土管の謎
土管について、気になることがあるんです。土管とは、説明不要の『マリオ』シリーズでお馴染みの、あの「緑の土管」のことです。
あれって……本当に「土管」なんでしょうか?
もともと『マリオブラザーズ』(スーパーじゃない)の下水道らしきステージにあるものですし、これは「水道管」なのでは? と思ったのです。
まあ、マリオブラザーズにおいてこの管から水は一滴も流れませんが、カメやカニといった水辺の生き物がここに巣食うのことは、水がある場所や水があった場所であると思わせます。
もっとも「土管」だって、土を通すものという意味の名前ではありませんから、管のなかを通るものは水でもカメでもマリオでも、なんでもいいのでしょう。今、水があるかどうかはともかく、主目的として排水のために使われれば、それは「土管」でもあり「排水管」でもある、ということです。
だったら「土管」でも間違いではない、ということになりますけどね。
…
ところが!
上で画像の引用元にしているWiiU版『マリオブラザーズ』の説明を見ると、
と書かれています。
さらに、ファミコンミニ(ゲームボーイアドバンス)版でも、
このように「パイプ」と表記されています。
どうやら任天堂公式表記によると、あれは「土管」ではなく、「パイプ」のようです。なにー!?
手元にある辞書によると「土管」の項には、
と書かれています。
この「パイプ」は明らかに光沢のある金属製なので、これを土管と呼ぶのは間違いということで、任天堂は公式表記として「パイプ」にしているのではないでしょうか。
昔からパイプと表記されていたのかはわかりませんが、ぼくは子どものころからすっかり「土管」だと思ってそう呼び続けていました。友達も含めてみんなが「土管」と呼ぶから疑いもしなかった……ということで、"高橋名人の件"に続いて任天堂さんにも「ゴメンナサイ」をしなければいけません。ううう。
謎解きは続く
土管と呼んでいたものが実は土管でないことがわかると、見えてくることがもうひとつあります。『マリオブラザーズ』の舞台となる下水道らしき場所も、実は下水道ではないのかもしれません。
ぼくらがこの画面を見て「下水道だ」と思う最大の理由は、土管……じゃなくてパイプが途切れていることによります。水道(上水道)なら、途切れてしまっては役に立ちませんから、「途切れているということは、"排水管"だ」と脳内で勝手に決めつけているわけです。
現実でも道路のそばの山の斜面や、川横の段差に、地中に染みた雨水などを放水するための細い「排水管」が見えていることがありますよね。あれは概ねコンクリート製の「土管」ですから、途切れた管=排水管=土管と結びつけて考えてしまうのは実は自然なことだったりします。
ところが、ぼくが当時『マリオブラザーズ』で遊んでいたころにはマリオの職業が「配管工」だったことを知りませんでした。もしかしたらマニュアルに書いてあったのかもしれませんが、当時はマニュアルを読むまでもなく遊べる簡単なゲームが多かったこともあり、まったく記憶にありません。
あまりにも昔すぎるので、もう『マリオブラザーズ』の詳しい動作を覚えていないのですが、「敵」なんて重い言葉で表現されて暴力的に排除されるカメやカニたちは、べつにマリオめがけて襲ってくることはなかったと思います。なのにマリオが積極的にカメやカニを排除するというのは、配管工の仕事として、カメたちを駆除したあとで"パイプ"をつなげなければいけないのではないでしょうか。
特に、時代や地域にもよりますが土管は比較的脆く、強い水圧がかかる水道(上水道)には使われません。わざわざ金属製のパイプ、しかもツヤのある新品を使っているということは、上水道と見て間違いなさそうです。
そう考えると"あの場所"は、下水道ではなく、建設中のマンションの1フロアあたりなのかもしれません。
"答え合わせ"というわけではありませんが、最後に先ほどのWiiU版『マリオブラザーズ』の動画を観てみましょう。
う、うーん。
倒した敵が画面下端に落ちる際に、水しぶきがあがっているのがちょっと怪しいですね。いったいここはどこなんだ? と思う反面、「水」が近くにあることがこの場面でわかります。
また、敵を倒した数に応じてコインが現れるのも気がかりです。配管工が害獣を駆除した量に応じて歩合で賃金をもらえるとは思えません。彼らは配管工と偽って現地へ派遣されたハンターなのではないでしょうか!?
OSINTあそび
そんなこんなで、逆に謎が謎を呼んでしまったわけですが、今回の記事は「OSINTあそび」のつもりで書きました。
OSINT(Open-Source Intelligence)とは、一般に入手可能な情報を分析して事実を知ること。戦争においては当事国がデマを流すことが多いため報道が歪むわけですが、現地の写真や映像から断片的な事実を集めることで正しい情報を得られると期待され、もうじき開戦から丸2年になるロシアVSウクライナの件でとてもよく知られるようになりました。
ただ、逆に、ありもしないことに「気付いちゃった」結果も信じられやすい傾向があるようで、別種のデマや陰謀論発生の機会になっていることが少なくない点には注意しなければいけません。
日本でも昔の匿名掲示板や今の元Twitterには「安楽椅子探偵ごっこ」が好きな出不精さんが多くいて、デマに釣られて反射的に拡散するので困りものです。最近なら「タコ部屋疑惑」あたりでしょうか。たとえ加工されていない写真であっても、隅に写り込んでいるぼんやりした人影を「幽霊だ」というのは真実ではない場合があるのです。
なお、Wikipedia「マリオブラザーズ」の項にはこうあります。
真実を知るのは意外とむつかしい、ということだけは紛れもない事実なんでしょう。
このようにOSINTは遊びとして楽しむこともできますから、ゲーム化してくれれば、日本人の情報リテラシーは格段にアップするのではないでしょうか。
ぜひ任天堂に作ってほしいところですが、その主人公は必ずマリオにしてほしいと思います。だってそのゲームのタイトルは、『マリオシント』以外にありえませんからね。
(おしまい)