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「コタツに入ってTVで観る戦争は最高」か。(後編)

TVは危機を煽ることで注目を集め、視聴率を高めることが利益につながる構造で、特にワイドショーはその典型。まったく注目しない人はご存じないかもしれませんが、ワイドショーは「くだらない不倫騒動」ばかりを報じているわけではなく、病気についても過剰に報じます。もしもワイドショーが伝えることが本当の危機ばかりなら、今回のような感染症の蔓延は毎年起きていても不思議ではありません。

とはいえお年寄りが病気に対して敏感なことは確かで、TV・ワイドショーは視聴者の関心事を熟知しています。逆に言うと、TV・ワイドショーを観れば日本の関心事をうかがい知れます。

いやいやTVなんてもう観ないし、それこそ老人の文化でしょう? と思うかもしれませんが、それは違います。貶めたいときには「TVはオワコン」などと言いますが、実際にはSNSの話題も多くがTV発のもの。金曜ロードショーのジブリアニメで盛り上がり、ネットメディアはNHKの朝ドラの展開を記事にし、SNSでもTVの報道番組に出た識者の発言が重んじられます。

パニック系の映画で「東京湾に怪獣が現れました」とTVが報じ、次のシーンではコンビニに客が押し寄せる。見慣れたそんな展開を「もうありえない」というにはまだ早く、ネットが普及し始めてからの映画では、それに続くかたちでネット掲示板やSNSで「あること、ないこと」が"つぶやかれる"シーンが加えられるようになりました。

連日放送中の、怪獣プチラの物語は、さぞ楽しいことでしょう。

プーチンと同じ発想が蔓延

フィクションのように見えてしまえば、完全勝利、大団円しか考えられなくなります。

結果、戦争が長引いた方が良いということを意味する意見が(それなりに)蔓延しています。もちろん直接そんな言い方はせず、両国の停戦を求める意見があればそれを批判するかたちです。とはいえ、ロシアによる占領状態を瞬時にゼロにできるわけがない以上、停戦の除外は戦争の長期化を意味します。

背景にあるのは「停戦してもロシアが占領していれば市民は虐殺されるから」という考えです。だから断固としてロシアは撃退せねばならない、と。ロシアがチェチェンやシリアでやってきたことを知っているからこその考えです。全然事情を知らない一般の人たちではなく、TV出演して"解説"するような有識者を含む、エコーチェンバーが震源のひとつです。

ロシアが虐殺するであろうことは、残念ながらそのとおりだと思います。現在考えられる解決手段は、結局どれをとっても大勢が理不尽に殺されます。まだまだ殺されます。停戦しても、しなくても。

ただし、戦争が長期化した方が被害者が減るということは、考えられません。なぜそこを見失うのか、ぼくにはわかりません。

ウクライナの人々の身を案じているようで、実はウクライナのことなんてどうでもいい。でも「この際だから、プーチンには消えてほしい」という本音だけは見え隠れする。

その考え方は、プーチンと同じです。

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