見出し画像

フォーマットを確立する無料サービスの強さ

今ではあまり聞かなくなったかも知れませんが、
「ただより高いものはない」
という言葉があります。

無料で得られる商品やサービスには必ず裏があって損をするものだから無料だからといって飛びつくべきではない、という戒めの言葉でもあります。

しかし、ITが進歩した現在では、無料で得られるサービスが非常に多くなっています。

Google、Facebookなどが提供しているウェブサービスはその最たるものですし、このnote.muのサービスも基本的には無料で使用できますよね。

入り口を無料にして高度なサービスを得るためには課金する必要がある、というフリーミアムモデルは厳密に言うと完全無料というわけではありませんが、これも無料の一種でしょう。

ただ、GmailやFacebook、LINEなどに関しては利用者の個人情報や利用内容に応じて広告表示することでサービス提供者側も利益を得ていますから、利用者もお金以外の対価を払ってサービスを得ています。

この「お金以外の対価」が「ただより高いもの」に当たるわけです。

人によっては自分の個人情報なんか大して価値がない、と思っているかも知れませんし、そういう人であればそれを対価にしたフリーのウェブサービスを使うのは構わないでしょう。しかし、その一方で、個人情報保護法の施行以降、一般市民の間でも個人情報に敏感な人が増えていて、学校の連絡網については電話番号を載せることは拒否していながら、保護者間でのLINEグループは平気で利用する、ということになると結構矛盾しているような気がします。

まあそれだけウェブサービス企業に対して個人情報を提供することに抵抗感がない時代になっているのかも知れませんが、無料で提供されるウェブサービスがそれだけ魅力的だからと言うことでもあります。

無料で使用できる部分を全く用意していないサービスの方が少ないのではないか、と思えるくらいですが、個人情報を得られるのであればそれなりに割の合う商売なのでしょう。

一方で、個人情報を対価にしないフリーミアムモデルも存在します。その最高峰は個人的にはAdobeが提供しているPDFだと思っています。

Adobe社がPDFというフォーマットを世に出してから20年と少しが経ったでしょうか。発表・公開当初から結構普及が早かったような記憶がありますが、最初の頃はもちろんAdobe社謹製のAdobe Acrobat Readerというプログラムでのみ閲覧できました。その後互換ソフトでも見ることが出来るようになりましたが、世間一般では基本的にはAdobe社がリリースしている標準のリーダーで閲覧している人が大半でしょうね。Windows10ではデフォルトでEdgeに関連付けられていますが。

PDFがこれほどまでに社会に普及した一番大きな理由は、リーダーの無料配布だと思います。見るのは無料、作成や編集は有料ってことですが、フォーマットを自ら作り出して押さえたというのがAdobe社にとっては成功だったのでしょう。

PDFは今ではどの企業も官公庁もドキュメントとして多用しています。画像データだと扱いづらいですし、文字を文字として認識してくれません。ファイルサイズも大きくなってしまいます。一方でワードやエクセルのファイルにしてしまうと、保護をかけないと改変されますし、Officeソフト(互換のもの含めて)を持っていない人は閲覧も出来ません。閲覧者が使いやすいことが広まった理由でしょう。

そういえば、その企業や官公庁が出しているドキュメント(特にプレゼン資料)の中でこの数年から10年くらいでしょうか、フリーのイラスト素材を用いたものをよく見かけるようになりました。

フリーのイラストといえば
いらすとや
https://www.irasutoya.com

ですね。
もちろん他にもフリー素材を出しているところはありますが、イラストのタッチの特徴や、そんなものまであるのかというニッチな素材の多さではかなうところはないでしょう。私も何度かこのnoteで利用させていただいています。

気がつけば、大企業も中小企業も零細企業も、それこそ町中の看板やポスターでも、いらすとやの絵が利用されています。

正確には100%フリーではなくて、有料になる条件が表示されています。

よくあるご質問
https://www.irasutoya.com/p/faq.html

その部分で利益を得ているわけですが、個人でされているからこそのビジネスモデルですよね。

一般的なイラストレーターの場合、企業などから発注されて製作して納品して報酬をもらうわけですが、そこでそのイラストは終わりです。全く別のところで見ることはまず無いですよね。

しかし、フリー素材であれば他の人が自由に使ってもいいわけですから、全く違う場面でも目にすることになります。そしていらすとやのように毎日少しずつでもフリー素材が増えていけば、利用頻度が低いイラストでも全てを合計すれば膨大な利用が発生します。いわばAmazonのロングテール戦略に近いものがあります。利用頻度が低いイラストでもいいわけです。

まさに現代的なビジネスモデルであり、数は力という言葉を実証しているようなものですが、数を力に変えるのは日々の努力と技術力です。それはPDFを世に送り出してからもアップデートし続けていたAdobeとも通ずるものだと思います。

いいなと思ったら応援しよう!