ワナビとセルアウト
ずっと耳にしていながら、ざっくり感覚的にしか理解していなかった単語の意味を改めて調べてみた。
ひとつは、ワナビ。
ひとつは、セルアウト。
【ワナビ】
アイドル性のある何者かに成りたいと渇望している人を指すスラング。特に、小説、ラノベ、シナリオ等の作家志望者を示した呼称・蔑称として使われることが多い。want to be(~になりたい)を短縮した英語のスラング『wannabe』が由来。
【セルアウト】
売れ線をねらって自分本来のスタイルを曲げて活動することをさす中傷的な言葉。大衆やマーケットに迎合すること。ヒップホップ業界で使用されることが多いみたい。
ほとんど同時に意味を知ったのだけれど、対照的な意味合いに偶然の面白さを感じた。どちらも否定的な意味のある言葉でありながら方向性が真逆に違ってて、つまるところ人間はどんなことにだって隙あらばケチのつけるのだと改めて思い知った。
無名であることも、有名であることも、何かしら攻撃の材料となるのだなぁ。ワナビに関しては自虐で使うことが多いらしいが、それとて攻撃の一種だろう。
小説の分野で言うと、僕は書籍化作家だからとて無条件にすごいとは思わない。ひがみや妬みと取られても構わないが、一年ちょっと小説サイトで活動してきてプロ顔負けの実力を持つ作家さんを何人も見つけてきたから(いずれここでも紹介したい!)。
商業出版されている作品は水準が安定していて、失敗のリスクがないのはいい部分だ。でも古着屋やリサイクルショップで掘り出し物を探すのが好きな僕は玉石混交のネット小説の世界も捨てがたい。
投稿サイトと公募ではまるっきり評価軸が違うと感じることもあったけれど、我執を滅却してどちらも唸らせている人もいるみたいだし、そんな究極のセルアウトというべき職人的境地を目指すのもいいかもしんない。
表現の場が多様化してくると、ハッとするような冒険的な作品も出てくるはず。どこから登場してきても面白い。予想のつかない場所からの方が楽しいだろう。そんな中で背中を追う者と追われる者はどちらもワナビやセルアウトといった中傷にさらされて疲弊してしまうかもしれない。
結局どちらも他者や過去の自分との比較から出る蔑称なので、そんなくたびれるフィールドからいかに無縁でいられるかが長く走り続けるコツに違いない。僕とて、しょっちゅう誰かと自分を引き比べて自信喪失しているクチなので偉そうなことは言えないけれど。