ガンバ大阪は構造的に変わることが出来るのか
ガンバ大阪はリーグ戦ここ3試合引き分けです。
名古屋戦は負け試合を引き分けに持ち込みましたが、神戸戦・広島戦は勝ち試合を引き分けに持ち込まれました。昨年の夏も終盤に追いつかれたり勝ち越されたりして勝ち点を失うことが多かったですが、今はサッカーの内容としても結果としても悪いというほどではなく、おそらく今年はそれほど困難を伴わずに残留できるでしょう。残留争い自体も昨年ほどの混戦模様ではありませんし。
しかし来年はどうなるか分かりません。Jリーグはクラブ間の戦力格差が固定されているリーグではありませんので、今年リーグ戦上位だったチームが翌年に残留争いしているということが頻繁に起きるリーグでもあります。ガンバサポーターとしては2012年や昨年の苦しさは忘れられないものです。
7月後半に入ってからようやくガンバも放出ばかりでなく獲得も増えてきました。とはいっても、シーズン中にこれだけ移籍するチームを率いるのは監督としては厳しいでしょうし、プレーしている選手も同様でしょう。シーズン終了後には監督や選手達への査定が行われる出しょうけれど、強化担当や経営層に対する査定や監査は誰がやるのでしょうか? 去年に引き続いて今年もこのような状態になっていることは誰の責任なのでしょうか?
世界的にサッカーのグローバル化が進む昨今、DAZNマネーの登場もあってか、ここ数年のJリーグクラブの動きが激しくなってきたように思います。
楽天、RIZAPやサイバーエージェントに加えてメルカリがJクラブ経営に参入してきましたが、参入先が鹿島アントラーズということは衝撃的でした。Jリーグ初年度からタイトルを取り続け、降格経験も無く、ACLも獲得して紛れもなくJリーグナンバーワンのクラブですから、親会社の意向があったとしても、鹿島アントラーズですら大きく変革の時を迎えていることに驚きました。
経営権の委譲とまではいかなくても、それ以外のクラブも色々と考え行動し始めています。
ガンバ大阪はどうなのでしょうか? どうなっていくのでしょうか?
ワールドカップに出るクラスの国のリーグは、欧州リーグのスカウティングの対象になっている時代です。将来的に成長して大きな違約金・年俸を取りそうな選手は欧州のクラブが早めにつばを付けて欧州移籍させる時代です。有望な若手選手が長くJリーグの1クラブでプレーし続けることは今後は非常に稀になっていくでしょう。優れた選手ほど早くJリーグを離れることになります。
ガンバ大阪が強豪チーム化した、西野監督の10年間を再現することは難しいでしょう。2002年の就任時には遠藤・二川・橋本・宮本らがいて、20代前半の若手選手をスタメンに固定して数年間プレーさせることが出来、結果として2005年のリーグ優勝を皮切りにナビスコ杯・ACL・天皇杯も獲得しました。
しかし、10代後半から10数年間、30代前半にかけてレギュラークラスが同じクラブに居続けることはもはやあり得ません。すぐにヨーロッパに行く時代です。どこのクラブも毎年のようにスタメンが入れ替わる時代です。2006年からガンバで実現した黄金の中盤(二川・橋本・遠藤・明神)のような豪華な組合せは当分見ることは出来ないでしょう。
せめて1年だけでもメンバーを固定して強くすることが出来ればいいのですが、今ではそれすら困難です。若くして欧州移籍した宇佐美や井手口は1年以上レギュラーでしたが、堂安は数試合スタメンで出た後にオランダに行きました。今年の夏に移籍した中村敬斗や食野も似たようなものです。20歳前後の選手が1年どころか数ヶ月スタメンで出てたらヨーロッパのスカウティングに引っかかります。もはや二川や橋本のような、ユース育ちで十数年スタメンをはるような選手は出てこないでしょう。
西野時代の10年間はある意味、Jリーグがグローバル化される間際の10年間でした。世界システム論的にいうと、Jリーグはもはや周辺ではなく半周辺に組み込まれ、中核国家と密接に絡み合う人材供給源(そしてピークを過ぎた選手の派遣先)になりました。
今のJリーグを取り巻く構造は数年前と劇的に変容しています。ガンバ大阪も構造的変革の圧力に晒されています。変わらなければJ2です。そして今のJ2は2013年に比べてさらに魔境度合いが増しています。さらにいうと、底なし沼から底が抜ける沼にレベルチェンジしました。底を抜けたところはJ3です。J2に降格したクラブ、そしてJ3に降格したクラブの苦戦を見るに、もう一度戻ってくることは非常に難しいはずです。大分トリニータは稀な例でしょう。
悲観的なことばかり書いてしまいましたが、ガンバを飛び出してヨーロッパで活躍している選手を見るのも楽しいものです。先日は、堂安がいるフローニンゲンと中村敬斗がいるトゥエンテの対戦で、二人ともゴールを決めていました。いま、ユースにいてJ3の試合にも出ている唐山や中村仁郞なんかも順調に成長すれば、トップチームに昇格後にヨーロッパに行くことでしょう。ガンバだけではなく、Jリーグだけではなく世界中のリーグ・クラブがそのようなサイクルの中で動いていますから、悲観することでもないでしょう。どちらにせよ、ガンバ大阪サポーターは、パナソニックスタジアム吹田に足を運んで、目の前のガンバ大阪を応援するだけですから。
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