カナ入力とローマ字入力、訓令式とヘボン式
2020年5月に富士通が親指シフトキーボードの販売を21年5月に終了するというニュースがありましたが、前倒しで終了していたそうです。
カナ入力ですらシェア的には怪しい状況ですが、さらに特化した親指シフト入力はもはや利用どころか認知度自体が相当減っていることでしょう。日本語そのものを入力するなら、カナ入力も親指シフト入力も優れています。なんせ打鍵数がローマ字入力よりも半分近いわけですから。
しかし、日常にも溢れる英語・アルファベットを日本語の文章に混じらせる時や、あるいはプログラミング、ソースコード作成では結局アルファベットの配置も覚えないといけません。そうなると、キー配置を指で覚える数は圧倒的にローマ字入力が少なくなります。日本語入力も発達した日本語入力ソフト(IME)による予測変換によってかなり省力化出来ますので、カナ入力が今後も増えていくとは思えません。
親指シフトに慣れた人、これでないと高速に入力出来ない人は、移動先で他人のパソコンを使うときなど大変でしょうね。自分にカスタマイズされたものを使うとパフォーマンスは最大限発揮できますが、カスタマイズされていない汎用品を使うときに著しく不便になる典型でしょう。
ローマ字入力が優勢になったとしても今度は日本語JISキーボードと英語USキーボードの争いが待っています。学生の頃にUSキーボードを使ったことはありますが、今では長い間JISキーボードですね。世間一般でも日本で売られているキーボード・ノートパソコンはJIS配列が当たり前ですが、USキーボードはキー数が少なく、キートップの印字もスッキリしていることです。
さらに言うと、JISキーボードは当然ながら日本人・日本語入力者しか買わないので世界市場的に見てメーカー側は不利になります。日本人の人口が減り続け、日本向けにカスタマイズされたキーボードをわざわざ作るデメリットが、日本人が好んで買ってくれるメリットを上回ると、JISキーボードがマイナーになって消滅する未来が待っているのでしょうね。
そうは言っても絶望することもなく、日本語入力をローマ字で打つ人であれば、一部の特殊キーを除いてスムーズにUSキーボードでも使えるはずです。それはまさにローマ字で日本語を入力するからですが、ローマ字にはヘボン式と訓令式の二種類が存在します。
パソコンを使う分には、日本語入力システム(IME)によってヘボン式でも訓令式でも違和感なく日本語に変換してくれますが、同じ出力結果であればキータッチ数は少ない方がもちろん良いです。親指シフトやカナ入力はまるっきり入力体系が異なるので少ない方が良いということにはなりませんでしたが、ローマ字入力であれば
よりによって使用頻度の高い「サ行」にヘボン式の特徴がありますが、「し」を打つのに「shi」とするか「si」とするかで後者の方が断然楽になります。
今の学校で教えられるのは基本的に訓令式だそうですが、自分が子どもの頃にはヘボン式も教えられたような気もします。結局、どっちも曖昧というか、なんとなくの使い分けをしてしまっていますが、本来、ヘボン式は外国人のためのものであって、日本語をローマ字で書いたときに発音が日本語の音に近付くようにしたものです。
日本語を知らない外国人、主に英語話者が、「スィ」ではなく「シ」と発音するように作られたわけですが、逆に日本人が使う分には不便というか無理矢理感があります。
それでも、日本人が日本語をローマ字で考えることはそもそもそんなに機会が無かったため、ヘボン式と訓令式の違いの問題は、学者や役人以外の一般人には重要な問題ではなかったのですが、20世紀終わりから誰もがキーボードを使ってローマ字入力する時代になると、ローマ字入力方式が混在していることになります。
外国人観光客向けに駅名表示をヘボン式にするのは合理的でしょうけれど、全ての日本人がヘボン式を学ぶ必要性というのはあまり感じません。変換システムで必要なときにヘボン式に変換出来るようになっていればいいのではないですかね。
日本人が福島=ふくしまを、FUKUSHIMAと書かずに、HUKUSIMAと書いたために、外国人から「フュクスィマ」と言われても、たいていの日本人は「福島」のことを言っているんだなと分かると思います。
ヘボン式は歴史的意義を終えたとまで言うのは言いすぎかも知れませんが、ヘボン式ローマ字も一度廃止して、キーボード入力を前提とした日本語ローマ字表記を規格化したらどうでしょう?
ゆとり教育は一気に導入して、批判を浴びたらあっさり撤回したのだから、いっぺんやってみても良いんじゃないでしょうか?