生活の質を維持するための冗長化
7月2日未明から始まったKDDIの通信障害は発生から3日以上経ってようやく収まりました。日本の携帯電話事業の歴史上、最も大規模で長期間に及ぶ障害となりまして、総務省が非常に厳しい処分を下すことは間違いないでしょう。
記者会見に出てきた社長以下、KDDIの当事者の説明や対応自体は問題ないというか、むしろ好感度が上がったという人も多かったくらいですが、インシデントが非常に長きに渡ったことや、障害による被害・迷惑を被った人への周知方法やその内容についてはやはり問題はあったのかなと思います。
ともかく、これからKDDIは今回の事象の詳細な原因究明、契約者への補償、そして再発防止策を講じることになり、全社的に忙しくなってしまうのでしょうね。
私自身はpovo2.0の契約者ですので不便と言えば不便ですが、楽天モバイルも契約していますのでそちらの回線に切り替えれば全く問題ないですし、メイン電話番号も楽天モバイルの方ですので、この障害期間中に何一つ困らなかったのですが、困ったことになった人の中には、
「auなんて使ってられるか!」
というお怒りの感情からすぐに解約、他社へのMNPという行動に出る人も結構いることと思います。
まあ、こんな大規模障害を起こしたのだから多少の顧客離れはauも覚悟せざるを得ないでしょう。普段は0円運用も出来るpovoならともかく、毎月数千円支払っているauやUQの契約者はそこそこ減るでしょうね。ただ、そうなると減った分だけKDDIは売上利益が減りますが、通信回線は空きが出ることになり、残った契約者が空いた分だけつなぎやすくて高速化した回線を享受出来るようになります。
今回のKDDIの一件でそういうことが起きたとしたら、それは障害に起因するモノですが、それだけauの回線を気に入っていた、便利だと思って使用していた人が多かったということでもあります。
便利なサービスに利用者が増えて、逆に不便になるとまた人が離れて、今度は残っている人は便利になるという現象はしばしば起こります。
よくあるのがお得なクレジットカードでして、還元率が高いカードに利用者が群がり、そのカードでの契約者が増えてカード会社が目的を達したら還元率を下げて、そうなると還元率目当ての利用者が離れて別の還元率の高いカードに移動していきます。
みんながみんな移動していくわけではありませんが、良いものには利用者が集まり、増えすぎて不便になると離れていく、ということは珍しくありません。
携帯回線やクレジットカードなどはすぐにでも乗り換えられますが、インフラ関係はそう簡単には移行出来ません。
電車の路線ですと、便利な路線の沿線に移り住む人が増え、電車が混雑しすぎになり、地価も上がって安い店舗が減り不便になってしまい、とはいえすぐに引っ越すわけにもいかない、となると不便さの中での住民同士のチキンレースになります。
さらに、電車の路線が事故で動かなくなると、その路線でしか行動できない沿線ですと悲惨なことになります。代替のバス輸送はさらに混みますし時間も読めません。
乗換駅近く、あるいは別の路線までそう遠くないような住所なら何とかなりますが、それは携帯回線で言うと、デュアルSIM・複数回線持ちみたいなものですね。
携帯回線に限らず、今自分が使用しているものが使えなくなったときに、代替手段はあるかという「生活手段の冗長化」というのは、生活の質を「急激に下げない」ために必要なのでしょうね。
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