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DX戦記~小学生にもわかる「ペーパーレス化で学ぶDX(後編)」

やぁみんな、夏休みの宿題はうまく進んでいるかな?
僕は自由研究というやつが苦手で、大分苦労したような気がするよ。

前回にひきつづき「ペーパーレス」を題材にDX(いま風のやり方)を考えるけど、今回はちょっと、小学生時代を思い出しながら、自由研究をペーパーレスにするという試みを通じて、DXを一緒に体験してみようと思うんだ。

「朝顔の自由研究」でDX的な考え方をやってみる

みんなが大好き、小学生になったら一度は目にしたり育てたりする「朝顔」という植物があるね。
今回は、そのメジャーな朝顔の自由研究をどう進めるかをテーマに、DX的な考え方をやってみようと思うんだ。

その1:ほしい結果(研究テーマ)を決める

自由研究で大事なことは、研究テーマをどう決めるかという事だね。
どんな結果が必要か、それを決めることはとても重要なんだ。

今回は「朝顔の成長が、気象条件にどれくらい左右されるのか」をテーマにしてみよう。

何かをするときには必ず「ほしい結果」を決める事が必要なんだ。ほしい結果=目的ともいうね。その結果を出すために、手段を用意するんだよ。目的が先で手段は後だよ。

その2:必要な事と制約を考える

朝顔の成長が気象条件に左右されるかどうかを調べるために、(1)必要なことは何かと、(2)どんな制約があるかを考える事も大事だよ。

例えば、条件が同じところで朝顔を育てても比較できないね。条件の異なる場所で朝顔を育てる事が必要だよね

でも、君は一人だ。違う場所で観察をするのは難しいよね。今年の観察記録を残して、来年また観察して比較する事は可能だけど、今年の夏休みの宿題提出に間に合わないよね。これが制約だよね。

この必要と制約を特定しないと、地に足のつかない夢物語になるんだ。日本企業は、制約を従業員に無理をさせて乗り越える発想になりがちだよ。

その3:方法を考える

次に、方法を考えよう。考えられる方法は、何人かで共同研究をすることだね。今回は、ネトゲで知り合った、東京・栃木・神奈川・千葉のお友達と共同研究することにしよう。

そんなわけで、みんなに鉢・土・種・育成マニュアルを送ることにしよう。これらを送るのは、気候以外の条件をなるべく同じにするためだよ。

その4:気候の記録の取り方・集め方を考える

さぁ、ここからようやく情報処理の技術を駆使することになるよ。
みんなの記録をどう集めるかって話さ。
ここで、集めるだけじゃなくて、集めたものをどう使うかも考えないといけないよ。
アイディアとしては、こんな感じになるかな。

  • 紙に記録して郵便で送ってもらう
    …コピーして全員分を送るのも手間だよね。あと、集計のデータ入力しなきゃだよね。めんどくさいね。日本の一部では主流のやり方だけど。

  • 紙に記録してFAXで送ってもらう
    …まぁ、郵便よりいいけど、集計のデータ入力がめんどくさくて挫折するよね。日本ではまだまだ残っているやり方だけど。

  • Excelファイルに記録してもらう
    …うん、まぁいいけど…データを集約するのめんどくさいよね。日本ではかなり頻繁に見かけるやり方だけど。

  • LINEで共有する
    …FAXより手軽だけど、集計のためにデータ入力しないといけないよね。日本ではこれをDXという人多いけど。

  • ウェブフォームを使う
    …入力すれば、そのまま集計データが作れるし、みんなで出来たデータを分析するのも簡単だよね。PC、スマホで入力もできるしね。作るのも簡単だね。

  • スマホ用のアプリケーションを開発する
    …UXはいいし、集計データも楽だけど、作るのが大変だね。日本のIT屋さんは、よく提案してくるけど。

入力・データづくり・データ分析のウェブフォームを使うことにしようか。

この段階で超重要なことは、この後に何をするか、全体の流れを考慮して最適なやり方を考える事なんだ。偉い人が「DXをやれ」と現場に丸投げすると、現場は全体について権限・責任がないから、「自分の権限・責任のあるところだけ最適」になってしまうよ。全体的な効率が逆に下がっちゃうこともあるんだよ。

その5:同じ記録が取れるようにする

さぁ、ここまで決まれば後は大丈夫…ではないよ。今回のデータで大事なことは、比較するという事なので、同じ基準のデータを集めないと比較できないんだ。

(1)どんなデータを、(2)どんな基準で記録するかを、みんなで調べて相談しよう。

(1)どんなデータを取る?
出来れば、似たような研究をしている論文が使っているデータを参考にするとよいよ。インターネットで調べてみよう。

取らなかったデータが、後で必要だとわかっても、もう取れないので、ここは慎重に考える必要があるよ。

(2)どんな基準で測る?
今回は、そんなに基準を気にしなくて良さそうだけど、基準がそろっているかを確認しようね。例えば、気温を何時に図るかとか、天気はどう判断するかとかだよ。

この基準づくりは「標準化」の第一歩だよ。標準化をしておかないと、比較しても意味がないんだ。こんなの当たり前と思うけど、どうも日本では、そうでもないらしいんだ。

さぁ、自由研究の開始

こんな感じで、何をしたいか、どうするかの準備が決まったら、いよいよ自由研究の開始だよ。どんな結果になるのか、楽しみだね。

DXのポイント

これのどこがDX?

さて、ここまでの流れを見て「どのあたりがDX」なのか、分かったかな?
僕は全く分からなかったよ。

「目標を決めて、実施方法を考えたら、デジタルツールを普通に使っていた」という感じじゃないかな。

でも、こんなことでも、日本ではDXといわれることが多いんだ。

そう、これが日本で言われるDXなんだ。なんで、こんなことに、みんな一所懸命なのかというと、過去の「やり方」に囚われているのと、やり方を決める人が決められないからなんだ。

過去のやり方を捨てられず、DXできない

人間は、長く経験した「やり方」を変えることが難しい習性があるんだ。

例えば、これまで紙(またはFAX)を使っていたから、紙(FAX)を使わねばいけないと、思ってしまうんだ。

単に、紙しか手段がなかったから、紙を使っていたんだ、と気づくことが必要なんだけど、なかなか気づけないんだ。

特に、偉い人は、現場で作業していたのは何年も前のことなので、これに気づくのは難しいんだ。なのに、作業のやり方を決める権限を持っているから、DXは進まないんだ。

全体を見ないし、やり方も決められない

一つ一つの作業だけを見て、良いやり方を決めていくと、前の作業・後の作業でつながるところで、整合が取れなかったり、余計な作業が増えたしてしまうんだ。最悪、目的が果たせなかったりする。

だから、やり方を決める人は、(1)それなりに全体を見る事ができて、(2)段取りを考える事ができて、(3)やり方を考える事が出来ないといけないんだ。

だけど、日本では、全体の作業を知ったり、段取りを考えられたりが出来ない人が、それを決める立場になっていたりする。そのうえ、デジタルツールを知らないので、やり方を考えたり、決める事が出来ない場合が多いんだ。

では、DXでとても大事なポイントとは・・・

今回の自由研究の場合、君たちは作業の全体を考えて・決める事が出来たし、やり方も考えて・決める事ができた。

つまり、全体の作業を考えて、今のテクノロジーで可能なやり方を考えて、やり方を決める事ができたよね。そうしたら、自然とデジタルツールを使うことになったね。

つまり、シンプルに考えると、この3つ(全体の業務・現在のテクノロジーで可能な事・やり方を決める事)がとても大事という事なんだ。

ぜひ、君たちが急に大人になって「DXをしよう」みたいな事になったら、この3つのポイントがクリアーしているか、確認した方がよいんだ。そして、クリアーしないなら、さっさと転職を狙った方がいいよ。


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