【臨床疑問】 大腿骨頸部骨折後の低酸素血症

○調べるきっかけ

・大腿骨頸部骨折で搬送されてくる患者で原因不明の酸素化低下があり、肺血栓塞栓症なのか?と造影CTを撮っても特に異常はないということはありませんか?

・脂肪塞栓かも・・・と思い、経過をみていると勝手に酸素化が良くなるという減少を数回経験し、周りにも同じ経験をした方が多数いたので調べてみました

Incidence and related factors of hypoxia associated with elderly femoral neck fractures in the emergency department setting(PMID: 33364038)

・岡山済生会総合病院に大腿骨頸部骨折で入院した241人の患者(診断はCT)
・研究の基準を満たしたのは194人で低酸素46人(P/F≦300)、非低酸素148人
・低酸素の原因は肺炎3人、COPD2人、肺水腫1人、肺塞栓1人で残り39人は原因不明
・原因不明の39人をGurd、Wilsonの基準に当てはめると29人で潜在性脂肪塞栓症候群(occult FES)が疑われた

・この研究では頸部骨折の20%に原因不明の低酸素血症を伴っていた

○まとめ

・現象として、割と少なくない頻度で大腿骨頸部骨折に原因不明の低酸素血症を伴うことがある

・原因が脂肪塞栓なのかは定かではない

○考察

・状態が安定しており、レントゲンで明らかな浸潤影などなければ、肺血栓塞栓症の精査も不要かもしれない

・個人的には大腿骨頸部骨折が下肢静脈血栓症/肺血栓塞栓症のmimicになり得ることが興味深かった


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