UFOは機械ではなくて意志ある生命体
その日が誕生日だったにも関わらず
遥香は失恋してしまった。本当は
楽しくあるべき時に、悲しい事があると
悲しみは2乗されるかのようだった。
「悲しくて悲しくて死にたい
空から何か降ってきてゴツンと
そのまま死ねたら楽なのに・・」
そんな遥香の願いが叶ったのだろうか。
空から何かが降ってきて遥香の頭に当たった。
ゴツン!
と言っても、降ってきたのは手の平に
納まるほどの小さな軽石だ。
遥香は頭にコブはできたかもしれないが、
さほど痛くはなかった。
痛かったのは、むしろ石の方だったようで
地面に落ちた石はパクッと二つに割れた。
その中から桃太郎ならぬ石太郎が出てきた。
顔はヒヨコのような顔をして
金色のボディースーツを着たヤツだった。
「こんにちは・・・さみしそうだね・・・
プレゼントするよ」
「うれしいけど・・・あなた・・・誰?」
「君たちが言うなら、宇宙人かな」
「へえ、宇宙人ってヒヨコのような顔した小人だったんだ。
タコみたいなカッコしてると思ってたわ・・・
で?何くれるの?」
「この石だよ」
「ただの軽石じゃないの?」
「ちがう・・ちがう・・・この石をね・・コネて・・
吹いて・・・コネて・・・してごらん」
遥香は宇宙人が言うとおりにコネて吹いてコネてしていたら、
石はだんだん大きくなって、あーら不思議
キラキラ光る空飛ぶ円盤になった。
「わあー、すごい。でも、私、バイクの免許は
持ってるけれど・・空飛ぶ円盤の免許は
持ってないよ」
「心配ない。この円盤は意志を持つ生命体だ。
しかも、コネて吹いてコネて吹いてしてくれた人に
限りなく愛情を感じる」
「へえ、じゃあ、自分で飛んでくれるのね・・・
私がアメリカに行きたいと言えば・・・
ハイハイどうぞって」
「そう・・」
と言うわけで、遥香は失恋の憂さ晴らしに空飛ぶ円盤で
世界一周旅行した。
もちろん、空飛ぶ円盤が飛び回ったわけだから、
遥香が行ったあっちの国こっちの国では、
UFOが出たとか見たとかで大騒ぎになったのは言うまでもない。