【23年分を考察】Jeff Bezos氏のLetter to Shareholders
Amazonの創業者、Jeff Bezos氏は、1997年にNASDAQに上場してから毎年、”Letter to Shareholders”を書き、決算発表後に公表をしています。
この手紙には、昨年度の活動や業績の振り返り、今後の戦略などが書かれており、Bezos氏が何を考えているのか知る手がかりの一つです。
またLetterの最後には、必ず1997年に書いた初めての”Letter to Shareholders"添付されているおり、常にDay 1(初心)を忘れないことを表明しています。
2021年4月現在、23のLetterがありますが、この中で有名なのは1997年のオリジナルのものと、2016年の大企業病を戒める「Day 2」について語ったものです。
私は今まで、目についたLetterを散発的に翻訳をしてきました。しかし23年間のLetterを横並びで見てみることで、なにか示唆が得られないかと思い、この文章を書いています。
この文章は、
1. 23年分を読んでみて気がついたこと過去
2. 各年のLetterのポイント
3. 各年のLetterの原文とその機械翻訳版
という構成になっています。
23年分を読んでみて気がついたこと
手紙の長さは一定ではない
文字数は緩やかな傾向があり、1万文字程度が2000年から6〜7千文字程度に減り、2013年から2万文字前後に増えている。
文字数(原文)
1997年: 10,104文字
1998年: 10,839文字
1999年: 12,184文字
2000年: 6,582文字
2001年: 8,768文字
2002年: 6,861文字
2003年: 4,591文字
2004年: 9,202文字
2005年: 7,235文字
2006年: 5,874文字
2007年: 6,867文字
2008年: 6,862文字
2009年: 5,523文字
2010年: 7,337文字
2011年: 11,360文字
2012年: 8,175文字
2013年: 26,189文字
2014年: 20,482文字
2015年: 25,108文字
2016年: 10,787文字
2017年: 26,555文字
2018年: 15,233文字
2019年: 19,737文字
2020年: 23,887文字
決まった章立てはない
もう一つの特徴として、「ご挨拶」、「今年の振り返り」、「来年の計画」などといった定例の章立てがあるわけではなく、その時々で話したいテーマを書いていること。
それも、文字数がブレる一因である。
常に数字で語る
現状や進捗、成果、などを語る際に、常に数字を明記する。
これはAmazonの企業文化の現れである。
書いている内容は一貫している
次に書いていることが1997年の初回から一貫していること。
具体的には、
・長期的視野の重要性
・フリーキャッシュフローの重要性
・経費を固定費化することの重要性、とそれを支えるIT/仕組み化
・誰よりも顧客にこだわる
・常に改善する、顧客のニーズに基づいて改善をする
・品揃えの拡大/価格の引き下げ/利用時のストレスの低減/スピードアップ
・AWS:新機能/新サービスの追加、費用低減
・Day1を忘れない
・発明をする
・発明をするには失敗がつきもの。失敗を許容する
・スピードが重要
ビジネスモデルの考え方
上記のことから推測するに、Bezos氏は、
・顧客にとって粘着性の高い(悪い言い方をすれば中毒性のある)サイト/サービスにする
⇒指数関数的な成長を目指す
・コストを固定費化する
・出来るだけ仕組み化/自動化をする
・自社で作る/運営する
・作ったものを他社にも販売し、更にコストを下げる(例:AWS)
⇒指数関数的な成長をした場合に利益率/額が劇的に高まる
というビジネスモデルを志向していると思われることを書いている。
これに加えて、
・キャッシュ・コンバージョン・サイクルをマイナスにし、キャッシュフローを潤沢にし、指数関数的な成長を実現するインフラに投資をする
・買掛/売掛のサイクルのコントール
・マーケットプレイスの売上比率を上げる
ことで、驚異の成長を続けているモデルになっていることがわかります。
2. 各年のLetterの主なポイント
1997年:1年目の手紙、10,104文字
・当社の成功を測る基本的な指標は、長期的に創出する株主価値
・顧客へのこだわりを当初から、重視している
・1997年、多くの面で飛躍的に成長した
・高い水準の従業員の採用を行っている。面接の際には「Amazonでは、長く働くこと、一生懸命働くこと、賢く働くこと、のすべてを求めている」と伝えている。
・1998年の目標:ブランドと顧客基盤を強化し、拡大し続けること。そのために利便性/品揃え/サービスを向上させるためのシステムやインフラに継続的に投資をする。
・大きな課題は、ビジネス拡大の新しい方法を見つけることではなく、投資の優先順位を決めること
1998年:2年目、10,839文字
1998年の振り返り
・累計620万人の顧客で売上高10億ドルを達成
・リピーター割合が58%から64%に増加
・音楽/ビデオ/ギフトのストアをアメリカで開始
・イギリスとドイツに進出
1998年の成長を支えたインフラ拡大
・従業員が600人から2100人に増加、経営陣も大幅に強化
・物流センターを新設し、供給納涼が2倍以上に
・棚卸資産が年初900万ドル>期末3000万ドルに増加し、供給能力向上と仕入原価低減ができた
・社債発行で現金及び投資残高が15億ドルを超えた
・世界で最もお客様を大切にする企業を目指している
・そのためには、品揃え、使いやすさ、価格のやすさ、サービスの良さが大切
・従業員には、「毎朝、恐怖を感じて目覚めろ」と言っている。競合企業ではなく、顧客に対しての恐怖
懸命に働き、楽しみ、歴史を作る
・そのためには人材採用の基準を高く設定することが最も重要
・採用を決定する前に、社内メンバーに聞いていること
1)その人は尊敬出来るか?
2)その人が入社することで、グループの平均的な有効性を高めてくれるか?
3)その人は、どのような点でのスーパースターなのか? 仕事以外の面を含めてOKであり、その様な人は仕事環境を豊かにしてくれる
1999年の計画
・配送キャパシティの向上のため大規模インフラを構築
・システム能力の拡大
・ブランドプロミス
・製品及びサービスの向上
・長期的な投資アプローチの重要性
1999年:3年目、12,184文字
・150カ国以上で1700万人以上の顧客にサービスを提供
1999年の振り返り
・売上高が169%増加、顧客数が620万人から1690万人に増加
・リピーターによる注文は64%から73%以上に増加
・アメリカ以外の売上が22%以上に
・配送キャパシティを16.7倍に拡大
・資本効率の良いモデルを維持。年商20億ドルに対して在庫は2.2億ドル、固定資産は3.2億ドル。5年間で使用した営業キャッシュは累計で6200万ドル
2000年の目標
・顧客数と関係の強さ(購入数/頻度/満足度)の両方の成長
・商品とサービスの拡大
・オペレーショナル・エクセレンス:顧客体験の継続的な向上と全事業での生産性/マージン/効率性/アセットベロシティの促進
・国際的な拡大
・パートナーシッププログラムの拡大:店舗を急速に拡大するために、。費用対効果の点で最良のやり方
・全ては長期的な視点から
2000年、4年目、6,582文字
・残酷な年で、株価は80%以上下落
・しかしどの様な尺度で見ても、過去のどの時期よりも強い立場にいる
・顧客数は1400万人から2000万人に、売上高は16.4億ドルから27.6億ドルに増加
・営業損失は24%から2%に減少
・顧客一人当り年慣行消費金額は19%増の134ドル
・売上総利益は125%増の6.56億ドルに増加
・海外売上高は125%増の6.56億ドルに増加
・現金及び床証券は7.6億ドルから11億ドルに増加
・アメリカの顧客満足度指数でサービス業で過去最高の84点を獲得
・Living.comやPets.comに投資をしたが、多大な損失を出した
・ネット販売は伝統的小売業と比べて、高い固定費とコストを特徴とするスケールビジネスであり、中規模企業の存続は難しい
・システム上での処理能力の価格性能は18ヶ月ごとに倍増しており、ムーアの法則が実証されている。
・このペースで行けば、5年後には顧客一人当り帯域コストが同じのままで帯域使用量を60倍に出来る
・最終的には小売業の商取引の15%はオンラインに移行するのではないか
・長期的な視点が大切という考えは変わっていない
2001年:5年目、8,768文字
・重要な通過点に到達した:成長とコスト改善のバランスが取れた
・その結果、新しい配送サービスの開始、本の定価引き下げを実現
2001年の振り返り
・売上高は13%増、顧客アカウント数は2500万人に
・イギリスとドイツで初めて四半期の営業利益を計上
・マーケットプレイスの注文は、アメリカでは15%に到達
・在庫回転率が4%ポイント改善し16%
・最も重要な顧客満足度指数で2年連続のサービス業最高84点を獲得
顧客へのこだわりは継続
・従来の品揃えと利便性に加えて、継続的な価格引き下げを開始
・重複購買アラート機能、本の中身を見れる機能など追加
投資の枠組み:キャッシュフローへのこだわり
・販売数量が大幅に増加しても、固定費をほぼ一定に保つことが出来るため、持続的なフリーキャッシュフローを生み出せる
・株式数を制限する:従業員へのストックオプションによる純希薄化を今後5年間で年平均3%に抑える
・長期的な株主価値への絶え間ないコミットメント
2002年:6年目、6,861文字
・高いレベルの顧客体験と可能な限りの低価格の療法を実現している
・顧客体験(品揃え/商品情報/パーソナライズされたお勧め/その他新しい機能)の多くは固定費化されちる
・フルフィルメントコストなどの変動費は、欠陥を減らすことでコストが改善され、なおかつ顧客体験が向上する
・フルフィルメントセンターの注文処理時間(サイクルタイム)が昨対比17%改善
・品揃え:家電は40%増で家電量販店の10倍の品揃え、本は15%増
・ACSI(American Customer Satisfaction Index)はあらゆる小売業の中で過去最高の88点
・その結果が売上26%増、販売数量34%増、フリーキャッシュフローは3.5億ドル増
2003年:7年目、4,591文字
いつになく、とても短い手紙。
・長期的な視点で物事を考えることは真のオーナーの条件であり、結果でもある
・顧客体験をデザインする上では、長期的なオーナーを念頭に置いて意思決定をおこなう
・ネガテイブであっても商品に対する顧客のレビューを載せる
・購入済みの商品のアラート機能
・送料無料と継続的な値下げ
2004年:8年目、9202文字
フリーキャッシュフローの重要性
・Amazonの財務上の焦点は、一株あたりのフリーキャッシュフローの長期的な成長にある
・資本効率が優れており、年末の固定資産投資額は売上高の4%相当
・2004年のフリーキャッシュフローは1.31億ドル増の4.77億ドル
・株式の希薄化は過去3年間で1%減少
2005年:9年目、7,235文字
・Amazonで行う意思決定の多くはデータを用いて行う
・フルフィルメントセンターの増設、そのスペック
・在庫水準の設定
・価格弾力性を用いた価格の決定
・サードパーティの商品の販売は28%に増加
2006年:10年目、5,874文字
・新規事業の始めるには、ある程度の規律、少しの忍耐、育成する文化が必要
・期待する資本利益率(少なくとも既存事業以上)を生み出せるか、会社全体の中で重要な意味を持つ程度の規模まで成長できるか、を確認する必要がある
・現在その市場に十分なサービスが提供されておらず、Amazonが顧客志向の強力な差別化をもたらす必要な能力を有している
・実店舗のテストは、上記条件の一つしか合格していない
・合格しているのは、Fulfillment by Amazon、Amazon Web Service
・新規事業が大成功をしても、会社全体の経済状況に影響を与えるようになるのは3〜7年後
2007年:11年目、6,867文字
・Amazon Kindleの発売。3年掛けて開発したが大成功
2008年:12年目、6,862文字
・基本的なアプローチ、長期的な視点に立ち、顧客に執着する、は変わらない
・Amazonは、顧客のニーズから逆算するアプローチ
・既存のスキルやコンピテンシーから考えるスキルフォワードアプローチとは対照的
・Kindleが良い例。これまでに印刷されたすべての本を、あらゆる言語で60秒以内に入手できるようにする
顧客体験の柱
・顧客は低価格、豊富な品ぞろえ、早くて便利な配送を重要視しており、これは長期的に安定して変らない、と確信している
慎重な支出
・主要な財務目標は、長期的にフリーキャッシュフローを最大化し、高い投下資本利益率を実現すること
2009年:13年目、5,523文字
・2009年の業績は、過去15年間取り組んできた、品揃えの充実、配送の迅速化、低価格で販売するためのコスト構造の改善など、顧客体験の改善の累積的効果が出ている
2009年の特筆事項
・売上高は10年前の15倍
・フリーキャッシュフローは昨対比114%増
・各国で新しい商品カテゴリーを21追加
・Zapposの買収
・700万件のカスタマーレビューを掲載
・サードパーティセラーの売上は30%に
・AWSは新しいサービスや機能を次々と追加
・Kidleのコンテンツ、言語の拡大
・Amazonでは、財務結果や財務予測の議論はほとんど時間を割かない。それよりもビジネスのコントロール可能なインプットに時間を割く
・年間目標の策定は、秋〜年明け早々まで
・2010年には452の詳細な目標を設定。オーナー/成果物/目標完了日を設定
・年数回、進捗を確認し、目標の追加/削除/修正を行う
・360/452は、顧客体験に直接影響を与えるもの
・452の中で、純利益/粗利益/マージン/営業利益という言葉を使っているものは一つもない
2010年:14年目、7,337文字
・最新のソフトウェアアーキテクチャでAmazonで採用していないものは殆どない
・その殆どがサービスとして実装されている
・サービス志向アーキテクチャ(SOA)はAmazonのテクノロジーを構成する基本概念
・テクノロジーは研究開発部門として置くのではなく、全てのチーム、プロセス、意思決定、イノベーションに浸透している
・AmazonのDNAには発明がある
・テクノロジーは、顧客に提供する体験のあらゆる側面を進化させ、改善するための基本的なツールである
2011年:15年目、11,360文字
発明の力
・顧客からの感謝の手紙:AWS、サードパーティセラー、Kidleパブリッシング、フルフィルメント・バイ・アマゾン(FBA)
2012年:16年目、8,175文字
顧客を中心に考える
・最高な状態であっても、常に改善/改良を行える
・プライムの商品数は1,500万点を超え、2005年のサービス開始時期の15倍に増加
・Amazonの基準に満たない顧客体験を提供した場合には、自動化されたシステムを通じて、こちらから積極的に返金を行う
・Amaznパブリッシングは、印税の支払いを毎月、60日後に行う
・顧客にWowと言ってもらいたいのが、原動力
・「株式市場は、短期的には投票マシンだが、長期的には計量マシンである」by投資家のベンジャミン・グレアム、の言葉を社員総会で頻繁に引用している
2013年:17年目、26,189文字
様々な取り組みの一部を紹介
・プライム
・読者と作家:KindleとAmazonパブリッシング
・プライムインスタントビデオ
・FireTV
・Amazonゲームスタジオ
・Amazonアプリストア
・スポークンワード・オーディオ:Audible
・Freshグローサリー
・Amazon Web Service(AMS)
社員のエンパワーメント
・キャリアチョイス:需要の高い分野の講座を社員が受講する場合、そのスキルがAmazonのキャリアに関連するかに関わらず授業料の95%を前払い
・Pay to Quit:毎年、従業員に辞めてたらこれだけ支払う、という金額を「このオファーを受けないでください」と見出しをつけて提案する(1年目:2000ドル、その後毎年1000ドルづつ上がる)。従業員が落ち着いて自分が本当に欲しいものは何か、を考えてもらうため。Zapposが考案したもの。
・バーチャルコンタクトセンター:自宅でAmazonやKindleの顧客サービスセンター対応をこなす。
・退役軍人の採用
・フルフィルメントの革新:絶えず革新しており、2013年はフルフィルメントセンターのネットワーク全体で230の主要なソフトウェア改良を行った
・FCの見学は、www.amazon.com/fctoursで申込可能
・アーバンキャンパス:シアトルの42万平方フィートの本社屋
・郊外でなく都市部:従業員が公共交通インフラを利用できるので、地球に優しい
・迅速な配送:日曜配送の開始、自社インフラ/Prime Airの立ち上げ
・実験とさらなる実験:Prime Airで、Webサイトや製品の改善点を評価するためにWeblabと呼ぶ独自の実験プラットフォームを社内に設置
・アパレルと靴:ブルックリンに4万平方フィートのフォトスタジオを新設し、28米で毎日平均10,413枚の商品写真を撮影している
・イライラしないパッケージ:玩具を中心にメーカーの包装材の改良を継続
・フルフィルメントバイアマゾン(FBA):利用する販売者が65%増加した
・Amazonログインと支払い
・Amazonスマイル:購入代金の一部をお気に入りのチャリティ団体に寄付ができる。チャリティ団体は100万程度をリスト化済み
・メーデーボタン:Fire端末で困ったときにこのボタンを押すと、Amazonエキスパートが15秒以内にレスポンスをして、アドバイスや操作の代行をしてくれる
・普通を再発明することにこの上ない喜びを感じている
・発明には失敗はつきもの。早い段階で失敗し、正しく理解できるまで反復する。早い段階で失敗することは、失敗の規模が小さい。
2014年:18年目、20,482文字
夢のあるビジネスは4つの特徴を持っており、これらの特徴があるビジネスを見つけたら結婚をすべきだ
・お客様に愛されている
・非常に大きなサイズに成長する
・資本に対するリターンが高い
・何十年も耐えられる耐久性がある
Amazonは、一夫一婦制ではなく3つのライフパートナーと幸せな結婚生活を送っている
・マーケットプレイス
・プライム
・AWS
Amazonの大切なツール
・競合他社ではなく、顧客を大切にする
・発明への心からの情熱
・卓越したオペレーションへの取り組み
・長期的な視野を持つ
マーケットプレイス
・Amazon Auctions (顧客数:親戚含めて7人) > zShops(0人)> MarketPlace (1年以内に全売上の5%に>40%以上に成長)
・Selling Coachプログラム:機械学習により「ナッジ(直訳:口出し)」を次々に作り(7,000万件/週)、品切れの回避/売れ筋商品の追加/価格の引き下げなどを販売者に告知
・サードパーティ販売者の1/5の売上が自国以外で発生
・一つのアカウントで複数の言語でビジネスを行える
Amazonプライム
・初年度は数百万ドルの配送収入を放棄したが、規模を拡大できればコストを低減できるとの分析結果があった
・在庫補充/在庫配置/商品価格設定などの多くを自動化する大規模なシステムを構築
・FCは2015年の13から109拠点に拡大、現在は第8世代
・2012年買収のKivaによるAmazon Roboticsは15,000以上のロボットを導入、商品の入出庫に活用
・Prime Instant Video:プライム無料体験の開始/有料会員への移行/更新率/このチャネルから入った会員の商品購入率などの点で、満足する結果
・オリジナルコンテンツの開発も着手、各種の賞も受賞
Fulfillment by Amazon(FBA)
・マーケットプレイスとプライムを密接に結びつける接着剤
・サードパーティ販売者がFBAに参加すると、プライム対象商品になる
・FBAに参加したサードパーティ販売者の71%が、売上数量が50%増加
・サードパーティ販売者の販売数量の40%がFBAによる売上
Amazon Web Service(AWS)
・新規事業を立ち上げるスピードが飛躍的に向上
・Pinterest, Dropbox, AirbnbなどがAWSサービスを利用
・大企業もAWSが利用するように:スピードとアジリティが重要
・GE, Major League Baseball, Tata Motors, Qantas, NTT Docomo, Financial Times, SEC, Conde'Nast, Kellogg's, News Corp
・新しい機能/サービスのリリース:2012年160、2013年280、2014年516
・Amazon Aurora:リレーショナルデータベースエンジン
・コスト削減もするが、それは副食
・付加価値の低い作業に費やす時間が減る+スケーラブルでセキュア/堅牢/ハイパフォーマンスなシステムの構築を劇的に簡素化する
・100万人以上のアクティブ顧客
・AWSは将来の顧客にサービス提供をし、経済的なリターンを得られる夢のようなサービスの一つ
・既存の市場規模に成約されないポテンシャルがある
・現状に満足せず、更に使いやすくするために常に努力を続けている
・世界中にAWS経験者が、AWSアンバサダーとして活躍してくれる
・資本利益率が高い、資本集約型
キャリアチョイス。プログラム
・2011年に導入、8カ国で2000人以上を支援
・関心が高かったので、8FC内に教室を設置し、15クラスを開催
・卒業生で看護師として新しいキャリアを始めた人もいる
・FCセンター視察ツアーはイギリス、ドイツなどでも開催
※筆者注:現在はオンライン/ビデオ視察のみ
https://amazonfctours.com/virtualtours
2015年:19年目、25,108文字
売上高1000億ドルを最速で達成
・AWSの売上高も100億ドルを達成、Amazonよりも速いペース
・2つは異なるサービスだが、考え方は一緒
・数少ない原則を深く考え、信念を持って行動する
・競合他社へのこだわりではなく、顧客へのこだわり
・発明や開拓への意欲
・失敗を厭わない姿勢
・長期的な視点で物事を考える忍耐力
・卓越したオペレーションに対するプロとしての誇り
企業文化
・企業文化は良くも悪くも永続的で安定して、変化しにくい
・企業文化は人々や出来事によって、過去の成功や失敗の物語が会社の伝承の深い部分になることによって、時間を掛けてゆっくりと作られていく
・Amazonの文化で特に特徴的なのは、失敗
・発明をするためには実験が必要で、実験には失敗がつきもの
・ほとんどの大企業は、発明に至るまでの一連の実験の失敗に苦しむことを望んでいない
・野球と異なりビジネスは、リターンの分布がロングテールになっている。だからこそ思い切った行動が大切
・大きな勝利を収めたものは、非常に多くの実験にお金を払っている
・AWS、マーケットプレイス、プライムがその証
プライム
・2日配送の品揃えを100万点から3000万点以上に増やした
・数十万点を当日配送可能に
・1時間以内に届けるPrime Nowは構想から111日でスタート
・アプリの構築、都市部の倉庫の確保、販売する2.5万点の決定、在庫の確保、スタッフの募集と採用、テスト、反復、倉庫用/ドライバー用野新シアプリの設計
・Primeビデオ:優れたクリエーターにオリジナルシリーズの制作を依頼
・ゴールデングローブ賞/エミー賞など120以上のノミネートと60弱の受賞
・初のプライムデーが成功
マーケットプレイス
・Amazonで販売される商品の50%弱がサードパーティ販売者によるもの
・年間10万ドル以上の売上をあげている販売者が7万人以上
・Seller Fulfilled Primeプログラムの立ち上げ
・Amazon Lendingプログラムを立ち上げ、販売者に15億ドル以上資金援助
・グローバル市場にリーチできるように支援
・172カ国の販売者が189カ国の顧客にアプローチ可能
・サードパーティ販売の1/4が越境販売
・Amazon Chai Cartプログラムを開始し、3輪カートで飲料を提供しながら中小企業オーナーにオンライン販売をコーチ
・4ヶ月で31年15,280kmを移動し、37,200杯のお茶を提供し1万人以上と交流
・そこで得た示唆を基に60分以内にオンライン化出来るAmazon Tatkalを開発
・車輪がついた移動可能なスタジオで、登録/画像処理/カタログ作成/基本的なセラーの仕組みな度のサービス提供
・FBAのグローバル展開
Amazon Web Service(AWS)
・70以上のサービスを世界12エリア/33アベイラビリティゾーンを提供
・Pinterest、Airbnb、GE、Enel、Capital One、Intuit、Johnson & Johnson、Philips、Hess、Adobe、McDonald's、Time Inc., MLB Advanced Media, Netflixなどが利用中
・2015年には昨対比40%増の722の重要な新機能/新サービスを発表
・大手テクノロジー企業は競合他社を見て動いているが、AWSは90〜95%の製品が顧客の要望に基づいて開発されている
・これまでに51回、値下げをした
発明マシン
・大企業でありながら、発明マシンでもある企業になりたい
・規模の大きさが可能にする並外れた顧客サービス能力+スタートアップのような動きの速さ/軽快さ/リスクを受け入れるメンタリティ
・業績の良い大企業であっても、当たり前のように陥ってしまう微妙な罠:スピードと創造性を損ねる「一律の意思決定」
・ほとんどの意思決定は、可逆的である(タイプ2の意思決定)
・最適でない意思決定をしても、すぐにもとに戻ること
・判断力の高い個人や少人数のグループが素早く行うべき
・企業が大きくなると、タイプ2の意思決定に重箱の隅をつつくようなタイプ1(不可逆)の意思決定スタイルを持ち込む傾向がある
持続可能性と社会的発明
・社員は23万人に
・Amazonの独創的な文化をサステナビリティや社会的課題の解決に役立てる
・AWSインフラで再生可能エネルギーを100%使用する
・Amazon Wind Farm
・すでにAWS全体で25%使用中
・フラストレーション・フリー・パッケージ:40万個以上の用品で活用
・キャリアチョイス
・Leave Share;配偶者の雇用主が有給休暇を提供していない場合、Amazonの従業員の有給を配偶者やパートナーと共有することが出来る
・Ramp Pack:出産した母親が、仕事に復帰するペースをコントロールできる
・医療保険や全ての福利厚生は全従業員/役員で平等。
2016年:20年目、10,787文字
Day2とはどんなものか
・Day2を避けるために
・真の顧客志向: 顧客は常に、美しく、素晴らしい不満を持っている
・代理に抵抗する: 見るべきものでない、代理を主としてしまう
・外部のトレンドを取り入れる
・高速な意思決定
・一律のやり方で意思決定をしない
・必要な情報の70%程度で意思決定を行う。遅い決断は確実にコスト高
・その意思決定に合意できなくても、コミットする
・整合が取れていない問題を早期に認識し、すぐにエスカレーションし、スタミナがある人が決断を下す
・意思決定の質だけでなく、スピードにも気を配る
2017年:21年目、26,555文字
・8年連続でAmazonがアメリカの顧客満足度調査1位に選ばれる
・それ以外にもイギリスや、アメリカの働きたい場所ランキング、社会的責任などで1位に
・私が顧客について好きなことは、神のように不満を持っている
・常に期待値が上がっていく。
・そしてこのサイクルが早くなっている気がする
・高まり続ける顧客の期待に答えるためには、多くのことを組み合わせて行う
ハイスタンダード(組織内の高い基準)について学んできたこと
・人が生来持っているものではなく、教えられるもの
・ハイスタンダードの基本原則を明確にし、目に触れるようにする
・普遍的ではなく、領域固有のものがある:領域固有なものを学び/設定する
・まずその分野で「良いもの」とはなにか、認識をする
・ついで、それを得るためにどれだけ労力が必要か、正確に認識する
・スキルは、チームであれば良い
・必要労力への過小評価は、ハイスタンダードを殺してしまう
・優れた6ページのメモ(Amazon標準の文書形式)は、何度も書き直し、同僚にアドバイスを求め、2〜3日置いてからまた編集し直す
・顧客により良い製品やサービスが提供できるようになる・スキルは、チームであれば良い
ハイスタンダードのメリット
・顧客により良い製品やサービスが提供できるようになる
・人は高い水準に惹かれる
・「目に見えない」重要な仕事を保護をする
・楽しい
・最高の水準を要求する
・最近のマイルストーン
・プライム、AWS、マーケットプレイス、Alexa、Amazonデバイス、プライムビデオ、Amazon Music、Amazon Go、トレジャートラック、インド、持続可能性、中小企業の活性化、投資と雇用の創出、キャリアチョイスについて説明
2018年:22年目、15,223文字
サードパーティ販売者
・総売上の58%まで成長
・それと並行し、自社販売(ファーストパーティー)は1999年から年率25%で成長(同期間でサードパーティは年率52%成長)
・Amazonが想像し構築できる最高の販売用ツールを、サードパーティー販売者に提供した
・特にFBAとプライム会員プログラム
直感、好奇心、そして迷いの力
・ビルダー文化:好奇心旺盛で探究心のある人達、発明が好き
・成功は繰り返しによってもたらされる。成功への道は一筋縄では行かない
・非線形の発見には、放浪が必要
・放浪には、直感と好奇心が必要
・顧客は真に求めているものを知らない
不可能を想像する
・Amazon GOの開発
・実店舗で一番の問題である、レジでの行列をなくすこと
失敗もスケールアップする必要がある
・会社が成長すれば、失敗した実験の規模も大きくなる必要がある
・Fire Phoneの失敗:EchoとAlexaの開発には活用できた
・オーナーのように考えることが出来る多才で優秀な社員を雇用し、維持する
・最低賃金を15ドル/時に引き上げ
・キャリアチョイスプログラム:1.6万人が利用
2019年:23年目、19,737文字
COVID-19対応
・生活必需品、医療品などの在庫確保と配送の迅速化を最優先した
・合わせて従業員や契約社員の安全に注力
・ウイルス検査能力を高めるための取り組みをスタート
・最低地銀の引き上げ、残業手当を2倍に
・独立系配送サービスパートナー支援のためAmazon Relief Fundを設立し2500万ドルを拠出
・FC及び配送ネットワーク全体で10万人分の雇用を創出
・過度な高価格や転売の防止のため、50万件以上の出品を削除、6000以上の販売アカウントを停止
・WHOにAWSサービスとアドバイスを提供
・分析のための基盤整備、医療トレーニング資料/ビデオの翻訳
・AWS診断開発イニシアティブを開始
・リモート学習への移管のための支援
COVID-19を超えて
・The Climate Pledgeを創設し、パリ協定を10年前倒しで達成し、2040年までにネットゼロ・カーボンの達成を約束
・Rivan社から10万代の電気配送車を購入
・再生可能エネルギーを2024年までに80%、2030年までに100%達成
・フラストレーション・フリー・パッケージ:2008年以来、81万トンの包装材が削減、14億個の配送箱が不要に
・Amazonのサスティナビリティサイエンティストの調査では、車でリアル店舗に行くよりもオンラインの買い物のほうが二酸化炭素排出量は少ない
スケールメリットを活かす
・世界中で84万人の雇用を創出
・それらの多くが最初の仕事の機会であり、それを誇りに思っている
・全ての正社員に健康保険、401Kプラン、20週間の有給出産休暇などを提供
・7億ドルを投じて、10万人以上の従業員がヘルスケア、クラウドコンピューティング、機械学習などの需要の高い分野のトレーングプログラムを職場で受けられるようになっている
・キャリアチョイスの提供
・Amazon Future Engineer;アメリカ国内の恵まれない地域の学校2000校以上に、コンピューターサイエンス入門とAPコンピューターサイエンスの授業に資金を提供+大学奨学金を100名/年、支給
2020年:24年目、23,887文字
消費するよりも想像する
・ビジネスでも人生でも、成功したいと思うなら、消費するよりも想像することが大切
・たとえ表面的に成功しているようには見えても、関わる人達に価値を生み出さないビジネスは衰退の道を歩む
・2020年度、Amazonは、 合計:3,013億ドル
・シェアホルダーに対して生み出した価値: 純利益213億ドル
・従業員に対しての価値(給料/福利厚生など) 910億ドル
・サードパーティーセラーの利益: 250億ドル
・顧客 買い物 1260億ドル相当
28%の顧客は3分以内/全購入品の半分は15分以内
Amazonでの買い物15分 vs リアル店舗1時間
週に2〜3回リアル店舗で買い物 >年間で75時間以内の節約
AWS 380億ドル相当
オンプレと比較して30%コスト改善+開発のスピードアップ
・ベッセマーでの組合投票が否決されたことに安心をしていない。従業員のためにもっと良い仕事をしなければいけないと思っている
・「地球上で最もお客様を大切にする会社」に加えて、「地球上で最高の雇用主」と「地球上で最も安全な職場」を実現する
・心に決めたことを失敗したことはないし、この件でも失敗するつもりはない
・Working Wellプログラム
・少人数制で体の仕組みや積極的な健康管理、安全対策のコーチング
・労働災害の40%が筋骨系障害(MSD)
・2020年に北米と欧州の350拠点で85.9万人の従業員を対象に開始
・自動化された人員配置:異なる筋肉/腱を使用し、反復を避けるよう高度なアルゴリズムを用いて仕事のローテーションを行う
・MSDは昨対比32%減少、休業を伴うMSDは50%減
・最低時給15ドルに引き上げは、他の企業も追従するので社会にとっても良い
気候変動への誓い
・人為的な原因で気候変動が起きていることを照明することは止めた。単純に真実だから
・気候変動に賢明な行動をとることは、生来の悪い事態の発生を防ぐだけでなく、経済の効率を高め、技術革新を促進し、リスクを減らすことにもつながる
・これからの10年はとても大切。2030年の経済は現在と大きく異るものになる必要があるし、Amazonはその変化の中心になることを計画している
・立ち上げたClimate Pledgeには、ほぼすべてのセクターを代表する企業53社が署名
・Best Buy、IBM、Infosys、Mercedes-Benz、Microsoft、Siemens、Verizonなど
・配送はAmazonの事業活動な主要な要素だが、2040年までに炭素排出量0にする
・気候変動対策基金を設立し、20億ドルを拠出
・個人として100億ドルを、気候変動と戦い、自然界を守るために活動をしている科学者/活動家/NGO/環境保護団体などを支援
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