漢字Talk6.0
自分がメインで使い始めたのが、大体これくらいの世代(と言うと、私の年代も分かってしまうのだろうか)。
これ以前にも日本語環境はあったが。英語の豊かな表現力と比べて、日本語はあまりに貧相だった。以前のエントリーで書いた「様々なフォントが使えて画期的」というのは、初期のMacにとってはアルファベットに限定した話だったのだ。それが、漢字Talk6.0後半〜漢字Talk7になって、一気に日本語にとっても実用的になった。最も大きなポイントは、日本語TrueTypeの採用だろう。
フォントの形式には2種類あった。一つは「ビットマップフォント」もう一つは「アウトラインフォント」。コンピュータの文字は、結局のところ点の集まりで表現されているのだが。その点の集まりを、あらかじめ文字の大きさに合わせて全て準備してあるのがビットマップフォント。アルファベットなら凡そ100文字、10種類くらい大きさが違うフォントのデータを作っても、ファイルの大きさはたかが知れてる。なにより、データをそのまま使うだけだから、処理が軽い。難点は、巨大なフォントのデータは無いため、プリンターなどで印刷する場合にガタガタになってしまうこと。
一方のアウトラインフォントは、文字の形のデータをアウトライン=形作る線で持っており、大きなフォントが必要なら、その大きさに合わせて計算して作れば良い、という発想。難点の一つは、必要となる度に計算して全てのフォントを作っていては、コンピュータに負担を掛けて、処理が重くなってしまうこと(もちろんその対策をしていて、多くはビットマップフォントを併用している)。高精細なプリンターで大きな文字を印刷しても、写植に負けない綺麗な文字を印刷することが出来るのが最大のメリット。このアウトラインフォントをMacintoshで初めて実現したのが、Adobe Type Manager(略して、ATM)だ。ATMで大きな文字を印刷して、出てきた文字の綺麗さは感動的だった。
アウトラインフォントについては、ATMがオンリーワンであり、実質的にデファクト・スタンダードになっていた。けれど、Appleから見て「他社」に主導権を握られるのがよほど嫌だったのだろう。(確かMicrosoftと共同で)開発したのがTrueTypeだ。TrueTypeはシステムの標準に組み込まれていく。そうすると、わざわざ外部のソフト、ATMを導入して使う人は減っていき、廃れてしまう。
少し余談。個人的な感想だが。特に影付き文字はATMとTrueTypeでは外観が全く違っていた。ATMの方は影が右下にくっきりと現れるのに対して、TrueTypeだと申し訳程度に右下が太くなる程度で影っぽくない。だから私は、ATMの影付き文字のほうが好きだった。ATMが無くなったのは、とても残念。
ともかく。家庭用プリンターで印刷することが多かった私としては、安価で、しかも(システム標準で)互換性の心配なく使えるTrueTypeフォントというのはありがたいことだった。だから、日本語でもTrueTypeが使えるというのは、画期的だったわけだ。