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DX物語(3)~経営者がXありのDXをしたくてもハードルの高い日本の事情

前回までは、経営者がXしないのでDXが進まないケースについて怨嗟まじりの話をしてきましたが、今回は、経営者がXしようにもDXが進められない事情を書いてみようかと思います。

規模の経済が取れず、動きの鈍い日本のIT

なんというか、日本のITサービスって、規模の経済が取れなくて凄く辛そうです。結果、同レベルのITサービスを買おうとすると、国産と米国産で100倍くらいの価格差があったり、投資金額も違うから開発スピードも全然違う。差は開くばかりという状況かなと思います。

そもそも、市場調査をするときに日本市場のサイズしか見ないでなんとかしようとするので、どうしても、この、展開がローカルで終わってしまう。

かつて人口ボーナスとか云々という観点から分析しようとする向きもあるのですが、世界展開できているクルマや設備やアパレルとか見ると、もともとの発想が違う気がします。

最初に世界展開見ておかないと、法規制の対応もできないし(これ後からやるとほんと辛い)、そもそもコードやUIが日本語依存して世界に出しても動かない的な顛末があります(さすがに今は無い、、、かな、、、いや不安だ)。

国内ITソリューションの優れたサービスの功罪

でまぁ、今のところ根強い「日本による、日本のためのIT」という規模の経済を放棄したモデルは、その昔、光ファイバが世界をくまなく覆ってもいなかった頃、Japan As No.1 時代の成功体験に基づいているのかなと思います。

つまり、なんでもかんでも受託開発の時代でした。とにかく、ユーザーの体に合った何かを作るモデルです。
まぁ、これは同じ文化背景をもった国産ベンダーのほうが、やりやすいでしょう。むしろ、日本は世界的にも先進的だったかもしれない。私が生まれる前の話なんで知りませんが。
バブル錬金術だけでJapan as No.1と言われたとは思えず、おそらく情報テクノロジーもこの頃は世界最強だったのかもしれません。生まれる前の話なんで知らんけど。

ですが、光ファイバが世界を覆ったころから、そのモデルは怪しくなってきました。ユーザー個別のカスタマイズITという発想をやめた米国やらドイツやらが、ベストプラクティクスを展開する量産モデルを採用しました。

量産モデルは、光ファイバを通じてどんどん世界に展開されて、どんどん規模の経済が働くようになります。そして投資額も大きくなり、サービスは改良を重ねられ、量産モデルであっても、だいたいのユーザーにとって、ちょっと設定をいじるだけで体に合ったものになってしまったのが昨今です。

それに対して、日本のITサービスは出遅れた。ユーザーはバブル崩壊後も心地の良いオートクチュールに甘んじて停滞し、ベンダーも停滞してしまいました。

XしたくてDを求めるタイプのDXのハードルが高い日本

そんなこんなで、日本の会社は、XをしたくなってDを求めるタイプのDXをやろうにも、国内に最先端のDを提供してくれるベンダーがとても少ない状況です。しゃーないので海外メーカーから仕入れることになります。

わかりやすい例えの一つは、ガバメントクラウドです。

デジタル庁のクラウド事業、採用したのは米アマゾンとグーグル…350の要件満たし : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

もう一つ、わかりやすい例えば、皆さんがnoteを読んでいる端末のOSであり、会社で使っているワープロ、表計算、プレゼンソフトです。かつては国産品がありましたが、もはやどこに行ったのかよくわかりません。

じゃあ、今のITベンダーって海外ITを担いで持ってくるからいいじゃん、と思ってしまいますが、そうは問屋が卸しません。多くのITベンダーは、バブル景気までのビジネスモデルを引きずっており、ユーザーに合わせるためのカスタマイズを入れてバカ高くするしか方法がありません。そのために、あえてカスタマイズしないといけない商品を持ってきたりします。

それを跳ねて、選定するだけでも大変な労力というか、欲するものを持ってくるベンダーが一社もなければ、自分でなんとかするしかないのです。
ガバメントクラウドくらいになれば、断っても向こうから最先端を持ってきてくれるのでしょうけど。

私の邪推では、経産省のいうDX人材とは、このようなハードルを乗り越えるタフなハートと根性を持った人材を描いたら、あのようなスーパーマン像になってしまったので、さすがに最近は複数名で役割分担する図にしたけど、そんな人材を何人も育てるか引っ張ってくるのに何年かかるんだろうという不可思議なチームなってしまうのでしょう。

というわけで、今回は、Xしたい経営者がいてもDXが難しいことについて書いてみました。

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