【短編】深夜と逃避行
バイト終わりの帰り道、辛くてもまた明日行かなきゃいけないのをわかっているのに思い出したテイにして、そういえばもう日付を跨いでいるから今日か、なんて一人でツッコミを入れながら憂鬱に浸った。
サラリーマンのくたびれた背中を追いかけるようにコンビニへと吸い込まれていく。理由はないのに楽しいから、ここだけが私の居場所なんだと思えてしまった。
結局何も買わずに退店する、薄情者の私。
ほとんどポカリの成分でできた汗が乾いたコンクリートに落ちる頃には、見慣れた公園に足を踏み入れている。
錆びついたブランコに座り、勢いをつけて逃避行する。どこか遠くへ行けるような気がしたけれど、またふりだしに、当たり前だと言わんばかりに現実へと引き戻される。規則正しく揺れるそれに、思わず未来を重ねた。その瞬間、私は青春をどこかへ置いてきたことに気づく。
もう、何も考えたくない。
本当は寂しいくせして孤独を愛しているフリをしたこととか、生きる理由が見当たらなくて死にたくなったこととか、今だけは全て忘れて、ただ一心に風を浴びる。いつもと違って、なんだか少し冷たく感じた。
涙を汗と偽ることのできる季節が終わろうとしている。