ファッション業界に対する問題提起とZOZO批判は分けて考えるべき
良くも悪くも話題になるZOZOの前澤社長ですが、以下の記事では比較的冷静というか、結構納得出来る話が展開されていました。
やっぱり、前澤社長が悪いのか 「ZOZO離れ」の原因
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1902/26/news057.html
前澤社長の言動が結構いろいろなんというかアレな感じで世間的に拒否感をもたれやすいことは否めないですが、ここで取り上げられている、
「どうせ少し時間がたてばセールになるので、洋服を定価で買うのは馬鹿らしいと思う」
「自分が定価で買った洋服が、あとあとセールで安く売られているのを見たときの気持ちは?」
「いまお店で約1万円くらいで売られている洋服の原価がだいたい2000~3000円くらいだということを、皆さんはご存知ですか?」
といったこれらの発言を失言として馬鹿にする風潮はいかがなものかと思います。
私自身、かつて日本の繊維業界の隅っこの端っこのごく一部に関わっていたことがありますので、上記の発言に関しては反発心というよりも業界の一部の人間が心の中でずっと疑問に思っていることを表に出しただけだと思っています。
そして上記リンク先では、経産省の方針として
「原価率を下げて大量生産し、余った在庫をセールで売る――。その悪循環が競争力を損なうと指摘した」「商社などの卸を挟むアパレルの場合、原価率は2割程度と言われている。定価が1万円の場合、原価は2000円という計算だ。百貨店などへの出店にかかる費用、輸送費などの中間コストに加えて、セールで大幅値引きをしても利益を残せる価格に設定されている」(日経MJ 2017年10月2日)
というものがあることを示していて、前澤社長の発言と合致しており、繊維業界・ファッション業界における非効率性と消費者にとって不公正な状況をまさしく経産省が問題視していることが明らかです。
最近では総務省が携帯電話キャリア(MNO)に対して厳しい要求を続けていますが、ファッション業界も政府や社会からの非難を免れるわけではありません。
私が繊維業界で仕事していた頃も、
・上代と仕入れ値の大きな差
・下請けや加工屋への過度な要求
・値下げ前提の上代や在庫管理
・そもそもバーゲン品として最初から作成する
・バーゲン品だからという理由で下請けや加工屋に最初から値下げを要求する
といったことについては疑問に思っていましたが、私には改革する力もやる気も無く、業界からも離れてしまいました。そしてこういった問題は今もまだ存在するようです。
半年ほど前ですが、イギリスのバーバリーで大量に在庫商品を焼却処分したことが問題視されました。
英バーバリー、42億円相当の売れ残り商品を焼却処分
https://www.bbc.com/japanese/44895854
皮革商品は当然ながら動物に依存していることから動物虐待の観点からも非難されますし、木綿も大量の肥料と水を消費しますので天然素材だからといって自然に優しいわけではありません。むしろ動植物を無駄にしている点では化繊製品よりも罪深いという見方も出来るでしょう。
繊維業界・ファッション業界は長い間社会的矛盾を抱えながら発展してきました。しかしもう今の時代では通用しません。前澤社長がここで叩かれてしまったのは業界からの過剰反応でもあります。
そもそも、仕入れた商品を安く売るのはダンピングでない限りは自由です。定価販売の強制は公正取引委員会によって処罰されます。かつてのダイエーや最近ではAmazonなど、小売業界を破壊するゲームチェンジャーはたびたび現れてきました。ファッション業界だけがその破壊から免れることはあり得ないでしょう。
ZOZO及び前澤社長の問題は、その言動にあるというよりも、業界の慣習を破壊するほどの販売力がまだ弱いことではないでしょうか。力があれば仕入れ先がブーブー文句を言おうと売ってもらう為に卸すはずです。現時点でZOZOタウンからメーカーやブランドが引き上げられてしまうのであれば、それは業界の悪習だけでなく、ZOZOの売る力が足りないからです。前澤社長が女優と交際しているとか、宇宙に行くとかはどうでもいいことです。前澤社長が本当にこの業界の問題点を突き崩せるのか。Twitterも止めて本業に集中するという前澤社長の変革に個人的には期待しています。
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