見出し画像

政府によるSNS規制はどこが問題でどこまで可能か?

インターネット上の有害な、テロや児童性的虐待と関連すると見なしたコンテンツコンテンツを通報から1時間以内に削除するよう、ソーシャルメディア企業などに求める法律が可決されました。期限を守れなかった企業には最大で売上高の4%の罰金が科されます。

これは安倍内閣によるSNS規制でもなく、トランプ大統領によるSNS規制でもありません。自由・平等・友愛を掲げる「人権国家」フランス政府で先日成立した法律です。

フランス、有害コンテンツ「1時間以内の削除」を企業に義務付け 2020年05月15日
https://www.bbc.com/japanese/52671887

当然ながら表現の自由の観点からの批判もありますし、このような規制に耐えうるのはコンテンツ自動削除システムを備えている巨大IT企業しかないという問題もあります。

このような規制が日本でも検討されて始めたことで、安倍内閣が恣意的に政権に批判的な書き込みを制限させるという懸念がリベラルから上がっています。そりゃそうなんですが、それを言い出したらメディアへのあらゆる法律がそうなってしまいます。それこそ、前述のフランスと同じ内容の法律が出来たとしたらどうでしょうか? そんな法律は許さない、ということであればフランス政府にも同様の懸念を抱くはずです。そうでないとしたら法律の問題ではなく政府・国民・メディアの性質や歴史の問題ということになります。

ちなみにネット上の投稿規制について去年の記事も見つかりました。

仏議会、ネット上のヘイト投稿規制を法制化へ 2019/7/5 9:40
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46990250V00C19A7EAF000/
法案全体の採決は9日に予定されている。ドイツではすでに同種の法律が施行されている。

リベラルの心のよりどころのはずのドイツでも施行されています。ドイツもフランスも移民問題を抱えています。だからこそこのような法律の必然性があるのだと思います。

TwitterもFacebookもWhatsAppもSnapchatもInstagramもアメリカのものであってヨーロッパがコントロールできないものだから、ということもあるでしょう。

業界団体や個別企業での自主規制がどこまで進むかにもよりますが、規制をしすぎて使いづらくなったサービスは衰退に直結するでしょうから、企業側は規制による罰金と売上減のどちらを取るかの究極の選択を迫られます。規制が緩い新興ウェブサービスに利用者が流れて行く可能性もあります。

そのサービスが全く別の国、特に西洋社会と価値観を共有していないような国にある企業が運営しているとすれば、そもそもどうやって規制するか、という問題もあります。それこそ対立している国の企業に対して厳しい課徴金を課したところで無視されるだけです。自動車やスマホのような現物なら輸入をストップ出来ますが、ウェブサービスを国境で遮断するとしたら、それこそ思想の自由の侵害とのジレンマが生まれます。

別のnoteにも書きましたが、捨てアカによる投稿を止める術はありません。フランスの今回の法律をSNS各社がどのように運用していくのかを見てから、日本での法制か議論を進めても良いのではないでしょうか。

いいなと思ったら応援しよう!