DX閑話~中小企業白書2024で解き明かす「日本のDX」
気づけば今年ももう5月。もうそろそろ半分終わろうとしていますが、皆さま5月病はいかがでしょうか。
この時期になると『中小企業白書』という、日経新聞が好きなオジサン向けの無料雑誌が発行されます。発行元は経産省の系列の中小企業庁です。
2024年版「中小企業白書」全文 | 中小企業庁 (meti.go.jp)
今回も、700ページ超の満足ボリュームです。
いつか、1,000ページを超えて『JR時刻表』を追い抜いて欲しいところです。
このnoteを見てちょっと興味を持った人は、ここにある「概要」を眺めてみると、なんとなく趣が分かるでしょう。
中小企業白書で解き明かす「日本のDX」
日本のバズワード「DX」の発信源の一つである経産省様ですが、2024年の中小企業白書では、DXとはなんぞや、大分と結論が見えてきた感じです。
日本の「DXの取組」のターゲットは組織
これは2022年の中小企業白書の中で「DXの取組み」は以下のように定義されています。
別に世界を変えるようなことをしろと言うのではなく、最高レベルの<段階4>ですら、普通に仕事をしてれば到達できそうなものです。
正直、個人レベルでは、Uber配達だったりメルカリだったり、Youtubeなり、noteなりのように、スマホ・タブレット・PCでITサービスを使っていれば何も考えずに<段階4>達成です。
一方で、日本国は組織になると途端に<段階1>に陥ってしまいます。
2024年5月現在、国会本会議は、完膚なまでに<段階1>、これぞ日本の組織と言ったところでしょう。
というわけで、日本の「DX」は初出のDT(Digital Transformation)の意味の生活世界の変化ではなく、「日本的な組織が、仕事道具にデジタルツールを採用して変化すること」という意味であることが見て取れます。
今回、ますます明らかになった「日本のDX」
ここまでですと、かつてのAppleやAmazonのように、最近のUberやNetflixのように、もともとのDXの意味に近い、外部向けサービスの変化という可能性も捨てきれなかったのですが、2024年の中小企業白書では、決定的な一文がありました。
つまり、従業員の「仕事道具としてデジタルツールを使わせてくれ」という声に対応したらDXの取組になると言ってます。
まさに、国会では真逆の取組が行われているようですが。
結論:日本のDX=仕事道具にデジタルツールを採用する
という事です。
この結論で終わっても良かったんですが、きわめて貴重な、このnoteの読者様から「このnoteは、その先の展開がある」とご評価いただいた事がありますので、その先まで書くことにしましょう。
中小企業白書の「日本のDX」が明らかにする日本の深刻さ
これは、一歩進めると非常に深刻です。
経営しないリーダーが多いという深刻さ
厳しい言い方ですが、日本の国会のタブレット拒否騒動が示す通り、日本の組織というか、リーダー層は、効用が明らかだと一般に分かっているものですら不採用にするという事です。
普通、経営をしていれば(また、国運を担っていれば)効用が明らかなものは採用するはずです。それをしないという事は、経営してないという事です。
経営しない人がリーダーが多いというのは、かなり深刻な状況です。
普通にしていれば使えるデジタルツールが使えない日本のITサプライチェーンの深刻さ
これは少し飛躍しているかもしれませんが、日本のITベンダーにも深刻な問題がありそうです。かつて先進国であった日本が、組織が、経営していないリーダーがそんなにいるとは思い難いです。
これは、日本のITベンダーがちゃんとデジタルツールを提供していない可能性があります。確かに、ちょっとデジタルツールを入れたいと思って話を聞こうもんなら、オンプレサーバーとUTMで、EDRのサーバールームのVPNのロースペックハイコストの謎の端末のと偉く高額で、横文字の羅列で、費用対効果のさっぱり分からないものが提案されたりします。
よくよく調べると、端末はスマホで、数百円/月のクラウドサービスで十分な話だったりすのですが、この手の情報を探さねばならないというあたりに、日本のIT業界構造的な深刻さがあるという次第です。
というわけで、中小企業白書から読み解かれた「日本のDX」は、実はけっこう深刻な日本の事情というのが見え隠れしています。