【資格】行政書士 その3 公務員の取得
学生はもちろん、公務員になった後でも、この資格を取得する意味はある。
1 周りの評価(経験則)
この資格は、平成13年前後から試験制度が変わり明らかに難しくなった。新旧制度のいずれを知っているかで、この資格に対するイメージは異なる。
僕は新制度の初期に合格した世代だ(40代半ば)。旧制度の過去問も見た。僕を含め、僕より上の世代にとって、この資格は難関と認識されていない。逆に、若手、それも法律資格にチャレンジした層についていえば、そこそこ難関として認識されているように思う。そういう訳で、僕の認識の範囲では、この資格は難関資格ではないので、積極的に人に話すことはない。なので、知っているのは人事課と僅かな親しい範囲だ。
人事課は評価してくれたか?僕は最初の配属は税務の債権回収だった。差押、交付要求などの担当で、内容的に条文を読むことが多く、もしかすれば資格が考慮されたのではないかと考えている。ちなみに人事課は税務課長に尾鰭を付けて話したようで、ときどき課長に呼ばれて秘事を相談されるようなポジションだった。その後は法制に10年、現在は行政委員会の総務法制担当なので、この資格は総務畑に進むには一助となるのかも知れない。
2 知識は役に立つか。
この資格を取得しても、農地法に通暁できるとか、契約書を作成できるようになるとか、そういうことはない。しかし、法律的なカンを養うのに必要な基礎を学べると思う。
例えば、実務で、個人でも法人でもない団体(市民団体)に補助金を交付することはないだろうか?民法を学ぶと「あれ、個人でも法人でない団体に補助金交付するってどうなるんだろう?」と引っかかるようになる。あるいは、「申請書の提出がありましたので、受理してもよろしいか」という化石のような稟議を目にすることはないか?行政法を学べば、「あれ、受理って考え方は今はないよね。ダメっていったら受理しないつもりなのかな」みたいな引っかかりを覚えるかもだろう。こういう感覚は法的な素養というか、カンの一種だ。
では、これと資格は関係あるか?
直接的には関係ない。資格で基礎を勉強しなくても、「日々業務の中で専門的な法律を読んでいればいいではないか」とも思える。たしかに事務室には個別法の法令集や逐条解説がある。しかし、これを読んだだけで行政法の原理原則を抽出することなどできない。結局、些末な枝葉を読んでアドホックな知識になるだけだ。ここに成長はない。行政法の原理原則を掴むために塩野先生の『行政法』でも読めばいいのだろうが、フルタイムで働いている者が自分の時間を削って勉強するにはハードルが高すぎる。
ここで「資格」というご褒美が使えるのだ。こういう(即物的な)目標があれば、勉強にも張り合いが出る。これが資格を目指す1つのメリットだ。
そして行政書士の試験問題や対策用テキストは、大事な部分にポイントが絞ってあるし、質も良い。さっきの例で枝葉だけ学んでも身にならないといったことに照らせば、ちゃんとした資格の勉強は、しっかりとした幹が養えるのではないかと考えているところだ。
3 弁理士試験の一部免除
あと、この資格が何かの役に立つかといえば、弁理士試験の一部(論文試験の選択科目)が免除になるという特典がある。
おそらく資格を有しているだけではダメで、登録が必要等という条件はあると思われるが、結構な特典である。
以上、雑駁だが、現職の公務員が行政書士を検討する1つのきっかけになれば幸いだ。