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【臨床疑問】MRI陰性脳梗塞と急性めまい

急性発症のめまいで体幹失調を疑う所見を認めたのでMRIを施行したがDWIでは急性期脳梗塞の所見を認めなかったのでどうしようとなることが立て続いたので調べてみました。

【Take Home Message】
・発症48時間以内の急性期脳梗塞ではDWI陰性となる可能性が4-6%程度
・特に後方循環系、発症早期なほどDWIは陰性になる可能性が高い

・急性めまいで発症するDWI陰性の後方循環系脳梗塞では、
 ・部位は延髄、機序はラクナ梗塞が多いが例外もある
 ・神経学的徴候、深部平衡覚、HINTS plusを用いても除外できないことがある(特に自発眼振がない場合)

<DWI陰性の脳梗塞についてのmeta-analysis>
Diagnosis of DWI-negative acute ischemic  stroke A meta-analysis(Neurology 2017)PMID: 28615423
・3,236人の急性脳梗塞が含まれる12論文が選択された
・DWI陰性急性脳梗塞の有病率は6.8%(95%CI 4.9-9.3%)
・虚血血管領域に基づくDWI陰性と陽性の急性脳梗塞の割合データを報告した5つの研究(n=1023人)において、後方循環系と強く関連していた(OR 5.1 95%CI 2.3-11.6)

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<急性めまいで発症したDWI陰性の後方循環系脳梗塞について>
○Early MRI-negative posterior circulation stroke presenting as acute dizziness (Journal of Neurology 2018)PMID: 30341546

・1846人の後方循環系脳梗塞のうち、850人が急性めまいを発症した
・850人のうち、35人(4.1%)で初回MRI-DWIが陰性
・89%が発症24時間以内に以降、48時間以内に全ての患者で施行
・MRIまでの平均時間は11.9時間

DWI陰性の後方循環系脳梗塞(n=35人)の特徴
○部位
・脳幹71%(延髄51%、橋17%、中脳3%)
・小脳17%
・脳幹と小脳11%

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○大きさ
・直径10mm以下の小梗塞(ラクナ梗塞) 83%(29/35人)
・大動脈、心原性塞栓、解離などの他のラクナ以外が54%(19/35人)

○症状
・31人が急性・持続性のめまい、4人が一過性・再発性のめまい
・他の神経学的異常を伴なったのが16人、深部平衡覚異常をともなったのが18人
・眼振は21/35人に認められた

○予測感度
・急性めまいを呈するDWI陰性の後方循環梗塞に対して、最終的な脳梗塞を予測する感度は低い
 *他の神経学的異常 46%
 *深部平衡覚異常 53%
 *HINTS plus 40%(自発的な眼振がある14人に限るとHINTS plusは93%
 ➔以上の全てを合わせても83%しかない

・PWIを施行した25人に対して、上記3つの臨床徴候+PWIで100%となった

<実際の症例>

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<コメント>
・眼振を伴わないめまいでも後方循環系の脳梗塞はあり得ることは注意が必要だと思いました
・しかも、そのような症例では体幹失調含めた神経診察とHINTS plusを行ってDWI陰性でも除外しきれないことがあるのはかなり厳しい・・・
・初回DWI陰性でも依然として脳梗塞が疑われる場合に、どの程度の時間を空けてMRIを再検するかは明確な答えは無さそうですが発症から少なくとも48時間程度は空けることが無難でしょうか

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