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ローリスクハイリターンは難しい

「あの泥棒が羨ましい」
という書き出しで江戸川乱歩の「二銭銅貨」は始まります。泥棒でなくとも楽して稼ぎたいと思うのは人の性ですが、旨い話はそうそうありません。タダより高いものはない、とはよく言いますが、タダでなければ美味しい話があると思ってしまうのも人の性なのでしょうか。

ハイリスクゼロリターンになると詐欺そのものですが、ハイリスクローリターンのような投資、取引、やり取りは山ほどあります。

リスクとリターンのバランスが取れているのはハイリスクハイリターンか、ローリスクローリターンとなりますが、どうしても割の良いものを狙ってしまいがちです。

しかし世の中にはローリスクハイリターンなんてほぼありません。よほどの運と実力があってようやく掴めます。個人で言えばそうなりますが、国家レベルで考えても簡単に富を掴む手段はなかなか無いものです。

ローリスクハイリターンの道に見える、莫大な富を安易に得られる資源に頼るのは、未来が明るいとは限りません。

日本は資源がない国です。実際にはかつては石炭産業が盛んでしたし、海に囲まれているので海産物には事欠きませんが、原油や鉄鉱石やレアメタルなどで言えば確かに資源はありません。

そのため、資源に頼らずに経済を発展させねばなりませんでしたが、先人達の営為と奮闘によって世界3位のGDPを生み出す大国になりました。1位のアメリカはともかく、2位の中国はそもそも人口が10倍以上あるのでノーカウントと言いたいところですが、1人あたりGDPを言い出すとむしろ順位がもっと下がります。

1人あたりGDPでのランキング上位はたいてい金融産業が盛んな国ですが、カタールやオーストラリアのような、資源に恵まれた国もランクインしています。

そうは言っても、世界には原油産出国は数十ヶ国ありますし、鉱物資源に恵まれた国もたくさんありますが、大半の国はGDP全体でも1人あたりGDPでも中位から下位に位置します。

物価の違いや歴史的な経緯もあるので一概には言えないかも知れませんが、稼げる資源が公平かつ平等に国民に分配されていなければ、国家全体が発展することはありません。1人あたりGDPはあくまで平均ですので、貧富の格差が大きい場合は中央値で見るともっと下がるはずです。

豊かな資源に恵まれていても国民が豊かになるとは言えません。少なくとも国家の中枢にいる政治家・軍人・大企業経営者は豊かになるでしょうけれど。

それでも一部の人間が豊かになればいずれその富がトリクルダウンで他の人にももたらされるという考えもありますが、多くの場合は貧富の格差の増大を招くだけですし、そもそも資源による稼ぎが国を富まさないケースもあります。

15世紀から16世紀にかけてスペインは新大陸の富を独占し、膨大な金銀を本国に持ち込みましたが、すぐにイギリスやオランダに流れていき、スペイン本国では蓄積も産業発展もなく、近代化も遅れました。

資源がもたらす富を上手くコントロール出来なければ物価の乱高下や経済の不安定化が起きます。

大半の国では資源を売ったお金が国民一人一人の財布に入るわけではありませんが、だからといって何も関わらずに財布に多額のお金をつっこんでくれる国は、それはそれで産業も育ちません。

労力と能力に見合った富の分配でないと有効に使えないわけですが、資源に頼るのは産業発展を中抜きしているようなものです。

資源があってもその資源を取り出し加工して輸出するにも技術や設備が必要です。大半の資源産出国ではその技術や設備は外国のものです。完全に独自でやれている国なんてごくわずかです。いわば肝になる部分を他国に掴まれている状態です。

逆から見れば資源国に設備を売ったりメンテしたり技術を提供していれば、非資源国でも儲け続けられます。仮に資源が無くなっても別の国を相手に出来ます。

金儲けしたい人を相手にする商売が一番儲けやすい理屈を地で行くのが石油メジャーなんでしょうけれど、だからといってすぐに外国企業を閉め出したらベネズエラの二の舞です。まさにハイリスクローリターン担ってしまいます。

開発技術を独自で賄えるように技術者の育成や教育への投資をしてこそ国家全体も国民一人一人も豊かになれるのでしょうし、一番ローリスクハイリターンに近いやり方でしょう。

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