大統領弾劾のためにはクーデターでも起こすしかないのではないか
この年末年始におけるイラクでのイランとの一連の軍事的緊張で大規模な紛争の危険性もありましたが、今のところは民間航空機の撃墜の問題でイラン政府がそれどころではなくなった感があり、急速に事態が悪い方向に進むことは当面無さそうです。
そうはいってもトランプ政権は問題山積みで、中国との貿易交渉はわずかずつしか進んでいませんし、そもそも国内で民主党による弾劾が進められています。
上院議員の3分の2が弾劾に賛成しないと成立しませんので、共和党が多数を占めている上院で弾劾が成立する可能性は現時点ではゼロです。
トランプ大統領の弾劾を成立させるには、上院での共和党議員達の多くが造反することが必要です。しかし、共和党議員にとっては、いくらハチャメチャな大統領であっても民主党の弾劾に賛成してしまうと、党にとっても自分にとっても次の大統領選挙や自身の選挙区で苦しむことになります。
見方を変えると、共和党議員にとって、
「例え大統領選挙や自分の選挙で敗れることがあっても、やむを得ず大統領弾劾に賛成するしかない」
と考えるような状況が生まれれば、弾劾が成立するだけの共和党議員の造反を生み出すことが出来ます。
では、どうすればそのような状況になるのか。
中国相手の問題では、共和党だけではなく民主党にも対中強硬派がいますので、トランプ大統領が仕掛けた対中貿易戦争は取り下げる必要は無いでしょう。交渉次第によってはアメリカの利益になることは間違いありません。もちろん失敗する可能性はありますが、失敗したところで今までと大差ない条件での貿易となります。
ではロシアはどうか。INF条約破棄や新型弾道ミサイルなど米露での応酬はありますが、ロシアにとってはウクライナ・クリミアでの問題を突っ込まれず、中東での権益を確保できるのであれば、あえてトランプ政権と対立する必要はありませんし、数年後にはプーチン後のことを考えないといけません。プーチン大統領の支持が減っている今、一か八かでアメリカと決定的に対立することはないでしょう。
北朝鮮問題も進展なしですが、二度もトップ会談を行っているなど、これまでの政権に比べればはるかに北朝鮮問題を進めています。ここでも大きな動きは無さそうです。
やはりトランプ政権、というよりアメリカ合衆国にとっては、中東の問題が命取りになりそうです。911以降、アフガニスタンとイラクでの戦争を通じて大量の人員・経費を注ぎ込んできましたが安定にはほど遠く、アメリカ企業の利益が確保されるならアメリカ軍を撤退させてもいいとトランプ大統領は考えています。中東地域からの完全撤退とはならないでしょうし、短期的にはつい先日のように増派はするでしょうが、長期的には誰が大統領であっても派遣軍は減らしていくでしょう。
軍と大統領の間に齟齬がなければいいですが、もしこれらの方針において、軍と大統領の間で大きな対立が生じ、このままではクーデターが起こりかねない、というほどの危機的状況になるか、その機運が感じられるようになれば、弾劾やむなしという共和党議員も出てくるのではないでしょうか。
世界各国で起きたようなクーデターなど、このアメリカ合衆国で起こしてはならない、という自負は政治家だろうが軍人だろうが持っているはずですが、大統領のやり方にもう我慢ならない、という状況が上からにしろ下からにしろ出てくれば、弾劾の成立可能性もグッと高まると思います。
逆に言うと、そこまでの事態にならない限りは現時点での疑惑では大統領弾劾は全く無理だと思います。