USキーボードの薦め
その前に、JISキーボードの良い点をおさらいしておこう。
やや古い、すでに死語になりつつあるが、「NTT」に対して「ミカカ」という隠語。この語源は、JISキーボードで「N」と「T」に割り当てられたカナが「ミ」と「カ」で、かな入力のまま「N」「T」「T」と打つと、「ミ」「カ」「カ」と入力されてしまうことによる。JISキーボードを見れば、理由が分かる。
似たような話で、何かの掲示板のネタ的な話題。どこかの会場の様子を聞かれたことに対する返答で「キーボードのUから左へ、かなを読んでごらん」というものがある。自分はUSキーボードだったので、さっぱり意味が分からなかった。後にJISキーボードを見て、「なるほど!これは凄い!」と感心した。
ということで、JISキーボードの利点は以上。……いや、本当にその程度しか役に立つところがない。
USキーボードのメリットとして、キートップに余計な「かな」表記が無いのですっきりキレイ、というのは前述の通りだけれど。キーの配置、特に記号のたぐいの配置そのものによるメリットも大きい。たとえば「=」と「-」。キーボードショートカットとして「拡大」「縮小」が割り当てられることが多い。理由はUSキーボードを見ると分かる。「=」には「+」が刻印され、「-」のキーと隣同士で並んでいる。「+」を押すと拡大、「-」を押すと縮小、分かりやすいでしょ? それがJISキーボードだと、「+」と「-」が遠く離れていて直感的に分かりにくいし、「=」と「-」が同一のキーなのでショートカットとして機能しない場合もある。つまるところ、特に舶来製のアプリの場合、キーボードショートカットはUSキーボードを基準に作られている。
先に、Dvorak配列を推した。では、アルファベットが物理的にDvorak配列となっているキーボードは推さないのか? という疑問に対して、答えはNO。理由はキーボードショートカット。「やり直し」は「⌘+z」、「カット(Cut)(挙動としては削除)」は「⌘+x」、「コピー(Copy)」は「⌘+c」、「貼り付け(Paste)」は「⌘+v」。頻回に使うこれらのキーボードショートカットに使われる「zxcv」はいずれも、利便性とアルファベットの表意を考慮して、QWERTY配列で左下端のキーに割り当てられている。これはこれで便利なので、QWERTY配列での割り当てを評価する。ちなみに、Macの「Dvorak - QWERTY ⌘」という配列では、「文字入力はDvorak配列だが-⌘を押しながらだとQWERTY配列」という、いいとこ取りの配列が使える。だから物理的な配列はQWERTYのUSキーボードで良いのです。
キーボードの『真ん中』ってイメージしたことあるだろうか? アルファベットのキーで言うと「G」と「H」が、両手をホームポジションに置いた場合の真ん中になる。USキーボードならその通りに真ん中。しかしJISキーボードだと、少し左側に寄っているはず。大体、キーの大きさ一つ分。些細な違いかもしれない。けれど、画面を正中に座ったら両手を左にずらす姿勢になるし、手と体を真っ直ぐにするなら画面のやや左に座ることになる。それと同時に、トラックバッドが真ん中にある場合は、右手がトラックバッドに触れる部分が大きくなって、ポインターの誤動作の原因になったりする。それを見越して、日本製の(つまりJISキーボード標準搭載の)ノートパソコンの場合、右にテンキーさえ追加して、トラックパッドを大きく左に片寄った配置としている。JISキーボードの弊害だ。
キー全体が左に寄っているために、JISキーボードでは「改行(Return)」も遠い。両手をホームポジションに置いて右小指から「改行(Return)」まで、間に二つのキーがある。ホームポジションから動かさずに小指が広がる距離は二つ隣まで。つまり、「改行(Return)」は届かない。一方、USキーボードなら、間のキーは一つ。つまり、ホームポジションから動かずに小指で「改行(Return)」が叩打できる。ほんの1つの違いだが……これが遠い。
……というように、USキーボードの利点をさまざま紹介してきた。是非、USキーボードを試してもらいたい。