コ2【kotsu】対談 『中井祐樹の新バイタル柔術』出版記念イベント 中井祐樹×浜島邦明 第七回
『中井祐樹の新バイタル柔術』出版記念
対談 中井祐樹(JBJJF会長)×浜島邦明(JBJJF事務局長)
第七回「アップグレードする中井祐樹」
去る2018年10月31日、東京神保町・書泉グランデで、『中井祐樹の新バイタル柔術』出版記念対談が行われた。
今回、著者・中井祐樹の対談相手を務めていただいたのは、JBJJF(日本ブラジリアン柔術連盟)の事務局長・浜島邦明氏。奇しくも同連盟の会長である著者と事務局長の対談となった本イベントは、「発禁にならないことを願うのみ!」という中井氏の言葉から始まった。果たしてその真意は? 会長でありながら「自分は半分アンオフィシャル」と言う中井祐樹氏が本書と柔術の未来にに賭けた思いを連載でお届けする。
取材・文:コ2編集部
協力:書泉グランデ
アップグレードする中井祐樹
中井 この本、作りがとてもいいんですよ。『バイタル柔道』の日貿出版社ですし。『バイタル柔道』(岡野 功著)を読んでた人からするとニンマリ系なんです。
浜島 柔術やってた人間からすると、コラムが面白い。
新明 そう。コラムがめちゃめちゃ面白いんです。
浜島 コラムだけ追いかけて読んでいっても、読み物としてとても面白いんです。
新明 買った初日はそれで十分なくらい。
浜島 ほんとそう。
中井 盛ってない?(笑)
浜島 会長ではない、中井祐樹本人の考えがたっぷり書かれてますし。
中井 この前に同じ日貿出版社から、鈴木秀樹さんの『キャッチ アズ キャッチ キャン入門』 って出たじゃないですか。あれ、最初私は「バイタルプロレスリング」と評したんです。
『キャッチ アズ キャッチ キャン入門』(鈴木秀樹著 日貿出版社)ビル・ロビンソンから直接学んだCACCの技術を基礎から豊富な写真で解説した世界でも類を見ない技術書。
でもあとで「プロ」を抜いて「バイタルレスリング」と言い直しました。アメリカ的な考え方でいうと、サブミッションがあるのが柔術なんですよね。だからレスリング出身でUFCファイターのユライア・フェイバーとかも柔術をやってる。確か茶帯とってますよね。彼も強かったですよね。試合で道着を着ることはないけど、柔術をやっている。おそらくIBJJFに登録はしてないだろうけど、柔術そのものはそういう選手が出てくることで豊かになる。連盟が豊かになることはないだろうけれども。
浜島 ジョシュ・バーネットもノーギの世界王者ですしね。
中井 だから彼のことを柔術世界チャンピオンと言って紹介してもいいと思うんです。
新明 石井慧さんもワールドノーギにエントリーしようとしたそうです。黒帯でエントリーしたけど、本当は茶帯ってバレてできなかったって。
中井 茶帯じゃ相手が死んじゃうでしょ。
新明 グラップリング、相当強いですよ。
中井 まあ一回、チャレンジして結果残さないといけないってことなんだろうね。
浜島 でもジョシュ・バーネットはいきなり黒帯で出て、いきなり世界王者になりましたよね。
中井 まあそうなんですけどね。あれだけ実績あるから、誰かが黒帯あげるでしょう。まあ私みたいなのはこれから出にくいかも知れないけど、なんとかする道はあるでしょう(※)。まあ一回、出たら良いのかも知れないですけどね。柔術ルールって独特だから、柔道の大物でも勝てるとは限りませんし。彼に勝つとしたら、バックをするするってとって4点かっさらって4-0で逃げ切るとかでしょうね。
(※)石井慧選手は本イベント終了後に中井先生が黒帯授与し、無事に黒帯として柔術の試合に出場しました。
新明 過去のQUINTETの試合を見る限りではそんな懸念がいらないくらい強かったですからね。
中井 まあ話を戻すと、鈴木秀樹さんの『キャッチ アズ キャッチ キャン入門』が出た時も、バイタル柔道的な作りだったんですよね。
浜島 そういえばトークショーもされてましたよね。
中井 ええ。その時は別の出版社から『新バイタル柔術』的な本を出す計画がまだあったので、正式には決まってなかったんですが、改めて日貿出版社さんからお声がけ頂きまして。岡野功先生には申し訳ないんですけど、晴れて同じ日貿出版社さんから「バイタル」を冠する本を出させていただくことになったんですよね。で、ちゃぶ台を返すわけじゃないんですけど、本を出したことで一区切りついたので、これからは違うことをやろうと思います。
浜島 ほう!
新明 指導方針をアップグレードするそうで。
中井 もうここに書いたことをひっくり返しちゃおうと。
新明 僕も二日前に聞いてびっくりしました。
浜島 すみません。僕はまだ追いついてないです(笑)。
中井 私、そういうところあるんですよ。もう吐き出しちゃったから、次はどこに行こうかなってなっちゃう。『新バイタル柔術』をテキストにして、修正していくというわけでもないんです。この本は現時点での集大成なので15年前の『バイタル柔術』とは異なる、今の形で再編したものですから。前のものと似たものもありますが、だいたい今のものになっている。
浜島 会長は、会長ですよね?
新明 それは変えちゃダメですよ。国際連盟の会長から「お前は永久会長だ」って言われてるんですから。
中井 この本が理由でクビになったりしてね(笑)。
新明 では見せないようにしましょう(笑)。
中井 ただそうやって変えていくつもりなのは確かです。この本を出せたってことにはとても感謝してますしね。
新明 では10年後にまた、『新々バイタル柔術』が出たりとか。
浜島 10年後にまた写真を切り抜く作業をしてもらって(笑)
新明 この本、動画もほんとうに面白くて。QRコードでYouTubeのページに飛ぶんですけれども、これが本の写真を撮影しながら録画したものなんで、自然体の中井先生が見られる。それが良いと思いました。
中井 DVDとか作るときって、かしこまって固くなっちゃうじゃないですか。でもこれは普段のクラスみたいな感じなので、かえって面白いんじゃないかというのが編集サイドの判断でして。だったらそれで良いんじゃないかと。参考にもなるし。
新明 そうですね。クラスっぽい。そこも含めて、この本全部が中井先生の凝縮という感じ。これを読んだら中井さんがどういう人か分かる、という本ですね。
浜島 本当にそう。中井メソッドがギュッと詰まった。
中井 だからこそ違う道で生きていこうと(笑)。
(第七回 了)
書籍『中井祐樹の新バイタル柔術』
本書の詳しい情報はこちらへ!
現在、全国書店、アマゾンで発売中!
連載を含む記事の更新情報は、メルマガとFacebookでお知らせしています。更新情報やイベント情報などのお知らせもありますので、ぜひご登録または「いいね!」をお願いします。
–Profile–
●中井 祐樹 (Yuki Nakai)
なかい・ゆうき/本名同じ。ブラジリアン柔術家、元総合格闘家。 1970 年、北海道石狩市(旧・浜益村)生まれ。北海道大学法学 部中退。札幌北高校ではレスリング部だったが、北海道大学で 寝技中心の七帝柔道に出会い転向。七帝戦で北大を 12 年ぶりの 優勝に導き、4 年生の夏に大学中退。上京してプロシューティン グ(現在のプロ修斗)に入門、打撃技も身に付けて総合格闘家に。 1994 年、プロ修斗第 2 代ウェルター級王者に就き、1995 年のバー リトゥード・ジャパン・オープン 95 に最軽量の 71 キロで出場。 1 回戦のジェラルド・ゴルドー戦で右眼を失明しながら勝ち上が り、決勝でヒクソン・グレイシーと戦う。この時の右眼失明で 総合格闘技引退を余儀なくされたがブラジリアン柔術家として 復活。現在、日本ブラジリアン柔術連盟会長、パラエストラ東京代表。著書『バイタル柔術』(日本スポーツ出版社・絶版)、『希望の格闘技』(イースト・プレス刊)の他、『本当の強さとは何か』(中井祐樹・増田俊也 共著 新潮社刊)『VTJ 前夜の中井祐樹』(増田俊也著 イースト・プレス刊)などがある。