さなコン3「十三不塔賞番外編」
SF作家クラブが催しているちいさなSFコンテスト3の選考を仰せつかった私、十三不塔ですが、最終選考委員ということもあり、一次・二次の選考にはタッチしておりません。
が、チラホラと拝読した作品の中に選考に残らずとも、とてつもない輝きを放っているものがあります。最終選考のフェーズにおいても「十三不塔賞」となるものを選ぶわけですが、その他にも推しはあるぞ、ということでいくつか紹介させて頂きたいと思います。
猫の捕獲と倉庫業の関係性 Nekobanさん
宇宙のどこかの惑星の女子高生ヘルベチカが、退屈な星(地球)で退屈な仕事に従事(倉庫業)をするために猫を捕まえるというテストを受ける小説です。反抗期だというヘルベチカが、むしろ老成しているようにも見えるのが面白く、またシニカルだったりアイロニカルだったりする語り口が心地よい。ウィットの利いたアメリカ小説のような味わいがあります。猫小説としても素晴らしいです。この作品を選考するというめぐり合わせには残念ながら恵まれませんでしたが、ここ最近目にした作品の中でもとりわけ楽しい小説でした。多くの人に読んで頂きたいです。あらすじもよい!!!
ノスタルジーはだいだい色をしている 四宮ずかんさん
詩才に恵まれた友人との親密でありながらヒリヒリした日々が、独特のタッチで描かれる青春小説。眠る詩人の耳から過去の幻影がプロジェクターのようにひろがるという不思議な光景は、しかし詩人とはそんなものではないかという謎の納得感をもたらす。言葉が詩を呼ばれるようになる、その誕生の瞬間を切り取ったラストにはまぎれもない感動がある。
銃後の爆弾 坂水さん
他の応募作と並べてみれば、この作品がいかに異彩を放っているのがわかる。のっぴきならない非日常が常態化する「戦時」という時空間の中、立ち込める情念の密度が半端ではなく、よい意味で濁流をかき分けるような読み心地だった。千里の乳をくだんが吸うシーンは、おぞましさと分かちがたい神々しさがあり、本コンテストで拝読した全作品の中で最も印象的なものとなった。
まとめ
まだまだ他にもありますが、三つにとどめておきます。これが私の好きな作品です。なんというか難しいことは抜きにして「ええなぁ」と嘆息したものを直情的に選びました。地の果てまで虚空が尽きるまで書き続けて頂きたいものです。ごちそうさまでした。