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【本要約】弱い円の正体 仮面の黒字国・日本/唐鎌大輔

『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』は、みずほ銀行のチーフマーケット・エコノミストである唐鎌大輔氏が著した、日本経済と円相場に関する分析書です。2024年7月に日経BP社から出版されたこの本は、長引く円安の真因を探り、日本経済の構造的な変化を明らかにしています。

本書の主な論点:

  1. 経常収支黒字の「仮面」
    日本は依然として経常収支黒字国であり、世界最大の対外純資産国というステータスを持っています。しかし、著者はこれを円の強さを担保する「仮面」に過ぎないと指摘します。

  2. キャッシュフロー(CF)の実態
    経常収支が黒字でも、実際のCFは流出している可能性があります。著者は、経常収支の「符号」ではなく「キャッシュフロー」に注目することの重要性を強調しています。

  3. デジタル赤字の拡大
    著者は、日本のデジタル関連サービスの赤字が急速に拡大していることを指摘しています。過去10年で2倍、四半世紀で6倍に増加したこの赤字は、円安の一因となっています。

  4. 新時代の赤字要因

  • 外資系コンサルティング会社の台頭

  • 研究開発サービスの赤字(頭脳流出の象徴)

  • 知的財産権使用料の赤字拡大

  1. 原油輸入を超える影響
    著者は、これらの「新時代の赤字」が原油輸入による赤字を超える規模になっていると指摘しています。

  2. 円安の構造的要因
    本書は、これらの要因が複合的に作用し、長期的な円安トレンドを形成していると分析しています。

  3. 日本経済の課題
    著者は、これらの分析を通じて、日本経済が直面している構造的な課題を浮き彫りにしています。特に、デジタル化や知識集約型産業における日本の競争力低下を指摘しています。

  4. 政策への示唆
    本書は、これらの課題に対応するための政策的な示唆も提供しています。デジタル競争力の強化や、高付加価値サービスの育成などが重要であると指摘しています。

  5. 為替市場への影響
    著者は、これらの構造的な要因が、今後も円安圧力として作用し続ける可能性を示唆しています。

  6. 投資への示唆
    本書の分析は、投資家や企業経営者に対しても重要な示唆を提供しています。円相場の長期的なトレンドを理解することで、より適切な経営判断や投資決定が可能になると指摘しています。

『弱い円の正体』は、表面的な経済指標だけでなく、日本経済の構造的な変化に焦点を当てることで、長期的な円安トレンドの本質を明らかにしています。著者の専門的な知見と豊富なデータ分析に基づいた本書は、日本経済と為替市場に関心を持つ幅広い読者に、新たな視点と洞察を提供する重要な一冊となっています。

参考文献:
[1] https://toyokeizai.net/articles/-/846200
[2] https://toyokeizai.net/articles/-/851196
[3] https://jp.reuters.com/opinion/forex-forum/DDEE5NNLQZJ4BKEN7LMTGHPYC4-2025-01-03/
[4] https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784296120345
[5] https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00461/101800254/
[6] https://bookplus.nikkei.com/atcl/catalog/24/06/17/01440/
[7] https://jp.mercari.com/search
[8] https://books.rakuten.co.jp/rb/17875479/

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