伝統への新規参入
市川猿之助親子の事件は驚きましたが、原因がまだ分かっていませんし、本当のところは裁判でも分かるようになるか疑問です。
それよりも、梨園いわゆる歌舞伎業界についても色々議論されるきっかけになりそうです。
歌舞伎界の中心にいる人は基本的には世襲で、とは言っても何もせずに楽に先代の跡を継げるわけもなく、産まれたときから舞台で成長していかないといけない立場です。
そういう世界に興味が無い人にしてみたら、羨ましさを全く感じないような世襲ですよね。一応、職業選択の自由という憲法の下にいるとは言え、余程のことが無ければ別の世界にも行けないでしょうし、大変だなあとしか思えません。
跡を継いで成功した後の姿は、人から羨まれる存在になるかも知れませんが、そうなるまでの苦労は筆舌に尽くしがたいはずです。
その一方で、歌舞伎の世界で大立て者になりたいと思っても、その家に生まれなければ出来ないというのも賛否両論でしょう。新規参入者を排除する代わりにその世界の中の人間の権利を確保する、そして権利がある人間はその世界に生まれて死ぬ義務がある、という業界です。伝統芸能なんてそんなものだと言ってしまえば終わってしまいますが、そういう世界だからこそ、厳格な上下関係が成立してしまうのでしょう。
昔からテレビで、歌舞伎の世界が私生活も含めてドキュメンタリーとして取り上げられていましたが、産まれたときからカメラに囲まれ、厳しい稽古によって普通の人の暮らしとかけ離れた生活を強いられる場面を見せることによって、安易な気持ちで新規参入する人を減らせる効果もあるのでしょう。
実際には、テレビ側は単なる視聴率が取れるコンテンツとして扱っているだけで、歌舞伎界側は新規「ファン」を取り入れるための宣伝として、番組が成立しているだけなのでしょうけれど、スキャンダルがあるとそうもいかないでしょう。
新規参入不可の立場の最たるものは皇室・皇族ですけれど、こちらも皇室アルバムなどのテレビ番組や各種ニュースで、産まれる前から亡くなった後まで日本中が注目する立場です。
こちらも少し前までは週刊誌・ワイドショーを含めて騒動が起きていましたが、トラブルを単純に個人の問題と突き放して考えるのではなく、日本の伝統と現代の文化・法律との軋轢が起きつつあると考えた方が良いのでしょうかね。
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