Les Misérables
㊟ネタバレどころの話ではないです、あらすじ(記憶の限り)全て追っています。初見の感想です。間違っている箇所も恐らくあります。温かい目で読んでいただけると幸いです。
2021/06/24 17:00開場 18:00開演 2階席H列14番
やばい。とにかくやばい。覚えているうちに少しでもと、幕間、終演後の帰りの電車の中で印象に残ったシーンや感想を書き留めようとしたのだが、語彙力が全てぶっ飛んでしまいメモがひたすら「やばい」という言葉で埋め尽くされている。丁度今は2部が始まりOMOが終わったあたりだろうか(20:24)。語彙力の低下したメモを見ながら昨日の公演について感想をまとめたいと思う(と書いた直後に夕飯に呼ばれたため実際書き始めたのは22:22)。
まずは今回レミゼを見に行こうと決めたきっかけである生田絵梨花ちゃんのエポニーヌについて。誰もが感じていたことであろうが、やはり彼女は「いいとこ育ちのお嬢さま」コゼットの方がしっくりくる印象だった。しかし、乃木坂の『wilderness world』で彼女が黒のドレスに赤いハイヒールで2本の銃を構えている姿を見て、こりゃ強い女もいけるぞと、期待大だぞと強く思った。
映画も舞台も観たことが無い、あらすじと数曲の知識だけのイメージでは、エポニーヌは「片想いだと分かっていつつもひたむきに好きな人のために尽くす一途な女」「人前では絶対に涙を見せなさそうなすましたお姉さん」という印象だった。しかし、彼女の演じ方の影響もあるのかもしれないが、実際に舞台を見てみるとその印象が少し変わった。どちらかというとやさぐれていて、「ケッ」って自分を嘲るように笑うのが似合いそうな印象。OMOも「愛しても振り向いてもらえなくて辛い」というより、「何であんな奴のこと」と思いつつも「それでも好きなんだよなバカだよな自分」と言った感じで泣き笑いというか諦念が混ざったような苦笑を浮かべる、そんな感じがした。
とりあえず生エポについてひと段落したところで、最初から振り返る。
プロローグ、あの「じゃじゃーん」という音を聴いた瞬間に涙が溢れ出してきて止まらなかった。いや自分でも驚いた。恐らく漸くレミゼを観られたこととそもそも観劇が久しぶりすぎたことで感極まってしまったのだろうが、「何故今?これからだろうが?」と脳内で自分にツッコみながら囚人たちが働く姿に観入っていた。とにかく迫力が半端なかった。2階席まで彼らの熱が伝わってきた。そして司教様の優しさ。兄弟よと。バルジャンの心を溶かしたのだと。それから彼の独白。この辺りのシーンはひたすら双眼鏡で彼らの表情を眺めていた。去っていく背中が丸まっていて侘しい。
一幕。工場のシーン。事前にここでエポやコゼがいるという話を聞いていたのでひたすら生ちゃんを探し見つけこれまた彼女を双眼鏡で追っていた(基本生ちゃんが出ているシーンはひたすら彼女を見続けた。きっとこの先また観に来るだろうと思い、今回は第一目的である生エポに注目した。)。列になって座って作業している女たちのうち上手から2番目にいた。移動後は下手で他の女と肩をくんで笑っていた(気がする、記憶は曖昧)。
そしてファンティーヌ。美しい。ここでバルジャンが市長として出てきたはずだが悲しいかな私は気がつけなかった。ちなみに私が市長バルジャンを認識したのはシャベールに逮捕されそうになったファンティーヌを救うシーン。そこでバルジャン「どこかで見たことがある」ファンティーヌ「無実だったのに貴方のせいで」(ニュアンス)という掛け合いをやっていて「あれどこかで二人は出会っていたか…?」と思ってしまった。不覚。
閑話休題。夢やぶれて。ここでこうくるのかと。曲を聴いて感じる辛さが増してくる。どこかcatsのメモリーと通じるものを感じた。そして濱田めぐみさんは流石である。ロケットや髪を売るシーン、髪を売る際の躊躇と自分の髪への未練、更には自分の身体を売ってしまったことへの絶望感。それと対照的に騒がしい他の女たちに客の男たち。ひたすら胸が苦しかった(この後に前述のバルジャンとのシーン)。
バルジャンが荷馬車を持ち上げて下敷きになった男を救うシーン。崇め奉られる彼と彼を疑うジャベール。そして「バルジャンが捕まった」と聞かされ悩みに悩み、最終的に「24653」と歌い上げるあのシーン。胸の印を見せるその姿から目が離せない。
ファンティーヌの最期。やはり彼女は美しかった。バルジャンと抱き合って。バルジャンが「コゼットは守る」と約束して。目を開いたまま息を引き取った彼女の目をそっと閉じるバルジャン。本当に美しい絵だった。神聖な空気が流れていた。しかしそこでジャベールがやってきて対峙、一気に美しい場所から2人の張り詰めた空気感に。最後ジャベールを大の字に気絶させて逃げるバルジャンはやはり強し。
みずほらしい服を身に纏い天使のような歌声で雲の上のお城を夢見る幼いコゼット。本当に可愛い。対照的に水色の可愛らしい服に帽子を被って机の上でコゼットを見下すエポニーヌに母親ティナルディエ夫人。恐怖を訴えるも井戸で水を汲んでこいと追い出されるコゼット。とにかく辛い。あんなに小さな可愛い少女がと。ティナルディエ夫人を憎らしく思うがやはり宿屋の二人のシーンは賑やかでワクワクして面白い。一緒に馬鹿騒ぎしたくなる。そして森で出会ったコゼットに自らのマフラーをかけてあげるバルジャン。明らかに金を巻き上げようとしている夫妻。少し離れた上手側の階段でうずくまるコゼット。怒りが隠せないながらも金を支払いコゼットを引き取るバルジャン(因みにとても今更だがなぜ元囚人だった彼は市長にまでなれたのか。お金持ちになれたのか。逃亡生活でも裕福だったのか。不思議だ。)。彼がコゼットに服と人形を与えて抱き上げてクルクル回る様子はとてもあたたかくて、観ていて自然と笑顔になった。
その後満を持して成長したエポニーヌ登場。夫妻に「あいつがお熱なヤツ」(ニュアンス)呼ばわりされたマリウスも登場。ここのエポははすっぱな様子がありつつもひたすらに恋する乙女で可愛い。鈍感マリウスめ。そしてマリウスはバルジャンと逃げてきたコゼットにぶつかり謝る、目が合い明らかに恋が始まった瞬間を目の当たりにしてしまったエポニーヌ。切ない。切なさの極みすぎる。そこからさらに追い討ちのようにエポへコゼットのことを尋ね、終いには探してくるように頼むマリウス。好きな男に頼まれたら断れないに決まっている。「わかってない」これ以上切ないことなんてある?レベルで切ない。
ABCカフェにて。アンジョルラスがただひたすらに格好良い。正直ノーマークだったがここから私の双眼鏡が追う先にエポだけでなくアンジョルラスも加わる。Red and Black。格好良い。いつか相葉裕樹さん演じるアンジョルラスを観たい。そして民衆の歌。本当にこれは悔しいのだが、途中でエポとマリウスが人をくぐり抜けて前に出てくるシーンが印象に残っているもののOne Day Moreとどちらだったかを忘れてしまった。(Yahoo知恵袋で聞いたところone day moreらしい)
プリュメ街、恋する乙女なコゼットが純粋な乙女で可愛い。自分をコゼット呼びするのかと。本当に可愛い。エポニーヌに連れてこられたマリウスはコゼットに出会う。ここの門の陰から2人の再会を見ているエポが切なすぎる。その後ティナルディエが来たときエポしかいなかったのは、2人が家の中入ったからだったか。記憶にない。なんとか家の中に入れないように父親を脅して、甲高い悲鳴上げてティナルディエらを追い散らし、出て来たマリウスを連れて去るエポがとてつもなく格好良い。惚れてまうやろと。ちなみにここで門越しにコゼットと目が合うのがとてもしんどいポイントで、その表情を次見るときは是非とも注目したい。そしてその悲鳴を聞いて出てくるバルジャンに対し、「私の悲鳴よ」と隠すコゼ。やはり父親には隠したいお年頃なのだろうか。
ジャベールが来たと勘違いし逃げる覚悟を決めるバルジャン。そしてOne Day More。マリコゼ、テレビ番組だと向かい合わせで歌っている印象だったが、離れたバルコニーで歌っているとは。どこかウェストサイドストーリーのアメリカと似ている。「彼女と行くか~」のところで下に降りていて、上手側で座っているエポの隣で歌うのがまた酷だなと。そしてサビに行くにつれて2人が前へ前へと人の波を掻き分けて出ていくのがとても印象的。ここエポはマリウスを追いかけていたのか?もしそうだったら本当に泣けてくる。また別の観客に近いバルコニーで歌っているティナルディエ夫妻もいい味出している。
二幕。少年のふりをしてマリウスのそばにいようとするエポがなんとも健気で。頼みたいことがあると言われて嬉しそうな様子から一転、コゼへの手紙を託され流のだとわかった瞬間の落ちていく様に胸を締め付けられる。しかも家に行ったらバルジャンに「少年」と呼ばれて。髪の毛をおろしてハッとするバルジャンが印象的。そこで手紙読んでしまうのかとも思ったけれども。そしてここでくるかon my own。早いぞOMO。心の準備ができていなかった。今まで曲として聴いていた或いは音楽番組で観ていた印象では寂しさを紛らわしている、夢見て妄想している印象だったけれども、生エポはやさぐれている感が強いと思った。きっと根はいい子なのだろうなと言う感じである。
バリケード内、一瞬新しく入ってきたのがジャベールだと気が付かなかった。ガブロージュお手柄である。因みにガブロージュがエポの弟だと知ってはいたものの劇中すっかり忘れてしまっていた。次回はここの姉弟も注目したい。そしてマリウスを庇って撃たれるエポ。自分を庇ってくれた女に「手紙は?」と聞くマリウスもなかなかの強者。恵みの雨。頭の中に山崎育三郎さんと新妻聖子さんの様子が浮かんだ。愛する人に抱いてもらえて幸せそうなエポ。キスする寸前で息を引き取るのが最期まで切ない。そんな彼女の頭にキスを落とすマリウス。果たして彼は彼女の気持ちに気が付いたのだろうか。それにとても絵になっているにも関わらず彼にはコゼットという愛する別の女がいる。なんとも憎い男である。そして彼女は第一の犠牲者だったのか。
この先は少し順序が曖昧であるが、ガブが撃たれるシーン。最初歌声が聴こえなくなってハッとするも再び声が聞こえて姿も見えて安心したところで撃たれて。衝撃的だった。そしてジャベールを逃すバルジャン。「俺を殺すのが道理だ」に対して「俺はお前を恨んでいない」と言っていた気がする。とてもしんどい。疑り深く振り返りながらも去って行くジャベールを見届けた後、彼は上に向かって銃を発砲する。夜寝静まったシーンではマリウスを見て「彼を帰して」。コゼを託したいのだろうと。神に祈る神聖な雰囲気。
夜が明け銃撃戦が始まる。照明や音響、演劇の表現がふんだんに使われていて興奮した。演劇だ、と思った。アンジョルラスの最期、とても勇敢で格好良い。バルジャンがなんとかマリウスを助けようと下水道へ。ここで後ろのプロジェクションにトンネルが映し出され歩いている様子がよりわかりやすく表現されていた。漁るティナルディエ、ある意味勝者というか、ずる賢い奴は生き延びるというか。そして再び意識を取り戻しマリウスを運ぶバルジャンとジャベールの対峙。ここで自らバルジャンを逃してしまうジャベール。自分に生まれた迷いに葛藤し橋の上から身を投げる。ここの演出もプロジェクションを使っていて大迫力だった。
女たちがキャンドルで学生たちを偲び、そこへマリウスが来てキャンドルを拾い上げる。後ろには死んで行ったABCの仲間たち。命の灯火が消えた仲間たちはキャンドルの光を消す。象徴的な演出。マリウスを連れて帰ったバルジャンがどのように行動したのか、ジャベールに対しどう思っていたのか、ジャベールの死を知っていたのか、また逃げるつもりだったのか等が気になるところ。マリウスに話して自分の過去に向き合う。マリウスが「ジャンバルジャン」と呼ぶのが印象的。
マリウスとコゼットの結婚式。ひたすらに優美な世界。キスシーン本当にしているのかふりなのか。上手くマリウスの頭が客席側にきて見えなくなっているのがずるい。金持ちになったティナルディエ夫妻。本当にずる賢い勝者。宿屋の主人の再来である。そしてコゼットは本当に幸せな娘であると。因みに彼女はティナルディエ夫妻に気が付いたのだろうか。指輪を渡されて自分を助けたのがバルジャンだと知り、ドレス姿のコゼットを連れて会場を飛び出すマリウス。
弱り切ったバルジャン。置いてある燭台を見るとまた込み上げてくるものがある。天使のようなファンティーヌが彼を連れて行こうとした瞬間入ってくるマリコゼ。自分は実の父親ではないと打ち明けるバルジャン。その様子を見つめる実母ファンティーヌ。告白の手紙を渡し、いやよパパと泣きつくコゼの横で息を引き取るバルジャン。ファンティーヌとエポニひかれて神の国へ先に旅立った仲間達の方へ向かうバルジャン。中央で座りながら手紙を読むコゼットとマリウス。幕。
拍手の大きさが凄まじかった。あそこまで大きな拍手を私は聴いたことがない。まさにはちきれんばかりの拍手とはこういうことかと。実際に挨拶の際にもジャベール役の伊方さんが「企業さんから何か言われています?」と。因みに彼が話すことを忘れていた生ちゃんの横の人、手を繋ごうとしたら生ちゃんが「ホラ」みたいな感じで中央を見て「あぁ」となっていたのを私は見逃さなかったぞ。伊方さんも「ああ話すのか」と言っていたのもまたクスッとポイント。エポがアンジョに腕組まれて去って行ったのも最高だった。幸せそうな2人。どうか天国でエポは報われてくれ。
ストリートプレイが全く無かったのも印象的。