見出し画像

HPVを正しく知らNight Vol.1

 こんにちは。ハッチヘルスケア、インターン生の笈田です!
今回は、7/15日に行われたウェブセミナー「HPVを正しく知らNight Vol.1」のご様子をお届けします!

HPVを正しく知らNightとは

 本イベントは、子宮頸がんを啓発する目的で開催されたイベントです。

 第一部では横浜市立大学医学部産婦人科学教室教授・大学院医学研究科生殖生育病態医学主任教授宮城悦子氏によるHPVウイルスと子宮頸がんについての講義を、第二部では弊社代表小川貴史、ハヤカワ五味さんを交え、質疑応答を行いました。

スクリーンショット 2020-07-20 4.50.56

イベント開催の背景

 弊社は、HPVセルフチェックサービス「&Scan」をBtoBtoCに提供している会社です。

 「HPVウイルスは絶滅できる」「HPVウイルスをみんなで話してみる文化づくりを行う」、また「サイエンス・医療界と共に、足並みをそろえてこれからも子宮頸がんを絶滅させていこう」との3つの思いから、本イベントを開催しました。

HPVウイルスは、子宮頸がんウイルスとは異なる

 第一部では、「子宮頸がん予防とHPVワクチンについて、日本は今、国際的動きの中で何を問われているか」をテーマに宮城先生による講義が行われました。
 子宮頸がんは、95〜99パーセントの確率でヒトパピローマウイルスが原因により引き起こされ、性交渉により感染します。


スクリーンショット 2020-07-15 18.13.41

(本イベントスライドより)

 性交渉をするとHPVに感染することが多いのですが、自浄作用が働くため、HPVウイルスが検査で検出されない人が9割を占めます。残りの1割の人の中でも、細胞の上皮が変化する中異度形成、高異度形成を経て、子宮頸がんを発症するのは発がん性HPV感染者の1パーセント未満です。

 HPVウイルスを持っている=子宮頸がんを発症しているというわけではないのです。

 逆に、HPVウイルスには、一度でも性交渉の経験がある全ての女性に感染するリスクがあり、男女ともに啓発が必要です。

日本のHPVウイルスと子宮頸がんに対する現状

 ですが、日本での啓発運動は順調とは言えません。50歳未満の子宮頸がんの罹患者は増加し続けています。

 宮城先生のお話のなかでは、ワクチンを接種すれば9割もHPVウイルスへの感染を防ぐことができるとのことでした。ですが現状、日本のワクチン接種率は0.6パーセント、検診受診率は42.1パーセントで、これはOECDの平均、61.6パーセントを大幅に下回っています。

 WHOは、2030年度までに、15歳女性までのワクチン接種率を90パーセント、35歳から45歳の女性の子宮頸がんの検診率を70パーセント、子宮頸部病変を指摘された女性の90パーセントがケアを受けることができるとい目標を達成し、30年後には「子宮頸がんを歴史的書物の疾病にする」というビジョンを掲げています。

 しかし、日本ではそれがまだ十分に浸透していないのが現状です。

オーストラリアの子宮頸がん予防プログラムとは


 定期検診とHPVワクチン接種の双方が効果的に機能した国の例として、宮城先生からはオーストラリアの事例が紹介されました。

スクリーンショット 2020-07-15 18.24.06

 (本イベントスライドより)

 オーストラリアは、以前は子宮頸がんでの死亡率が日本よりも高かった国でした。

 ですが、1991年から18〜20歳から69歳までの女性に対する細胞診が2年ごとに行われるようになり、2011〜2015年の受診率は80パーセントを超えるようになりました。

 その結果、2017年にはHPVウイルス検査での陽性者のみに5年間隔で検診を行う緩やかな検診に変更されました。また、細胞診を拒否する女性については、自己採取のHPV検査のオプションも提供されています。

 HPVワクチンの接種については、2007年から12〜13歳女性への定期接種が開始され、2012年からは12〜13歳男性への学校摂取、14〜15歳男性へのキャッチアップ摂取も行われるようになりました。その結果、2028年には10万人のうち、子宮頸がん発症例がなんと、4例未満になるのではとの推測が行われているとのことです。

 オーストラリアが、なぜこのようにHPVワクチンの接種率と検診率を上げることができたのでしょうか。この背景について、宮城先生は、事前に啓発運動が行われたことが挙げていらっしゃいました。

子宮頸がんを「絶滅」させるために

 最後に宮城先生が考える、理想の子宮頸がん撲滅運動を紹介下さいました。

スクリーンショット 2020-07-20 4.55.41

(本イベントスライドより)

 それは、

①10歳からがんの予防教育が行われ、HPVワクチン無料摂取期間が性交渉を開始する以前の年齢で設けられ、定期接種化後も高い接種率維持を保ち、集団免疫を獲得する

②20歳からは細胞診による検診も行われ、30歳以降はHPV検査の陽性者には細胞診を行われる

という、HPVワクチンプログラムに成功している先進国の流れが、全世界に適応されることです。

 また、宮城先生が強調されていたポイントとして、SNSで指摘されることの多い、ワクチン接種に対する副反応に対しては、調査により「ワクチン接種と副反応に対しては、明らかな関連性が認められない」ことが明らかになっているとのことでした。

 最後に、宮城先生は、「子宮頸がんを絶滅させる」ためには、子宮頸がんについて、市民とメディア、行政・医療・教育・研究関係者の理解と協力をし、思春期から成人まで男女問わず継続的な教育・啓発を行っていく必要があるとお話になりました。


HPVウイルスと子宮頸がんに対する正しい理解のために

 第二部では、第一部での講義をもとに、質疑応答が行われました。

スクリーンショット 2020-07-20 4.52.22

(本イベントスライドより。スライド内画像は”Sex and the City","I FEEL PRETTY",Twitterより)

 HPVウイルスを持っていると分かった場合の、パートナーにどのように打ち明ければいいでしょうかという問いに対しては、「前提として、パートナーとHPVとがんの違いを共有するといいでしょう」とお答えになりました。また、パートナーが男性である場合は、「男性はHPVを持っていたとしてもがんになる確率は低い。持続感染をしていることが明らかになった場合、打ち明けるか・打ち明けないかは女性の自由でよいのでは」

 SEX経験があればワクチンの意味がないのではないでしょうか。という質問に対して、ハヤカワ五味さんは、「私自身、かかりつけ医にはワクチンの意味がないと言われたことがあります」とおっしゃいましたが、宮城先生はそうではないとおっしゃいます。

 宮城先生が理事を務める日本産科婦人科学会は46歳までは任意で接種できます。16型・18型の混合感染は少ないため、打ったらどちらかの型の予防することができるので、ワクチンを打つ意味はあるからです。しかし、SEX開始前だと効果的な9科ワクチンでは9割は予防が、現行の2科・4科のワクチンでも6割は予防することができると、SEX開始前のワクチン接種の重要性を宮城先生は改めて強調なさいました。またSNSなどで言われていることの多い、SEX経験あると発症率があがるというのは、デマですと断言なさいました。

 
 中咽頭がんも、HPVウイルスが原因なのでしょうかという質問に対しては、「HPVウイルスが関係しているものとしていないものがある。みながみなそうというわけではない。煙草が原因であることも多いです」とお答えになりました。


おわりに


 会の終わりに、宮城先生は、コロナウイルスへの感染を怖れて、病院に行って検診できない人もいる状況の中では、感度のよいセルフサンプリングの結果を表示すれば、日本でも自己採取キットがより浸透するのではないか、と自己採取キットの将来性を指摘なさいました。

 ハヤカワ五味さんは、「ワクチンをSEX経験がある人に打ってもよいのか悪いのかなど、婦人科の医師の中でも意見が分かれています。そのなかで、今回のセミナーを受けて、正しい情報や大枠を言えるようになりました」と、代表して感想を述べてくださいました。


画像6

【この記事を書いたのは】 インターン生:笈田萌衣 普段はHatch Healthcare株式会社で、noteの記事作成やPR活動を担当。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?