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オンラインでのオンボーディングと定着への取り組み|ハーモスラボイベントレポート
今回は、「オンラインでのオンボーディングと定着への取り組み」をテーマに、2社の事例を紹介します。
▼この記事でわかること
・リモートワーク環境下の入社者へのオンボーディング施策
・社内コミュニケーションやオンボーディングの改善のためのツール活用
Classiがオンボーディングでやっていること/考えていること
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◉登壇者
村上 有基さん Classi株式会社 カンパニーカルチャー部
担当業務:採用、オンボーディング
立教大学大学院修了。衆議院議員秘書を経て、2013年10月、株式会社モンスター・ラボに入社。社員数約50名のフェーズから、12ヵ国23拠点、グループ全体で約1,000人規模に成長するまで、主に採用を中心に人事業務に携わる。当時からHRMOSユーザー。その後2018年10月、Classi株式会社へ入社。採用を中心に、オンボーディングやカルチャー施策に従事している。
(村上さん)オンボーディングをテーマにお話しするにあたり、参加者の皆様の悩みをイメージしてきました。
例えば…
コロナ禍でオンライン中心になったことで起きている会社の変化を「課題」とされ、「人事だから何とかして」と丸投げされてしまう
運用でも大変なのに新しいことをやらないと評価されない
他社がうまくやっているらしいと、先進的なIT企業などと比べられてしまう
など。人事は、社内のいろいろな仕事を振られやすく、大変な思いをしている方も多いと思います。
私たちも試行錯誤してきたので、持ち帰れるTipsが一つでもあればと思っています。
Classiは教育プラットフォームを提供する会社
具体的な施策をご紹介する前に、Classiのことを少しご紹介します。
Classiは、ベネッセとソフトバンクのジョイントベンチャーとして2014年に設立されました。教育プラットフォーム「Classi(クラッシー)」(※)の開発・運営を手掛け、現在では全国の高等学校の半数以上にご利用いただいています。
(※)コミュニケーション、探究学習、学習動画、日々の学習記録など、学校生活のさまざまなシーンで活用できるオールインワンのプラットフォーム
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組織は、Classiで採用されている所属メンバーほか、ベネッセとソフトバンクからの出向者も在籍しています。 エンジニアやデザイナーなど全体の半数以上が、プロダクト開発を担うメンバーです。ものづくりに携わるメンバーが多いことが、Classiの特徴です。
オンラインでのオンボーディングの課題と工夫
Classiでは、コロナ対応として2020年2月末から全社員の原則在宅勤務をスタートしました。
コロナ禍の状況に合わせ、制度面も柔軟に改変。リモートワーク環境整備のための費用補助や、遠方に引っ越したメンバーが出社する際の通勤手当(月5万まで支給、飛行機や新幹線もOKに)、コアタイムなしのフレックスタイム制(フレキシブルタイムは7時~22時)を導入してきました。
オンボーディングへの取り組みとしては、2020年4月に「カンパニーカルチャー部」を発足しています。離職率はそれほど高くなく、そこが大きな課題ではありませんでしたが、部を立ち上げカルチャー体験の提供や社内外への情報発信を強化しています。
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正社員は部長1人の下に、カルチャー施策1人、採用2人がつき、広報は専任者を置かずに部長が担当しています。派遣社員、アルバイト社員も1名ずつおり、人数も少ないのでみんなで協力しながらやるチームになっています。
採用後、入社してからどんなプロセスを踏み、どういう状態になることが望ましいのか。「エンプロイージャーニーマップ」をもとにゴールを定めて施策を検討しました。
ジャーニーを元に設計した、各プロセスのゴールと施策について
オンボーディングの目的は、「新入社員がスムーズにジョインし、自分の能力を存分に発揮できる環境にする」ことです。
そこで、入社前から入社半年間まで一貫してサポートできるよう、次のようなプロセスを設計しました。
入社決定(入社決定から入社1週間前まで)
入社準備(入社決定から入社1週間前まで)
送付物/Welcome Box(入社1週間前)
入社日
他己紹介
コミュニケーション施策(入社後)
入社後面談
大切なのは、各段階でゴールを設定することです。
例えば、入社前には「Classiへの入社を決めてくれたことへの感謝が伝わる」「Classiで働くことが楽しみになる」と、あるべき状態をゴールを決め、そこからHowを考えます。
では、各プロセスで具体的にどのような施策を盛り込んでいるのかをご説明します。
1. 入社決定(入社決定から入社1週間前まで)
▶︎お礼メールを送付
入社承諾してから実際に入社するまではタイムラグがあるので、放置するようなことがないように、感謝のメッセージ、希望端末などのヒアリング、今後のフロー案内などをお送りしています。
2. 入社準備(入社決定から入社1週間前まで)
▶︎メンター/部長からのメッセージ、入社当日の案内など
入社後にメンターになる社員や部長から、「面接でこういう話をしましたよね」「一緒に仕事ができるのを楽しみにしています」といったメッセージを送ります。
3. 送付物/Welcome Box(入社1週間前)
▶︎業務に必要な端末、ノベルティなどの送付
Classiのバリューが書かれたTシャツなど、ノベルティをお送りしています。段ボールにもロゴを入れ、「Classiから何か届いた!」というわくわく感、箱を開けたときのWow!を演出するようにしています。
4. 入社日
▶︎入社オリエンテーション、専門チャンネル開設
入社日当日は、正社員、派遣社員、アルバイト、アドバイザーなどの様々な契約形態や就業スタイルに応じたコンテンツを提供しています。
Slackで、同じ日に入社した人の「joinチャンネル」を作り、疑問や質問に対して回答できる体制づくりを進めています。
5. 他己紹介
▶︎welcome-newチャンネル開設
Slackで新入社員の紹介チャンネルを作成。事前に本人からもらった写真や内容から、カンパニーカルチャー部で紹介スライドを用意して投稿しています。
メンバーにキャラクターが認識されることをゴールにして、何を書くべきかを確認しながらスライドを作成しています。専用チャンネルを作っておくと、これまでの入社者の紹介を遡って見ることができ、データベースとしても価値が生まれます。
6. コミュニケーション施策(入社後)
▶︎ウェルカムランチ/メンターズランチ
合計4回実施し、会社から昼食代もお出ししています。若干ではありますが贅沢なランチも可能な金額設定にしています。
7. 入社後面談
▶︎入社後1週間アンケート、入社後面談(1か月、2か月、3か月)
入社後1週間でアンケートを実施しています。入社後面談の内容で気になるところがあれば、関係者と共有、連携していきます。
アンケートは、コメントとしてフィードバックをもらうような項目だけでなく、5段階評価で定量的に測れるようなものも用意しています。
アンケート内容には、「オリエンが手厚かった」「セキュリティの意識が高くて整備されていた」などの好意的な声から、「Slackでアカウント名と人物が一致しなくて困る。本名を入れてもらえるとうれしいです」など具体的な指摘などもあり、改善点がクリアになることあります。
まとめ
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オンボーディングを充実させるには、手間をかけて、ゴールを定め、現場やチームメンバーとの連携を深めていくことが大切です。
課題はいつまで経ってもなくならないものなので、チームでは、小さくても成果を喜ぶようにしています。チーム内でお互いの行動を讃え合い動いていくことは、オンラインでもオフラインでも変わらずに大事なことだと思います。
アイモバイルでのオンライン社内コミュニケーションの活性化とオンボーディングの取り組み
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◉登壇者
株式会社アイモバイル コーポレート統括本部 人事企画部 児玉 達矢さん 担当業務:人事業務全般(採用・人材開発など)
2007年入社した事業会社で約6年間人事を経験後、人材会社にてリクルーティングアドバイザーへキャリアチェンジ。現在は2017年より株式会社アイモバイルにて人事業務全般を担当。主に採用業務、人材開発、全社イベントの企画運営などに従事。プライベートでは1児の父。
(児玉さん)アイモバイルは、ふるさと納税事業「ふるなび」、インターネット広告事業、ゲームアプリ運営事業を展開しています。2021年に15期目を迎え、従業員は約200名となります。
コロナ禍が始まった2020年2月末から在宅勤務をスタートさせましたが、社内コミュニケーションの観点では様々な課題が出てしまうこともありました。
今回は、その課題と取り組みについてご紹介します。
リモートワーク下での課題
リモートワークが始まると、社員からいろいろな相談をもらうようになりました。
その中で、直接顔を合わせる機会がなくなったことで、主に次のような課題が見えてきました。
メンバー間のコミュニケーションの低下
一部メンバーの生産性の低下
マネジメントの難易度が上がった
オンボーディングがうまくできず離職が起きた
エンゲージメントが一部下がった
実際に全社員にアンケートをとったところ、(※緊急事態宣言解除後、新型コロナウイルスに対するワクチン接種が普及する前のデータです。)全体の約20%のメンバーが「生産性が落ちている」と自己認識していることが分かりました。
リモートワークは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、2020年2月に急遽取り入れたのですが、一部メンバー間ではコミュニケーションが希薄になり、また新入社員に対してのフォローが間に合わずに、離職が続いてしまうという事がありました。
特にアイモバイルは、社内カルチャーとして、オフラインでのコミュニケーションが活発な会社でした。ランチや部活動も盛んでそのカルチャーが好きで働いているメンバー、カルチャーマッチによりジョインしてくれるメンバーも多かったと認識しています。
在宅勤務が徹底されたことで、当社の“得意分野”がなくなり、いわばカルチャーショックを受けたような状況になってしまいました。それが、一定数の離職が増えた一つの原因と考えられます。
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早期離職は、コスト面のダメージが大きく経営としても重大課題です。
例えばですが、社員が入社後3か月で離職した場合の損失は、年収400万円想定で1名あたり182万円(採用単価や在籍時の給与、教育研修費などを含む)となります。
そこで、オンボーディングへの具体的な施策が必要でした。
コミュニケーション活性化とオンボーディングの具体的な施策
1. タレントマネジメントの拡充
具体的な施策の1つ目は、「タレントマネジメントの拡充」です。もともとタレントマネジメントシステムは持っていましたが、人事や上長だけが主に利用している状況でした。それを、社内コミュニケーションツールとして全社員を巻き込んで活用することにしたのです。
オンラインでは、出社時に出来ていた顔を合わせたときの挨拶や、ちょっとした雑談がなくなります。そこで、そういった業務外のコミュニケーションなどを生み出せるものを作ろうと、タレントマネジメントシステムにメンバー自ら自己紹介を記入してもらうことにしました。
「業務外コミュニケーション」向けのものでは、好きな本や映画、趣味などのプライベート情報を追加し、「業務コミュニケーション」では前職の業界や仕事内容を紹介。営業メンバーが新規開拓する際に「〇〇さんは前に**業界にいたんだな。ちょっと話を聞いてみよう」と相談できるようにするなど、新たなつながりが生まれるように工夫しました。
オンボーディングの観点では、入社メンバーは、入社初日に全社員向けの自己紹介を作成し、タレントマネジメントシステムのURLにアップしてもらいます。オフラインの時は、朝会で全社向けに挨拶をしていた時もありましたたので、顔と名前も一致しやすかったんです。今はフェイスtoフェイスでの場づくりもなかなか難しいので、まずは自己開示により、周りに自分のキャラクターを理解してもらうことが大切だと考えています。
行ってみた感想や反響としては、「雑談ができた」「会話のきっかけになった」という好反応から、「積極的に話しかけられないメンバーは活用しにくい」という指摘もありました。今後は任意で、かつ意味がある前提ですがシャッフルランチなども予定し、コミュニケーションの機会創出をさらに進めていきたいです。
2. エンゲージメント解析ツールの活用
もう一つの施策は、「エンゲージメント解析ツールの活用」です。
もともとツールは入れていましたが、オンラインになってから、より活用するようになりました。これまでは顔が見えていたので、メンバーの状態を把握しやすかったのですが、オンラインになると、状況を可視化するためのツールがないとより難しくなります。
具体的に行ったのは、エンゲージメントスコアが低いメンバーに対して直接声掛けをしたり、上長に共有することです。
エンゲージメントサーベイは匿名で運用しているため、上長には1on1でさりげなくフォローを依頼し、こまめにコミュニケーションを取るようにしました。上長側もマネジメントの難易度が上がったという認識があるからか、「挑戦する風土が薄まっている感じがする」「部内の人間関係が不安。何か相談は来ていないか」と、人事サイドに相談してもらえることが増えてきました。
こちらから「社内の人間関係で困っていることはないか」「業務量に無理はないか」などとメンバーにヒアリングし、アラート出してくれる人にはさらに時間をとって話を聞くようにしました。
アイモバイルには素直なメンバーが多いのか、「今こういうところに課題感じています」と話してくれることも少なくありません。こうしたアラートの拾い上げにより、上長へのフォロー依頼を進め、ハイパフォーマーの離職を防ぐことができた成功事例もありました。
まとめ
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オンラインで改めて感じたことは、メンバーの顔が直接見えないからこそ、情報の見える化が重要ということです。
タレントマネジメントシステムやエンゲージメントツールなどHR Techを積極的に活用しながら、オンラインのいいところを生かしつつ、コミュニケーションの活性化、組織風土を作り上げていきたいと考えています。
おわりに|ハーモスラボについて
ハーモスラボはHRMOS採用のユーザーを中心とした、様々な企業に属する人事同士がつながりを持ち情報交換を行っていくことで、人事の価値を高めることを目指すコミュニティです。
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