コ2【kotsu】対談 『中井祐樹の新バイタル柔術』出版記念イベント 中井祐樹×浜島邦明 第六回
『中井祐樹の新バイタル柔術』出版記念
対談 中井祐樹(JBJJF会長)×浜島邦明(JBJJF事務局長)
第六回「白熱のアマチュアQUINTET」
去る2018年10月31日、東京神保町・書泉グランデで、『中井祐樹の新バイタル柔術』出版記念対談が行われた。
今回、著者・中井祐樹の対談相手を務めていただいたのは、JBJJF(日本ブラジリアン柔術連盟)の事務局長・浜島邦明氏。奇しくも同連盟の会長である著者と事務局長の対談となった本イベントは、「発禁にならないことを願うのみ!」という中井氏の言葉から始まった。果たしてその真意は? 会長でありながら「自分は半分アンオフィシャル」と言う中井祐樹氏が本書と柔術の未来にに賭けた思いを連載でお届けする。
取材・文:コ2編集部
協力:書泉グランデ
柔道家が駆使するBJJ
中井 この10年ほどで完璧に常識になりました。彼らにとっては。ある時、他大学のメモを見ちゃったんですよ。すると「あの選手は右のデラヒーバが得意」とか書いてあるんですから。
だから黒帯の柔術家が七大柔道に行って柔道ルールでやったらボッコボコにされると思いますよ。柔術の技が分かった上で柔道で勝負してくるから。それやられたらおそらく全然通じない。トップ選手は別としても、大部分の黒帯は通じない。
それは逆もそうです。柔道家が柔道ルールで強いのは当たり前。でも柔道家が柔術ルールでやったってバック取られるだけじゃないですか。だから同じなんです。それでもし対戦しても、柔道家からは「彼らは下から返すのと、バック取るのがうまかったね。」って言われておしまいになりかねない。
だから『新バイタル柔術』は全国の柔術ジムだけでなく、柔道部やレスリング部にも浸透するようにしていきたい。
浜島 柔術、普及しすぎじゃないですか(笑)。
中井 ただ柔道のほうが強いって言ってるわけじゃないですよ。柔道出身で世界選手権のメダルに絡んでるのは塩田さやか君と大賀幹夫君くらいじゃないですか。湯浅君ももともと柔道部ではあるけれども。
ただ柔道出身者が少ないという現状を見ると、学生で燃え尽きてしまうという構図が見え隠れしますね。やっぱり新鮮な人のほうが最後までいってしまうという傾向がある。
ただ私が柔道出身だから、柔道を引き合いに出しやすいだけで、別にMMAでもいいと思ってます。
私が全部の格闘技は同じだという考え方だから、同じパラエストラグループの中に柔術のチャンピオンがいれば、MMAのチャンピオンもいるし、キックのチャンピオンもいる。キッズですがレスリングのチャンピオンもいます。
でも私がそれが当たり前だと思うんです。だってその人に合ったものをチョイスしたら、同じものにはならないはずですから。私は「それが君の見つけた柔術だから、格闘技だから」と送り出してしまいます。こういうやり方が物議をかもしたり、問題を起こすこともあるかも知れませんが、問題児と風雲児は紙一重ということもありますし。
浜島 僕はどうお答えすればいいのか。まだ立場を模索してるんですけど(笑)。
白熱のアマチュアQUINTET
中井 ところで今日は連盟からもう一人、中心人物が来てますので加わってもらいますか。新明佑介さんです。
新明佑介(以下、新明) 僕はどっちの味方につけば……?
※新明佑介さん(Shinmyo Yusuke)ブラジリアン柔術黒帯。イサミスポンサーファイター。トライフォース柔術アカデミーゼネラルマネージャー。日本ブラジリアン柔術連盟広報・渉外担当。QUINTETアシスタントプロデューサー。Amateur QUINTET実行委員。
中井 私のほうじゃなくていいですよ。
浜島 (笑)。
新明 お招きに預かりまして、ブラジリアン柔術連盟の新明佑介と申します。
中井 今日は広報の取材も兼ねてるんですけどね。せっかくだから語ってもらおうかと。
新明 はい。
中井 とりあえず今回出た『新バイタル柔術』が連盟公式の本と言えるものではない、ということが明らかになったんですけど。
浜島 いやいや、会長が出せばどんな本でも公式です(笑)。
中井 新明君にはBJJだけでなく、QUINTETなど色々関わってもらってますね。
新明 はい。先程グラップリングの話が出ましたが、グラップリングを盛り上げるのはやはりQUINTETじゃないかと思ってます。
中井 今度、全日本ノーギ選手権がありますね。QUINTETが盛り上がっても全日本ノーギが盛り上がらなければ、真の普及とは言えませんね。
浜島 結びついてないですね。
中井 あらー。
浜島 ノーギというより、柔術が盛り上がってる感がありますね。先日行われたアマチュアQUINTETも、出てきたのはほとんど柔術家でしたから。
中井 全日本柔術の参加者は500人くらい?
浜島 ええ。アダルトだけですから。
中井 で、全日本ノーギは50人くらい。
浜島 いえ、100人くらいは行ってます。
中井 世界選手権には3,000人くらい出てくるのが、ノーギの世界大会になると800人くらいって話ですよね。これは何年か前の話ですが、比率的にはアメリカのほうが多いですよね。やはりレスリングの国だから。そんな中で100人来るってのは健闘してますよね。
新明 はい。他にも色々な団体がグラップリング競技やってますけど、うちが一番出てますよね。
中井 そういう意味では、グラップリングが流行ってないと悲観するほどの数字ではないような気がしますね。出る人が道着を着ない人だったり、総合が主の人だったりするのも致し方ないのかな、と。ただ柔術の選手がどうやって食べていくか、という質問を受けたときに、優勝しても賞金が出ない、ということが絡んでくる。
浜島 今後、出しますよ?
中井 あ、言っちゃった。
浜島 言っちゃまずかったですかね?
中井 出る大会は出る、ということですね。賞金が出るフラッグ大会が出てくる。
新明 RIZINを冠した柔術大会ではベルト出したりとか(笑)。
浜島 あのベルト? めちゃくちゃ高いらしいですよ?
中井 まあベルトを出したいって人もいますよね。そういう賞品というのもアリですよね。
浜島 話を戻すと全日本ノーギ選手権よりも、アマチュアQUINTETの方が出場者多かったんですよね。
新明 そうですね。225人出てましたんで。45チーム。
中井 それは強い人を呼ぼうとみんな頑張るからですね。「頼むからうちのチーム入ってよ」「しょうがないなー」という感じで。日本人、誘われると断れないですから。
新明 5人いれば責任も分散されますからね。
中井 ハロウィンじゃないけど、みんなで騒げば怖くない的な。だからQUINTETのほうがノーギより出場者が多いというのも驚きましたけど、頷けるところもありますね。
新明 団体戦って日本人に合うんですかね。
浜島 事務局長としてはびっくりしました。
新明 裏方は本当に大変でした。
中井 あんなに盛り上がったのはADCCの予選以来じゃない?
新明 あー。品川でやったときの。
中井 八隅孝平と五味隆典がやった時(※編注)の。
※編注 2000年のアブダビコンバット日本予選。八隅孝平がポイント4-0で勝利。世界大会進出を決める。
新明 会場に入り切らないほど人が集まって。その位の盛り上がり方でしたね。
中井 コンバットレスリングの最初の時期も良かったですね。
新明 あー。そうですね。
中井 強い人がでる大会だったし。佐藤ルミナ対今成正和とかもありましたから。
新明 僕も出てます。
中井 ただ言ってみればQUINTETも柔術の一つの形だと思うんです。ルールは違いますが、大きな枠で見れば私にはそういう風にみえる。そうやって色々なパターンのものができてきて、みんなでシェアするという社会が重要じゃないかと思うんですよね。
浜島 連盟としては、あまりうちのスタッフをこき使わないで欲しいんですが(笑)。
中井 会長が本を出せば非公式本だし(笑)。スタッフは大変だと思うんですけど。
(第六回 了)
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–Profile–
●中井 祐樹 (Yuki Nakai)
なかい・ゆうき/本名同じ。ブラジリアン柔術家、元総合格闘家。 1970 年、北海道石狩市(旧・浜益村)生まれ。北海道大学法学 部中退。札幌北高校ではレスリング部だったが、北海道大学で 寝技中心の七帝柔道に出会い転向。七帝戦で北大を 12 年ぶりの 優勝に導き、4 年生の夏に大学中退。上京してプロシューティン グ(現在のプロ修斗)に入門、打撃技も身に付けて総合格闘家に。 1994 年、プロ修斗第 2 代ウェルター級王者に就き、1995 年のバー リトゥード・ジャパン・オープン 95 に最軽量の 71 キロで出場。 1 回戦のジェラルド・ゴルドー戦で右眼を失明しながら勝ち上が り、決勝でヒクソン・グレイシーと戦う。この時の右眼失明で 総合格闘技引退を余儀なくされたがブラジリアン柔術家として 復活。現在、日本ブラジリアン柔術連盟会長、パラエストラ東京代表。著書『バイタル柔術』(日本スポーツ出版社・絶版)、『希望の格闘技』(イースト・プレス刊)の他、『本当の強さとは何か』(中井祐樹・増田俊也 共著 新潮社刊)『VTJ 前夜の中井祐樹』(増田俊也著 イースト・プレス刊)などがある。