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HPV(ヒトパピローマウィルス)の発見とノーベル賞の歴史

今回は、子宮頸がんのワクチン開発の元となった研究についてお話したいと思います。

子宮頸がんは古くから研究されており、1970年代には性行為経験の有無が関与していることがわかっていました。しかしその具体的な原因はわかっておらず、多くの研究者はヘルペスウィルス(性器やその周辺に水疱などが形成される別の疾患の原因ウィルス)が原因だと信じていました。
後にHPVを発見しノーベル賞を受賞したHarald zur Hausen 博士もその一人でした。一方で、CRPV(ウサギのパピローマウィルス)がウサギにがんを引き起こすことが知られており、ヘルペスウィルス以外の可能性も示唆されていました。

多くの研究者は子宮頸がん細胞からウィルス粒子を分離しようと試みましたが、子宮頸がん細胞ではウィルス粒子が作られることはなくウィルスの同定は困難を極めました。そこで、Harald zur Hausen 博士は当時としては先進的な技術であるDNAハイブリダイゼーション法を研究に取り入れていたため、その手法を子宮頸がん細胞に用いたところ、前述のCRPVのヒントもありHPV16型およびHPV18型のDNAの検出に成功しました。
この発見によって、HPV以外でがんの原因となるウィルス(SV40やアデノウィルス)の同定にも次々と成功し、Harald zur Hausen 博士によるHPVの発見は世界中に大きな影響を与えました

Harald zur Hausen 博士がHPVを同定したことが、子宮頸がんの原因となる遺伝子の同定そしてHPVワクチンの開発へとつながっていきます。彼の功績は、他の多くのがんを引き起こすウィルスDNAの同定にもつながっており、ノーベル賞にふさわしい功績と言えます


Harald zur Hausen 博士

※CRPV(Cottontail Rabbit PapillomaVirusウサギのパピローマウィルス)について
ショープによってアメリカのワタオウサギ(Sylvilagus sp.)から発見された良性の乳頭腫(パピローマ)ウイルス。主にアメリカ中西部で見られる疾患ですが、その他の地域でも報告があります。この疾患は様々な種類のウサギに感染します。
ショープパピローマウイルスは細胞に感染して腫瘍化させ、皮膚を赤く、腫脹させます。後に角質化した角状のいぼになり、下記画像のように角の生えたウサギのような外見になります。


CRPVに感染したウサギ


参考文献
1) 「子宮頸がんの原因となるHPVの発見より今日まで」 医学のあゆみ 清野透(国立がんセンター研究所ウィルス部)
2) 「角の生えたうさぎは実在するか?乳頭腫」 MediRabbit.com http://www.medirabbit.com/JP/Skin_dis_jp/Viral/Papilom/Papillo_jp.htm


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