媒師と聞くと、ロシア帝国末期のラスプーチンを思い出してしまうのですが、さすがにこの記事のシャーマンの方にしてみたらラスプーチンとは比べられたくないでしょうね。

しかし、ラスプーチンとの大きな違いとしては、ラスプーチンはロシア帝国の中枢である皇帝一家に深く入り込んで権力を手に入れたのですが、今回のシャーマンは最初から反政府のような感じになっています。ラスプーチン死後に起きたロシア革命からソ連崩壊までの二十世期の大半を共産主義がロシアを覆い、宗教が制限されていたこともあるでしょう。ソ連崩壊後のロシアは正教との関係性は悪くないようですが、それは権力者と権威者の協力であって、地方の境界はまた別なのかも知れません。

プーチン大統領自身が、このシャーマンであるガビシェフの力そのものを真剣に恐れているというよりは、影響力を恐れているのでしょうけれど、拘束や強硬手段に出てしまうとかえって逆効果のような気がしますがいいんでしょうか。たとえ殺したとしても次々に同じようなシャーマンが現れる気がします。

ただ、ロシアは西洋社会に比べると権威主義的ですし、プーチンが権力を握り続けている以上はそれほど大きな混乱は起きないでしょう。問題はプーチンが誰かに権力を譲った後(もしくは死んだ後)でしょう。

最初に、アメリカではシャーマンのような存在が大統領に影響を及ぼさないと書きましたが、トランプ大統領が保守派(旧習派)と上手くやっているうちは問題ないでしょう。しかし、それらの存在と対立し始めると、右から左まで、上から下までトランプが四面楚歌の状態に陥ってしまうと分かりません。手っ取り早く、現行の法体系と対立しそうな田舎の新興宗教を過剰に弾圧して、かえって混乱を招きます。そうなるとロシア以上にアメリカの方が国力を一時的に落とすことにもなりかねないかも知れませんね。

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