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瞬撃手が解く、沖縄空手「基本の解明」 第七回 「立ち方」

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数年前から急速に注目を集めた沖縄空手。現在では本土でも沖縄で空手を学んだ先生も数多く活躍すろとともに、そこに学ぶ熱心な生徒も集まり、秘密の空手という捉え方から、徐々に地に足の着いたものへと変わりつつある。ここでは、多年に渡り米国で活躍し、瞬撃手の異名を持つ横山師範に、改めて沖縄空手の基本から学び方をご紹介頂く。


瞬撃手が解く、沖縄空手「基本の解明」

第七回 「立ち方」

文●横山和正(沖縄小林流研心国際空手道館長)


立ち方に秘められた空手の基本

 空手の稽古には、閉足立ち、外八字立ち、前屈立ち、他、多くの異なった立ち方が伝えられています。

 空手という武道が立った状態を前提にした戦う技術と、そのための稽古体系から成り立っていることを考えれば、その土台ともいえる立ち方が非常に重要であることは間違いありません。
 しかし、いくら立ち方が大切とはいっても、空手の場合、ボクシングやレスリングといった西洋の格闘技や柔道・剣道といった日本武道やスポーツに比べても、その特徴的な立ち方と様々な種類が明確な形をもって伝えられているところが、他の格闘技・武術とは異なり特筆されるところです。

 こうした様々な立ち方の指導や実際の動きは、スポーツや格闘技というより、舞踊やヨガ、気功法などの健康法に近いイメージかも知れません。
 しかし、一方で空手の源泉である中国武術やインドのペンチャク・シラットなどのアジア圏の伝統的武術には、やはり空手同様の立ち方が多く用いられ、それぞれに様々な立ち方が伝えられ、鍛錬法や型(套路)、技術が実践されていることを考えると、空手の立ち方もまた、その成立当初から今日まで、何かしらの目的や効果があるからこそ、伝えられて来ているものといえるでしょう。

 そこで今回は、空手における“立ち方”の考察をおこなって行く事にしましょう。


立ち方は空手の土台をなす

 人間が二脚直立動物であることから、その生活は“立って歩く=移動する”ことから成っています。こうした移動は、

開始姿勢

移動

終了姿勢

 といった循環で行われています。

 当たり前過ぎて見過ごしてしまいがちですが、こうした移動の瞬間瞬間には、絶えず姿勢と重心の関係に変化があり、さらにきめ細かいコントロールが要求されるスポーツや武術の世界では、高度かつ特殊な移動能力が要求されることになります。そうした世界では、現代人にとっては生まれ持ったスタンダードな機能だけでは、扱いきれない重心移動も出てくるでしょう。

 空手の習得の根幹を成す型の訓練は、人間が立った体勢で移動することによって、身体や技を練ってゆく訓練法ですが、この型のなかで行われる如何なる動作のなかで最も要求され養われるのが“立ち方”であると言えます。
 前回の“歩法と蹴り”にも関連するところですが、突き蹴りといった技術は原則的に全て移動の中で行われる体の動きから生まれるものであり、型の開始から終了までの流れもまた動きの中で如何に姿勢を保ち、言い換えれば“如何に立ち続けられるか”ということが問われているのです。

 空手に伝わる立ち方の種類は、先にも触れたように他のスポーツのそれと比較しても多くの種類が存在します。
 例えば、動き始めの”開始姿勢”をとっても、一般的にスポーツの世界でも“構え”に類するものはありますが、それらの多くは“腰を落とす”という重心の安定と目標に向けた集中状態を作り、その後は各々のルールに適した動き方へと注意のポイントが変わっていきます。
 それは空手と同じ格闘技でも、競技化されているものについて言えば、空手ほど多くの異なった立ち方を設定しているものはほとんどないでしょう。
 その理由はスポーツ競技の基本は、ルールの中で想定されることに対して洗練度を磨くことが優先されるものであり、逆に言えばそれはルールの上で不必要な事柄を極力省いてゆくことが優れたトレーニング法と言えるからです。

 空手もスポーツ格闘技のいちジャンルにあてはめるのならば、確かにワザワザ余分な立ち方を伝える必要はありませんし、極論をすれば型の訓練も不必要と考えることもできるかもしれません。
 しかし、ここで紹介している沖縄の空手は、そもそも競技の発想のない古典的な武術の概念を基に継続されてきた訓練法を指しているものであり、そこにはやはり空手が空手として成り立つ独特の価値観と効果が存在し、それに則した優れた体系が秘められているのです。

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