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24歳、一児の母で、役者です。


なんてタイトルを付けたけれど、

10年ほど休まず続けてきたお芝居をお休みして早1年以上。
正直、今の私はほぼ100%《お母さん》だと思う。

考えることはだいたいご飯のこと、気になるのは今日の天気と気温、
朝起きた瞬間に時間を逆算して、娘に合わせてスケジュールを立てる。
洗濯物がカラッと乾くと嬉しいし、検索履歴は大抵レシピだし、
時間を見つけたら幼稚園の予定を確認したり、家計簿をつけたりする。

完全にお母さん。

だから、最近ふと思った。

こんな慌ただしい毎日で、気絶するように眠る日々で、
しかも今よりももっと小さい娘がいて、

私どうやってお芝居してたんだ?

稽古、本番、いつも確かに余裕なんか微塵もなかったけど、
それでも、もちろん時間は作ってたわけで。

稽古に行く前に娘をお風呂に入れて、晩御飯を準備して、
仕事終わりの主人とバトンタッチする形で稽古に向かっていた。
終電近くまで稽古して、昼間は読めないからと深夜に台本を開いていた。
朝は娘に起こされるし家事は山積みだからゆっくり寝てられないから
ほとんど徹夜みたいな日が続く。
お芝居のための体力とは別に子育てのための体力も必要で。

そりゃもちろん、娘や主人、それから夜にならないと稽古場にこない私を許してくれるお芝居の現場をはじめとする周囲の協力なくしては
母親で役者なんて贅沢な二足の草鞋は履けやしないし、
好きなことをさせてもらっているんだから多少の無理くらい喜んでするべきところだけど、

分かっているけど言わせてくれ。

以前の私、凄くないか?

お母さん100%の生活にずいぶん慣れてしまった私は
果たしてまた以前と同じように出来るのだろうか?

ここ最近、一番の不安の種だ。

いつだって舞台に戻るための気持ちも覚悟もあるし、
早くお芝居がしたくて仕方がない、けれども。

以前の、本当に目まぐるしいあの日々の感覚をすぐに取り戻せる自信は
はっきり言ってあまりない!(はっきり言うことでもない。)

《お母さん100%》な日々の忙しなさは、あの日々の感覚とはあまりにも違う。
たしかに今も忙しないのだけれど、それでもおそらく、私の心はここ10年でもっとも穏やかなのだ。
鬼気迫ることがないというか、切羽詰まることがないというか。
稽古や本番の日々は短距離走で、今の毎日はゴールのないジョギングみたいな…違うか…。

とはいえ、私なんかの5万倍忙しいであろう方たちは今日もしゃかりきにお芝居をしている。

やるとなればやるしかないのでやるしかないんだろうけど、
不安だ。そんなことがふと不安に思えるほど、お芝居から離れてしまっていることも寂しい。
でも、愛は負けない。この1年以上、《お母さん100%》の日々でもお芝居のことを考えなかった日はない。だから、まだ役者を名乗る。

《24歳、母親で、役者。》
二足の草鞋を履きこなしたい。

でもって、今日も多分、《お母さん100%》。

コロナさんよ、私の草鞋のかたっぽ、早く返してくれ!


さいとうはる

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