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口下手にこそ花束を

花が好きだ。
道端に咲く花も、何かの記念日にもらう大きな花束も、お別れのとき身体のまわりいっぱいに並べられる花たちも。

お花は強くて優しい。ただそこにある、だけなんだけど。誰の期待を受けなくたって時が来たら咲いて、成長し続ける。健気で、努力家で、謙虚で。花や植物のように生きたいと日々思っている。

今日は旅先で出会ったお花にまつわる素敵な光景を共有したい。

2019年9月。わたしは約一週間イギリスへひとり旅に出た。そこでの一週間は、本当にたくさんの刺激と発見があったのだけれど、中でも心を打たれた光景の一つが駅構内でよくみかけたお花の移動販売だった。

駅構内にあるお花の移動販売

駅の構内や道路のど真ん中に何らかの移動販売がある光景はよくみかけるので、見つけては海外っぽいな〜〜と心躍っていたのだが、それが食べ物やアンティーク、イギリスの定番のお土産品ではなく、花屋というところにときめき、その日はしばらく遠くからようすを見ていた。

私がその花屋の移動販売に出会ったのは平日の朝8時ごろ。こんな時間に需要はあるのかとしばらくみていると、思っていたより多くの人がお店の前に立ち止まり花を買ってゆく。しかも驚くことにスーツ姿の人が多い。その様子があまりにも衝撃だったので購入されている方に直撃してお話を聞きたかったのだが、日本と同様、朝は急いでいる人が多いロンドンの街。(しかもみんな歩くの速い。一歩が大きい。)人が落ち着いた頃にお花の移動販売をしている店主さんに、「平日のこんな時間に買う人いるの?」「どんな人が買っていくの?」と聞いてみた。拙い英語で得た情報をまとめると、朝は会社の人や、お世話になった人に買っていく人が多いそう。さらに実は日暮れからが一番売れる(需要がある)のだということ。(仕事が終わり、ディナー前に買っていく人やお家に帰る前に買っていく人たちらしい。)

その答えをきいて、わたしはとんでもない国にきてしまった!と頭の中がときめきで埋め尽くされた。だって、あぁ、考えるだけで素敵だ。誰かから(もしくは誰かへ)お花を日常的に渡される(もしくは渡す)環境って!つまり朝購入した場合は花を買ってそのまま会社に行くわけでしょう?それが特異なことではない世界って幸せすぎでは。花が人々の生活に溶けこんでいる。

それと同時にこれはとてもよいムーブメントになるのでは?と考えたりもした。

私は自他共に認める口下手人間で、対話する相手が大切であればあるほど相談事や会話の中で意見を求められると「それについて一日考える時間ください。」と一度持ち帰らせてもらってしまう。そうして一晩考えようやく言葉にできるタイプなのだが(だから言葉のキャッチボールが早い人は超尊敬です。)そういうとき、あぁ今すぐお花を差し出したい!とおもうことが何度もある。勇気を振り絞って話をしてくれた人に適当な答えをすぐに返すことができず「こんな話しちゃってごめんね」といわれるたび、「違うの!めちゃ考えてるの!でも的確な言葉がすぐ出ないだけなの!好き!!」という気持ちでいっぱいになる。そんなとき、お花があれば、そっと差し出してその気持ちを伝えるお手伝いをしてくれるのに!と思う。

私も含め口下手な人が多い日本でこそ、お花の移動販売がスムーズにしてくれるコミュニケーションがある気がする。

あなたがお花を渡したのはいつが最後ですか?
口下手なあなたにも、口上手なあなたにも、花束を。


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