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エビデンスの重要性とエビデンス待ちの危険性
大阪府の吉村知事が市販のうがい薬を新型コロナウイルスに対して効果があると公言したことでいろいろなところで大騒ぎになっています。
騒ぎにならない方がおかしいレベルの発言ではありますが、さしあたっての問題はヨードの過剰摂取による弊害、うがい薬の品切れ・高額転売の可能性でしょうか。うがいのしすぎで喉を痛めるというのはポピドンヨードを含まないうがい薬や水道水でも同じですのでそれはいいとして、とにかくポピドンヨードが良いですよ、と宣伝するような記者会見は批判覚悟のものなのでしょう。
だいたい日本人は日頃から海藻を食べているので十分ヨードが体内に存在しているとも言われています。
高額転売の問題もありますが、普段からうがいしている人が困るといっても水道水でうがいしても十分効果はあるので、以前のマスク・アルコールの買い占め転売問題と比べたらそれほど実害は無いかも知れません。
ただ、そもそも吉村知事が発表したのは
「口腔内のウイルス殺菌に効果があると言っただけで体内にあるウイルスや重症化への検証はこれから」
とのことだそうです。それならそれでもう少し発表の仕方を考えるべきだと思いますが、じゃあ全く効果が無いのかというわけでもないのでしょう。
ポビドンヨード(PVP-I)を有効成分とするBETADINE®製品(イソジン®)の 新型コロナウイルスに対する抗ウイルス効果を確認 ― 海外のIn vitro試験において99.99%の抗ウイルス効果を確認 ―
https://mundipharma.co.jp/1560
こんなネタもあるみたいですし。
新型コロナウイルスに対してアレが効くコレが良いとか詐欺の温床みたいな噂が跋扈していますが、こんな話あるわけないだろ、と完全に言い切れるものもあればそうは言い切れないものもあるのが悩ましいところです。
2月頃には多くの専門家や機関がマスクには効果が無い、むしろ付けるなとまで言う人までいましたが、クシャミや唾液によるヒトヒト感染を防ぐ効果があるという研究結果が出るまで、被害を拡大させたという一面はあるでしょう。
一定割合の人がマスクをすれば新型コロナウイルス感染症の流行は抑えられるという研究結果
https://gigazine.net/news/20200628-half-people-mask-prevent-covid-19/
欧米での大流行から数ヶ月経ってようやく、マスクを付けたら感染防止に効果があるというエビデンスがちらほら出てきました。そもそも研究結果というものは時間がかかるもので当たり前ですが、権威ある研究所や機関からのエビデンスが公表されないとマスクを付ける意味が無いと考えてしまうのは、それはそれで問題でしょう。
エビデンスを重視して判断・行動する、というのは大切なことです。根拠の無い、根拠に乏しい感情的な言動を、責任ある立場の公人や組織が行えば社会的悪影響は間違いなく大きくなります。
とはいっても、今回の新型コロナウイルスのように新しい脅威に対してちゃんとした研究結果が出るまで指針を出さないとなると、結局被害も大きくなってしまいます。
何が正しくて何が正しくないかを判断するのは非常に難しいことです。公職・公的機関などにとっては悩ましい日々が続いていると思います。
今回のポピドンヨードももしかしたらという気もしなくもないですが、情報を受ける側の一市民としては慌てず騒がず冷静に生活するしかないですね