もっと!保健体育 第一回 「ロルファー・藤本靖さん」
この記事は無料です。
中学生の時、保健体育はナゾでした。なんとなくエッチな感じがあって、でも真面目な顔をして先生は講義をしているし……。
その当時から体育が大好きだった私は、いまでも身体のことに興味があります。ただ、その頃のナゾだとかエッチな感じだとかそんな曖昧なことではなく、もっと身体のことを知って、大人になった今だからこそ、改めてこれからの人生を一緒に生きていく自分の身体と、もっと仲よくつきあいたいと考えています。
そこでこの連載では、私・伊東昌美が身体についてのセミナーやワークショップに参加して、それなりに自分の身体を使ってきた今だからこそ必要な、“保健体育”についてご紹介していきたいと思います。
それでは「もっと!保健体育」のはじまりです!
伊東昌美のもっと!保健体育
第1回 ロルファー・藤本靖さん
from 第9回身体感覚セミナー「ハラでつながる会」
文・イラスト●伊東昌美
記念すべき第一回は、
身体感覚セミナ・ハラでつながる会!
今回受講したセミナーは、11月23日(日)、東京・青山で行われた、第9回身体感覚セミナー「ハラでつながる会」です。こちらのセミナーは、生命と身体をテーマにした、“リトルサンクチュアリ”というサイトを運営する長沼敬憲さんが主催したものです。
長沼さんは、書籍の編集兼執筆者として活躍されている方で、武道家の甲野善紀先生と骨ストレッチの松村卓先生の対談本『「筋肉」よりも「骨」を使え』、『生きる。死ぬ』(土橋重隆・玄侑宗久 共にディスカヴァー・トウェンティワン刊)をはじめ、数多くの本の企画編集をされているほか、ご自身でも、『腸脳力』、『実践!腸脳力』(共にBABジャパン刊)といった、身体と心の関係について本をお書きになっている方です。
今回のテーマは、「膜」ということで、ゲストにロルファーの藤本靖さんを迎えて、身体のなかの“膜”から、人間関係にもある“膜”について、お二人のトークライブとなりました。
途中ワークを挟みながら行われたこのセミナーは中身がギッシリで、とても一度でおさまるセミナーではありませんでしたので、第1回を藤本靖さん、第2回を長沼敬憲さんということで2回に分けてレポートしたいと思います。
ロルファー・藤本靖さん登場!
藤本靖さんは“身体をゆるませる”ということの達人です。
ロルフィングというアメリカ生まれの整体を学び、ロルファーとしてクライアントさんの身体から自己調整力を引き出すという仕事をされています。また、ワークショップも朝日カルチャーを中心に数多く開催されていて、自分でセルフケアできる方法や、自分の身体が持っている能力や機能などについて教えている方です。
ご著書も、『身体のホームポジション』(BABジャパン)をはじめ、『「疲れない身体」をいっきに手に入れる本』(さくら舎)、『1日1分であらゆる疲れがとれる耳ひっぱり』(飛鳥新社)などがあり、私は、『耳ひっぱり』ではイラストを描かせていただきました!
「ロルフィング」「ボディーワーク」というと、聞いたことがない方も多く、なんだか難しそうに思う方もいるかもしれません。でもそこはご安心を。藤本さんは、わかりやすくて誰でも簡単にできる身体についての“コツ”として紹介してくれるので、すぐに実生活に役立つのが魅力です。
たとえば先ほど紹介した本のタイトルにもなっている“耳ひっぱり”というワークは、耳を軽く(本当に軽〜くです、1ミリ〜2ミリくらい)引っぱるだけのものですが、それだけで全身がゆるんできます。1分くらいやればいいだけのワークなので、「疲れたなぁっ」と感じるたびにちょっとやればOK!ほどよくゆるんだ身体を持続するとができます。
私も仕事で疲れてきた時によくやっていますが、頭の中がとてもすっきりします。
今回のセミナーで藤本さんは、“竹ひご呼吸”と“ストロー呼吸”という簡単ワークを紹介してくれました。イラストにもあるとおり、どちらも簡単にできますのでぜひ試してみて下さいね。
実際にストロー呼吸をすると、私の場合は背中が特にゆるみました。
こういった簡単ワークを実践することで、
「身体がゆるむって、どんな状態なの? どんな感覚なの?」
ということを実際に体感することが、とても大切なんだと私は思っています。
なぜなら「自分の身体が喜ぶ」と言うのはどんな感覚なのか?ということを体験できることで、自分の身体といっそう仲よしなれるからです!
それこそが、この「もっと!保健体育」で、みなさんといっしょに探していきたいところだと思っています。理論よりもまず身体の感覚! 歳をとっても元気で輝いている人は、身体のことを大事にしつつ、いつまでも自分の身体が秘めた可能性を追求しているからではないでしょうか? それは大人になっても、いえ、大人になったからこそ大事なことなんだと思います。
筋膜は身体を分けるラップ?
さて、今回のセミナーのテーマの「筋膜」。なかなか普段は耳にすることのない言葉ですが、藤本さんは筋膜には、「二つの役割がある」と言います。以下は藤本さんの説明。
「筋膜というのは内臓や筋肉を包む膜のことで、この膜によって体中がつながっています。筋膜の役割は二つ。一つはスペースをつくるということ。筋膜に包まれることによって各器官は居場所が確保され機能することができるのです。そしてもう一つはつながりをつくるということ。筋膜によって包まれた器官と器官は、さらに筋膜によって包まれます。そうしたことでそれぞれの器官が孤立したスペースを保ちつつもつながり、身体全体として動くことができるのです」
ちょっとわかりにくいこの説明を、藤本さんはラップを使って解説してくれます。今回のイラスト(一番最初のものです)に描いてみましたので、これでなんとかイメージしてみてください。
見ていただくとわかる通り、人間の身体は筋肉や内臓が“筋膜”で小分けにされていて、だからこそ、それぞれの中身が他を邪魔しないで別々に働いて、みんなで「身体を動かす」という一つの目的を達成しているわけです。
人間の身体の全体性というか、統合性という視点から考えると、筋膜というのはとても重要な働きをしているんですね〜!!
筋膜センサーが働いた、弛んでるけど、冴えた状態
そしてもう一つ、筋膜にはセンサーという役割があって、ソフトな刺激(そっと触れるなど)を受けると、センサーが活性化して働き出すというのです。
(この理屈をくわしく知りたい方は、藤本さんの「身体のホームポジション」を読んでくださいね!)
とっても大ざっぱに説明すると、この筋膜センサーが身体のあちこちにあって、身体の一部分をやさしく触ると、それに反応して、
「身体がゆるんできたよ〜。楽に動かせるよ〜」
という情報が、ピコンピコンと身体中に伝わっていくということのようです。
筋膜に働きかけると、触っていない別の器官がゆるんでいくのはそのためなのですって!
藤本さんは、筋膜センサーが働いている状態を、「膜の流動性」という言葉を使って説明していました。
さて、ここまで「ゆるんでいることが大事」と書いてきましたが、これは「だら〜」っとしていることではありません。
藤本さんも、
「身体がゆるむということと、だらけるということとは違うんです」
と説明されます。
この、「ゆるんでいる状態」と「だらけている状態」の違いは、先ほどの筋膜センサーが働いていて、いつでも動き出せる状態があるのか、ないのかの違いだと言えるでしょう。
例えばコタツやソファでボヘ〜ッとテレビをみている時、これはたぶんだらけてますよね。逆に、仕事をする時には弛緩モードから緊張モードに変わります。モードが変わるのは別にいいのですけれど、緊張し過ぎで眼が疲れたり、肩がこってたりしていてはNGです。
ここで言っている「身体がゆるんでいる状態」は、身体は力みがなくゆったりとしていて、しかも頭はすっきりと冴えている、そんな状態です。この状態を維持するためには、「筋膜」を上手にコントロールすることが大事になるわけです。こう書くと、随分難しいようですけど、方法は簡単!先ほど紹介した耳ひっぱりや竹ひごやストローを使ったワークでOK。実際に試してみて、ちょっとでもスッキリした感覚があったら、それが筋膜が目覚めて、身体がいつでも動き出せる余裕をもったゆるんだ状態なのです。
藤本さんの講義は、解剖学的に専門家だけがわかるものではなくて、こういう普段使いに応用できて、とても“面白ためになる”ものなので、ぜひ、みなさんもイラストを参考に試していただければと思います。
さて、今回ご紹介した『膜をつながりとしてとらえる』という考え方は、今回のワークショップを主宰され、藤本さんといっしょに講義をされた長沼敬憲さんも同じ考え方のようでした。次回はその長沼さんについてです。
(第一回 了)
-- Profile --
著者●伊東昌美(Masami Itou)
愛知県出身。イラストレーターとして、雑誌や書籍の挿画を描いています。
『1日1分であらゆる疲れがとれる耳ひっぱり』(藤本靖・著 飛鳥新社)
『舌を、見る、動かす、食べるで健康になる!』(平地治美・著 日貿出版社)
と、最近は健康本のイラストを描かせてもらっています。
長年続けている太極拳は準師範(日本健康太極拳協会)、また足ツボの免状取得、そしてクラニオセイクラル・セラピーというボディワークも学び、実践中。健康についてのイラストを描くことは、ワイフワークとなりつつあります。自身の作品は「ペソペソ」「おそうじ」「ヒメ」という絵本3冊。いずれもPHP出版。
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