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夏のサンタ。実は世の中の大半はちょっとだけ専門性の高い技術を持っている人がちょっとだけ工夫すればとんでもないことになることが多い。
「俺、サンタクロースは本当は泥棒だったと思うんだ。
だって、そうじゃないか?煙突から入ってくるなんて・・・」
と言う孝史は電気工事会社に勤めている。
孝史の今日の仕事は、地下鉄の駅の廃線のチェックだ。
終電が走り終わった後、始発電車が走り始めるまでの間に
チェックをすまさなくてはならない。
「俺たちが泥棒なら、駅の自動切符販売機なんてイチコロさ」
孝史は冗談を言いながら、2人の仲間と作業を進めていた。
地上は真夏でも、人気のない地下鉄のトンネル構内はヒンヤリとしている。
そんな孝史たちが作業を終えて、最終チェックをしようと
していた時、孝史は不思議なことに気づいた。
さっき消したはずの電気室の電灯がついていたのだ。
「おい、さっき消したよなあ」
他の二人に確認すると、
「たしかに消したぞ」
と言う。
「おかしいなあ」
とつぶやきながら、孝史が電気室の中を見回すと赤い人影が
チラッと見えて隠れた。
「今は、夏だよなあ・・・サンタクロースのわけないしなあ」
ブツブツ言う孝史に他の二人が
「錯覚だよ・・・おまえ疲れてるんだよ」
と言ったので、孝史は仕方なく電気室の電灯を消して立ち去った。
数日後、孝史は新聞を見て驚いた
”連日地下鉄の自動券売機荒らされる。犯人は未だ見つからず”
この記事を見てひょっとしてと思った孝史は、警察に電気室であったことを話した。
「地下鉄のトンネルの中には、たくさんの小さな電気室が
あります。でも、人が隠れることのできる所は限られています」
孝史は、作業用の地下鉄図面をチェックして見せた。
翌朝の始発前に犯人は捕まった。
案の定、犯人は孝史がチェックした電気室に潜んでいたのだ。
担当の刑事は上機嫌だった
「いやあ、おかげで逮捕できたよ。犯人は赤いボディスーツを着た女だったんだ。
彼女は地下鉄に出入りしている空調会社の元アルバイトだった。
会社を辞めるときに図面を持ち出してたんだ。でもね、不思議なんだ・・・
どうして目立つ赤いスーツなんか着てたのだろう?」
孝史は笑って言った
「赤はスリルを感じさせる色なんですよ。その女の人も、
たぶんお金じゃなくて、女泥棒のスリルがたまらなかったんですよ。
スポーツカーの赤の事故率が高く、スピード違反が多いのも同じですよ。
サンタクロースだって赤い服着ますしね」
「はあ?サンタクロースは泥棒じゃないだろう?」
刑事はよく分からないとばかりに首をかしげた。