ビットコインに思い出すeeePC
ビットコインを始めとする仮想通貨・暗号資産の価格が乱高下していますが、そもそもここ数年は安定している方が珍しいのかも知れませんので、ある意味いつも通りとも言えます。原因の何パーセントかはテスラのイーロン・マスクだとは思いますが。
中国政府が始めようとしている政府あるいは中央銀行発行のデジタル通貨については、価値は国家が保証しているので、通貨の信用は国家や政府の信用とほぼ同じです。
ビットコインなどの民間発行のデジタル通貨は、政府や中央銀行に支配されず自由な通貨(資産)であり、政府や法定通貨の信用が無い国の人々でも自由に使えて取引手数料も激安な素晴らしい新時代の通貨、という触れ込みでした。
しかしまあ、現状を見る限りは作った人・最初に普及させようとした人たちの思いとは裏腹に、先進国の投資家(もどきも含む)の投機的な取引の材料になってしまっています。
もちろん、元になった技術の一つであるブロックチェーンとか、国際的な資金移動が安く行えることなどは重要なものですが、本体の民間発行の仮想通貨は、通貨にしろ資産にしろ今後もずっと利用され続けるものとして存在できるかどうかは難しいところでしょう。
発掘自体も個人でどうこうできるレベルでは無くなりました。高騰したために多額の費用をかけてマイニング装置を準備出来る組織でないと、設備投資やランニングコストを賄える保証はありません。
最初は崇高というか高邁というか、立派な理念の元に作り出されたのに、結局は金持ちがより金持ちになるためのツールになってしまった一つの例として、後世に記憶されることになるのでしょうか?
ITガジェット好きとしては、十数年前に台湾のASUS社が出したeeePCというパソコンを思い出します。
eeePCは、途上国や先進国の低所得層がコンピュータに触れるハードルを下げて、貧困からの脱出をサポートする、という目的があり、安く製作・販売されたのですが、どうなったかというと、発表直後から先進国のPCリテラシーの高い人たちの需要を巻き起こしました。
教育向けというよりはサブPC、モバイルPCとして市場に受け入れられ、ミニPCというジャンルすら出来上がってしまいました。それまでにも東芝のLibrettoやIBMのPalm Top PCとかはありましたが、なかなか高額で気軽に購入出来る値段ではありませんでした。
IntelのAtomチップが大量に出回ったこともあって、PCメーカー各社が6インチ〜8インチくらいの液晶サイズのミニPCを販売するようになり、結局は世界的に見て低所得な人たちが手軽にコンピュータに触れる、という目的ではなく、先進国のガジェットオタクが気軽に持ち運べるミニPCというジャンルを作ったという結果となりました。
商品やサービスが作られた時の目的とは異なる使い方で普及する、ということはよくある話なのだと思いますが、ビットコインなどもその一つの例になりそうです。少なくとも、価格の乱高下は通貨としての安定性を欠く一方で、価格が安定していたら資産目的での売買が行われません。
現物の金(マネーではなくゴールド)は、他の投資対象の値動きが不安定な時やリスク分散のために購入されますが、金も採掘による供給と、市場での需要によって価格が決まります。その点は仮想通貨と同じですが、数年間で値段が100倍になることなどはあり得ません。市場参加者がある程度の同じ認識、コンセンサスを持っているからですが、仮想通貨の場合は資産というよりはバブルのような値動きで、リスク分散のために買う人は少ないです。
ビットコインにしろドージコインにしろ、市場参加者のコンセンサスが価格の乱高下の方にある以上は、まだまだ落ち着かないでしょうね。
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