伝説の名力士、双葉山の時代ですが、名寄岩って力士がいましてね。子供のメンコにまで印刷されて大変な人気だったんですよ。北海道の名寄から出てきて大変な努力して、頭の毛が無くなって髷が結えなくなるまで相撲とった人で・・・5月12日
たしか、小学校1年生の頃だったと思います。
私は、ある記録映画を見ました。
かなり古い記録映画で、主人公はお相撲さんでした。
話の内容を、おぼろげながら拾ってみますと
食うや食わずの貧乏長屋で育った力自慢の少年が
「腹一杯めしを食べさせてやるから」
と言う条件で新弟子として東京に出て行きます。
蒸気機関車に揺られ船に揺られ、長い長い旅の末です。
努力の甲斐あって彼は、大変な人気力士となって活躍します。
しかし、だんだん年をとって力が衰えて行きます。
けがをしたり、病気をして入院したりもします。
どんどん番付が下がっても、また這い上がります。
「もう引退したら」
という周囲の声を振り切って相撲をとり続けます。
とうとう髪の毛も無くなり髷(まげ)も後ろの髪を前に持ってきて、
やっと結えるような状態になるまで
現役で頑張ったという感動の話でした。
30年近く前で、しかも私が子供の頃で、
その頃でもかなり古かった映像が、
今でも頭に残っています。
その力士の名前は「ナイルイガワ」、
当時の私には、そう聞こえたのです。
だから、相撲好きの父に
「好きなお相撲さんは誰や?」
と聞かれると、
相撲と言えば貴の花(先代)しか知らなかった私が
「貴の花とナイルイガワや」
と答えたものです。
しかし、父は、
「ナイルイガワ?そんな力士は、今はおらん。昔の人か?」
と、聞かれても、私も分かりません。
「人気があって強かったんや」
と、言い返すだけで精一杯でした。
「ナイルイガワ?」
ひょっとしたら、
架空の力士だったのかもしれない。
そうも思ったこともありました。
そして、そんな記憶も頭の隅に
置き忘れていたのでした。
それが、つい先日です。
何気なしに聴いていたカーラジオで、
20世紀の心に残るスポーツ選手
という特集番組をやっていました。
「野球ならば長嶋や王・・・・・、
サッカーなら釜本や中田・・・・・、
相撲なら双葉山・大鵬・北の湖・・・
千代の富士ですねえ、あ、忘れてはいけな
いですが、双葉山の時代ですが、
名寄岩って力士がいましてね。
子供のメンコにまで印刷されて大変な
人気だったんですよ。
北海道の名寄から出てきて大変な努力して、
頭の毛が無くなって髷が結えなくなるまで
相撲とった人で・・・」
この瞬間、私の頭の中で、
あのボロボロの彼が生まれ育った木造長屋や
砂まみれになって稽古するお相撲さんの
白黒の映像がフラッシュバックしたのです。
私は、思わず呟きました
「あああ、ナイルイガワは名寄岩(ナヨロイワ)、
北海道の名寄か・・」
このラジオ放送が、たまたま北海道から
帰ってきた日に放送されていたから
なおさら印象的でした。
相撲のことを良くご存じの方から笑われそうな
話ですが、めったに相撲を見ない私でも、
北海道が生んだ名力士”名寄岩(ナヨロイワ)”
の名前だけは、一生忘れないでしょう。