背中から見たら、よく分かる。12月21日
学生時代、ビルの守衛のアルバイトをしていたことがある。
平均年齢が60才前後の集団の中で
20才の若造が一人入ったものだから、
息子のように可愛がられた想い出がある。
毎晩2人でペアを組む。
ビルの巡回の前に、少し時間があったので
宿直室で、その晩の相方のUさんと話をした。
Uさんは一番のベテランだった、
60才まで自営で解体業をやり、
その後8年間、そのビルで守衛をやっていた。
残業を終えて帰って行く経営者やその社員を
見ながら、面白いことを教えてくれた。
「わしも、若いころから、10人くらいの人を使って
商売やって来たから、言うやけど、
こうやって見ていると、
どこの会社が儲かってるか、
儲かってないか分かるんや。
アンタ若いから、教えてあげるけど、
道を歩いている姿が一番人目につくから、
気を付けや。
道をしゃんと歩けぬ人は、人の上に立てへん。
背中から見たら、よく分かる。
首が曲がってたり、
猫背になってきてる社長の会社は
危ない。
雇われかて、同じや。
そのうち、クビになる。
ワシは解体屋や、つぶれた会社の
社長や社員は山ほど見たしな
アンタは何になるか知らんけど、
時々、大きい鏡で自分の姿勢見とくんや
しゃんとしてたら、必ずいいことある」
それから、1ヶ月後、70才近くになるというのに
Uさんは、泥棒を捕まえて表彰された。
彼の背中は、いつもスーッと伸びていた。