サッカーを押し付けないように
ワールドカップの本大会が始まると、世間の話題がサッカー一色になりがちです。日本代表の戦況にもよりますが、今回はドイツに勝った後の影響はすごかったでしょう。
サッカーの話題を何の脈絡もなく放り込んでくる人は、多分、
「今日は雨ですね」
という世間話の導入と同じ感覚で
「昨日のドイツ戦はすごかったですね」
と話しているのではないかと思います。
そうなると、猫も杓子もサッカーサッカーになることに苦痛を覚える人も当然出てきます。
私自身はサッカーファンではありますが、それだからかかえって自分からサッカーの話題を人に振ることはありません。ドイツに勝ったら喜ぶ、それだけで良いとは思いますが、突然、その勝利の理由を森保監督がどうのこうの三笘がどうのこうのと言い出す人とは、ちょっと距離を置きたくなってしまいます。それを言うならJリーグも見ていてほしいし、Jリーグを見ていたら森保監督の実績、三笘のドリブルについては今さら言うことでもありません。
こういうことも、サッカーファンの恨み言なのでしょう。世間の大半の人はサッカーファンではなくて、ワールドカップの本大会の日本戦だけ注目する人です。もっと言うと、みんなが見ているものを見ている人です。それはラグビーのワールドカップでも、オリンピックでも、WBCでも大して割合的には変わらないでしょう。
同調圧力という言葉がよく使われますが、圧力と言うよりは空気と言った方が近いかも知れません。日本は「空気」によって動く文化です。みんながサッカーを、ワールドカップを、日本代表を見ている「空気」があるから見ている人が多いのです。
だからこそ、その空気に馴染めない人は息苦しい限りです。その空気を平気で吸っている人には分からない感情です。少なくとも、他人に自分の感動を押し付ける人はファンではありません。
ファンだからこそ、ファンではない人の気持ちが分かるはずです。