サッカーチームを応援する価値はどこにあるか
先日、松本山雅FCのホームページで「経営責任について」というリリースが公開されました。
Twitterで流れてきて知りましたが、さすがにこれはないんじゃないか、と思いました。そもそもクラブがJ2からJ3に降格してしまったことを「経営責任」と言うべきではないんじゃないですかね。
チームの戦績における失敗はあくまで強化方針の失敗であって、100%無関係ではないものの、株式会社の経営陣が「経営責任」を問われるというのは驚きました。
クラブが経営破綻したり、あるいは大赤字のために中心選手を手放して弱くなったならまだしも、そうでないなら経営責任と強化責任は分けるべきなんじゃないでしょうか。
強化担当の人事や、強化に回す経費を決めた責任は少なくとも経営幹部にはあるでしょうけれど、これが当然になってはいけないはずです。Jリーグクラブ経営者のなり手がいなくなりかねません。
松本山雅FCというクラブがJ3に落ちることなどあってはならない、と思う人がクラブの内外にいることは理解しますが、もし、スポンサーか株主からいろいろあれこれ求められたからというのであれば、それこそあってはならないでしょう。海外のクラブや、日本のプロ野球でもたまにそういう話は聞くが、オーナーが強化方針に口出しするとろくな事になりません。
そもそもサッカークラブの経営は、売上利益を上げることが至上命題である一般的な営利企業と比べるとさらに難しくなります。売上利益を上げることはもちろん必要ながらも、単に利益を積み重ねるのが良いのではなく、お金を強化に注ぎ込んでサッカー自体の成績を良いものにする必要があります。
大黒字で平凡な成績のクラブと、収支トントンで優勝するクラブのどちらが良いかというと、比べようもないくらい後者に決まっています。その一方で、大赤字で優勝や昇格を目指すクラブが時々出てきますが、失敗すると悲惨なことになります。
大黒字で優勝すればもちろん一番良いのですが、優勝すれば人件費が上がりますので翌年以降の利益が減るか、選手が出ていって成績が下がります。この辺は社会システムとして良く出来ています。
それでも川崎フロンターレのように好成績を続けていけるクラブもあるわけで、当然ながらクラブそれぞれで経営方針の良し悪しは出てきます。
昔、ガンバ大阪のファンクラブミーティングに出たことがありますが、当時の金森社長がヨーロッパ視察の際に向こうのサッカークラブの社長に、
「サッカークラブは苦痛を売る商売だ」
と言われたと話していたのを覚えています。サポーターはチームが勝てば気持ちの良い一週間を過ごせますが、負ければモヤモヤを一週間抱えます。全てのクラブが優勝や昇格なんか出来るわけがないので、満足するシーズンを送ったクラブのサポーターは、そうではないサポーターよりもはるかに少ないはずです。基本的には応援するということはお金を払って苦痛を買うことです。
それでもサポーターはサポーターであり続けます。それは単なる勝ち負けや苦痛のみでサポーターをするしないで決めているわけではないからです。その価値をクラブは提供しないといけないのですが、単に成績そのもので「経営責任」が問われることになると、「サッカーを見る」・「サッカークラブを応援する」・「サポーターになる」ことが、目の前の試合の勝敗のみに価値があると見なすことになってしまうのではないでしょうか?