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詰め替え品を買う理由と原因と結果と未来

個人的に最近はめっきり使う頻度が減りましたが、無いなら無いで少し困るデバイスがプリンターです。めったに使わないので最近はもういいやと思って価格の高いメーカー純正インクを利用していますが、頻繁に使っていた頃は非正規のインクを使っていました。

エプソンやキャノンのプリンターであれば非正規のカートリッジだけではなく、詰め替えが出来るインクが100円ショップでも売られているくらいですので、結構な需要があるのだと思います。こういった非正規のカートリッジや詰め替えインクは当然ながらプリンタメーカーがサポートするものではありませんので、使用するとプリンタ本体の正規サポートを受けられなくなります。

プリンタメーカーからすれば、安い値段でプリンタ本体を販売して純正インクの販売で利益を上げるビジネスモデルを維持する以上、プリンタユーザーが非正規品のインクを購入したらたまったものではないのでしょうけれど、このご時世に使い捨てのプリンタインクカートリッジを強制するのもどうなんでしょうね。

純正インクで利益を確保するために、当然ながらそれなりに高い値段のインクとなってしまいますが、そこで非純正のインクカートリッジや詰め替え用インクが売られる余地が出てきます。

何らかの物品に関して国家が専売制を敷くと闇市場が生まれるのと理屈的には同じですね。インクカートリッジは別に闇市場ではありませんが、非純正のインクカートリッジや詰め替え用インクを使ったらサポートされないのは独占禁止法的には問題ないのでしょうか?

検索してみたらすぐに公正取引委員会のページが見つかりました。

印刷機器のインクボトルへのICチップの搭載
https://www.jftc.go.jp/dk/soudanjirei/gijyutsutorihiki/gijutu6.html
印刷機器のメーカーがICチップを搭載したインクボトルを使用しなければ起動しない機能を備えた印刷機器を販売することは,インクボトルを提供する競争業者の事業活動を困難にするおそれがない場合には,直ちに独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例

ICチップ自体を非正規インク業者でも使えるから問題ない、ということらしいですね。となるとサポートを受けられないことも問題ないでしょう。一方で、プリンタメーカーは非正規インクを市場から完全に排除することも出来ません。

そのような中でプリンタメーカーが新たな戦略として出してきたのが大容量インク内蔵のプリンターで、非正規インクを買われる頻度自体を減らしてしまえ、ということなのだと思います。

大容量インク搭載プリンタ比較 特集
https://joshinweb.jp/peripheral/bus_pri.html?ACK=TOKU&CKV=190111

年賀状の作成需要は毎年確実に減り続けているので、プリンタの家庭用需要もいつまであるのか分かりませんが、利用シーンが減ったからこそ使いたいときにインクがない可能性が低くなる大容量インク内蔵プリンタは時代の流れに沿っているのかも知れませんね。

さて、プリンタは詰め替え用インクの方がまず間違いなく安いのですが、調味料や洗剤などでは詰め替え品の方が通常品よりも高く売られていることもあります。もちろん内容量で比較しての話です。スーパーやホームセンターなど、安売りすることが多いお店ではそういった逆転現象がちょくちょくありますが、そうなってくると詰め替え品を買う動機が環境保護のみになってしまいます。

いわば、その場合にあえて詰め替え品を買う行為はエコロジーではあるがエコノミーではない状態です。逆に言うと、詰め替え品を買わない方が消費者として得をすることになってしまいます。

これはメーカーにとって通常品と詰め替え品の製造コストの差が少ないことが一因だと思いますが、多分それだけなのではないでしょう。

産業革命以後、商品の価格は需要と供給のバランスで決まるようになりました。それ以前は原材料や人件費から決まっていました。詰め替え製品のケースでいうと、詰め替えタイプではない普通の製品の供給が多すぎるのかも知れません。

通常品は新規顧客獲得にはかかせないものであり、それを減らすわけにもいかないのでしょう。環境保護のために無理矢理値段差を設けてしまう(卸値に差を付ける)としたら、通常品を値上げするか詰め替え品を値下げするしかありません。

しかし、通常品の値上げは単に他者の競合品にシェアを譲るだけの結果になるはずです。そして詰め替え品を値下げすれば企業としての利益を自ら捨ててしまうことになってしまいます。

競合他社と同時に通常品を値上げするわけにもいきません。単なるカルテルであり公正取引委員会から怒られます。またはその下の値段で売る新規企業が出てくるだけです。

詰め替え品の値下げも環境保護を理由に利益を削ると株主利益も削ってしまいますので、株主から怒られます。公取委に怒られるよりはマシかも知れませんが、株主以外にも従業員や販売店、サプライチェーンにも嫌がられかねません。

こうなってしまうと自由資本主義が環境保護と対立概念になってしまいます。それを両立出来るようにするには、政府の関与(限定的に独禁法対象外にするとか)を認めるか、企業のステークホルダー(株主・従業員・取引先など)が企業利益を削って環境保護を行うことを認めてくれるような環境(社会的な雰囲気や政府の補助など)を整えるしかないのではないでしょうか。

環境を保護する売り方が企業にとっても利益になるのだ、ということにならないとこういう点は進まないと思います。


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